おはようございます、一葉ですо(ж>▽<)y ☆
先日、関東地方で4年ぶりの大雪警報。お仕事の人はもう本当に大変だったと思いますが、在宅ワークの私はレッサーパンダのようにはしゃいでお外に遊びに行きました!実際は1時間ほど散歩しただけだが・・・
その時に思いついた蓮キョをお届け致します。
このお話も成立後か両想いか不明な感じですが、二人の空気を感じていただければ幸いです。
■ 雪やどり ■
「 あの大きな木の下に行こう! 」
敦賀さんのその言葉に従って
まるで互いを求めて手をつなぎ合うかの如く、大公園で大きく枝を拡げつつも静寂に佇んでいる大木の下に駆け付けた。
見ればその辺りの根元だけ、土や芝が見えている。
もうお昼を過ぎようとしているのにこんなにも息が白く弾むのは、大粒の雪が舞っているせいだ。
さっきまで小雪だったのに流石にこんな降りになっては避難せざるを得なかった。
「 朝は全然だったのに、意外にも予想以上の降りになってきちゃったね、雪 」
「 ええ、そうですね。・・・っっ・・・ふ・・・・ふふふ・・・ 」
冬なのに豊かな葉を茂らせている大木の下に避難して
肩や頭に微かに積もった雪を払いながら
私は思わず笑みをこぼした。
だって、とにかくおかしかったのだもの。
敦賀さんと私が二人きりで初詣をするなんて
それだけでも十分非日常だというのに
1月初旬の東京でこんなにも雪が降るなんて。
気象予報士の話によると、どうやら4年振りらしいけれど
そんな非日常が重なったことが楽しくて
面白かった。
「 なに?なんで急に笑い出した? 」
「 だって、本当に雪が降って来たんですよ。面白くないですか? 」
「 そう?・・・ま、雪が降るかもって日を選んだのは俺たちだけど、面白い? 」
「 面白いですよ。三が日を過ぎて、しかも雪予報なら確実に参拝者は少ないだろうって予想のもと、今日という日に初詣をして、それで本当に雪が降って来ちゃって、空気がいつもより冷たくて、そのせいか想定以上に人もいなくて・・・。この状況って、まるで私たちのためにそうしてくれたみたいじゃないですか? 」
「 うーん。そう考えてみると面白いか? 」
「 面白いです。こんなにも雪が降る中だし、もう少しのんびりこの状況を楽しんじゃいなよって言われているみたい 」
「 そう 」
そんな訳で、少しでも人目を避けるべく朝早くに出て来た私たちだったけれど
太陽は確かにそのときより空を駆けたはずなのに
気温はむしろ低くなっていて、東京の空気はさらに冷たく、凛と澄みまくっていた。
「 最上さん、寒くない? 」
「 寒いです!そりゃ寒いですよ。でも、楽しいです。敦賀さんとこんな時間を過ごせちゃっているのが 」
「 ・・・・俺も寒いから、少しくっついてもいい? 」
「 っっ・・・・ハイ 」
変装用に、と敦賀さんが私のために用意してくれたウールのダッフルコートはそれでも案外あたたかくて、対していつもならアルマンディしか身に付けない敦賀さんは、やはり変装用にとわざわざ別ブランドから購入してきたらしいダブルフェイスのテーラードコートを着用していた。
つまり、100%プライベートな敦賀さんと私はいま一緒にいるってことになる。
「 あ、そうか 」
こんな所にも非日常を見つけて、敦賀さんの腕にくるまれた瞬間にまた頬から笑みがこぼれた。
「 ・・・・ふふっ・・ 」
「 楽しい? 」
「 楽しいです。だってこんな・・・。こんな大胆なことをしちゃっているのに、いま私たちの周りには誰もいないんですよ? 」
「 誰もいない・・・ってことはないみたいだよ? 」
「 え? 」
「 いま犬を連れた男性がそこの道を通って行く 」
「 ・・え、こんな雪なのに?・・あ、ほんと・・・・ 」
通り過ぎる男性を何となく眺めながら
けれど敦賀さんは私を抱きしめる力を緩めることはしなかった。
私も同じで、敢えて敦賀さんから離れようとはしなかった。
だって離れちゃったら寒いし。
それに、予報よりずっと雪の粒は大きく強く降っているから
きっと私たちが誰かなんて、気づかないに違いないもの。
「 ・・・キョーコ 」
「 え?・・・・・ん・・ 」
名前を呼ばれてドキッとして
不意打ちキスを食らって息が止まった。
ただ私の両頬を包む敦賀さんの手は温かくて
当然ながら触れ合う唇もあたたかい。
目の端に弾んだ白い息は、敦賀さんのものだろうか、それとも私の?
「 いつまで他の男を見ているつもり? 」
「 ・・っっ・・え・・・ 」
まさかそれ、ヤキモチだったり?
いえ、そんなまさかよね。
だって私、こんな必死に敦賀さんに抱き付いているじゃない?
離れようとしなかったじゃない。
「 他の男性を見たことはないですよ、私? 」
「 いま見てた 」
「 いま?見てたって・・・。それは見ていただけじゃないですか 」
「 見ていたんじゃないか 」
「 見ていましたけど見ていません。そういうのは視線を投げていたって意味の見ていたじゃないですか。私がいつも見ているのは敦賀さんだけで・・・ 」
「 だったら許す 」
「 ふぅ????ん・・・・ 」
もう一度キスが降って来て
雪の白さとイメージが重なって、私の口角が少し緩んだ。
ねぇ、やっぱり面白くないですか?
雨宿りならぬ雪やどりをさせている
非日常の東京と私たちが。
E N D
このお話を思いついたとき、過去にお届けした「初霜便り」 や「冬の紳士」 を思い出しました。それで過去作をひっくり返してみたのですが、4年前じゃなくて5年前の日付だった。・・・・あれ?
⇒雪やどり・拍手
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