なんかSSが書きたいかも・・・という意味不明な熱量が沸いてきたのでお届けします。
両想い蓮キョで、蓮くんがちょっとだけお茶目なやつです。
■ 君を愛してるってこと ■
誰かを好き・・・と意識した途端に想いが加速することを知ったのは、今よりほんの少し前。
その好きも加速し続けるとやがて想いは愛に変わり
いずれはその気持ちを口にせずにはいられなくなってしまうらしい。
自惚れてもいいのかな?の問いかけに、コクンと頷いてくれたのが嬉しくて
その場面をリフレインするたびにあの子への想いは更に加速していた。
「 え?もう一度言ってください、敦賀さん 」
「 だから、このセリフを言ってみて 」
「 ・・・・いいですけど。なんですか、これ? 」
これ、と言いながら彼女が持ち上げたのは、俺が渡したメモだった。
そこにはカタカナだけで意味不明なことが書かれている。
最上さんはその紙を凝視すると、疑問符を浮かべながら小首を傾げた。
まあ、そうなるか。
それでも俺の予想では君が素直に良いですよって応じてくれるはずだったけど。
しかしこんな場面も想定してなかった訳ではなく。つまるところ、まぁ、だから余裕。
「 実はね最上さん、これは俺がずっと秘密にしていた活舌を良くするための魔法の呪文なんだ 」
「 えっ、魔法の呪文ですかっ♪?!しかも敦賀さんがずっと秘密にしていた?! 」
「 そう。君にだけは特別に教えてあげようと思って。これを繰り返し唱えることで君の活舌はさらに良くなっていくよ 」
「 本当ですか!? 」
「 そ。だからこのセリフを言ってみて 」
「 なるほど、そういうことなら分かりました! 」
言いながら、最上さんが頬を紅潮させてゆく。彼女がやる気をみなぎらせたのが良く分かる。
これには多少の嘘が混じっているけど
言いにくいセリフなのは本当だから、決して罪にはならないだろう。
背筋を伸ばし、瞼を閉ざした最上さんの横顔は清々しく
ふぅと浅い息を吐いた彼女の隣で俺は
予定通りにこっそりアプリを起動した。
再び瞳を輝かせた最上さんは魔女っ娘になったつもりだろう顔つきで、メモのセリフに果敢に挑んだ。
「 イクシアヴンナサグル、イサッタウ、オユセヴンリエットモオワタナオムチ。イクシアヴンナサグル、イサッタウ、オユセヴンリエットモオワタナオムチ・・・ 」
「 最上さん。それ、色んなパターンで言ってみてもらえる? 」
「 色んなパターンで? 」
「 そう。元気よく言ったあとだから今度は少し控えめにとか、そのあとはちょっとはにかみながらとか。そのあとは照れながらで、その次はちょっと強気に、とか、ゆっくり目にとか早口でとか、本当に色々ね 」
「 なるほど!色んなパターンでの活舌修行ですね。了解です!! 」
「 うん、頑張れ 」
応援しながら俺の胸は期待に大きく弾んでいた。
もうすぐ社さんが俺を迎えにここに来る。そのあとは早速、移動中の車内でこれを再生してみよう。
この子からの愛の告白と
甘く俺におねだりするセリフを。
逆再生アプリを使って・・・。
「 イクシアヴンナサグル・・・ 」
「 最上さん、ありがとう 」
「 え?ど、ど、ど、どうしてお礼なんか・・・ 」
「 嬉しいからだよ、単純に 」
俺の言葉を一つも疑うことなく、実践してくれている君が可愛い。
「 はぁ? 」
「 俺、ね・・・ 」
わかるかな?
俺は間違いなく、君を愛しているみたい。
「 ウレチシアンアシマゴ 」
「 はぁい? 」
俺の言葉が理解出来ず、最上さんが素っ頓狂な返事をしたのがツボで、社さんが運転する車の後部座席に乗り込んでしばらく後も、俺のクツクツ笑いは止まらなかった。
「 久しぶりにキョーコちゃんと話が出来たから相当楽しい事でもあったのか、蓮? 」
「 ええ、まぁ色々と・・・ 」
逆再生アプリとは、ローマ字に直して読んだセリフを逆再生して楽しむものだ。
例えばウレチシアンアシマゴというのは、MOGAMISANN、AISITERUを逆読みしたもの。
イヤホンを耳にねじ込み、先ほどの最上さんの呪文を、瞼を閉じて再生した。
正確には、逆再生だが。
『 敦賀さん、大好き。私、いつもあなたを想っているんですよ。
今夜は一緒にいてください 』
・・・・いいよ。今夜は離さないよ・・・。
なんてね。
さっきはそんなセリフを言わせてみたんだけど。
少し聞き取りにくいところもあったけど
味を占めた俺は次のことを考えていた。
さて、次はあの子に何を言ってもらおうか。
E N D
この逆再生アプリネタは発掘品です。最近はめっきり思いつかなくなっちゃったのに急にSSが書きたくなってね。過去の遺物をひっくり返して見つけてきました(笑)
⇒君を愛してるってこと・拍手
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