いつもお付き合いくださって本当にありがとうございます!
こちらは先日お届けした時事3部作の最終話です。もちろん両想い蓮キョ。短いよ、ごめんね。
お楽しみいただけたら嬉しいです。
■ 無言独占宣言 ■
アルマンディに携わっている人だけに配布された非売品のマスクとはいえ、その人数は決して少ない訳ではないだろう。
何しろ、一つの物が市場に出回るには色んな人の手を介するのだから。
デザイナーがいて、材料を供給する人がいて、デザインを形にする人がいて、それを流通する人がいて、それを販売する人がいる。
敦賀さんはそれを魅力的に宣伝するモデルだ。
非売品のマスクがどれほど作られ、どの範囲の人たちに配布されたのか。そんなこと私に分かるはずもないけれど。
この世に二人といない敦賀さんが、今日もどこかの誰かとお揃いのマスクをしているのかもしれないと考えただけで嫉妬が渦巻いてしまって
気づくと私はいつの間にか手を入れていた。
「 最上さん。もしかしたら君、俺が撮影に挑んでいる間にマスクに刺繍をしてくれた? 」
「 あっ、大丈夫ですよ!マスクはちゃんと清潔です。刺繍した後ちゃんと消毒液を吹きかけておきましたから。勝手に刺繍を入れたのは、敦賀さんがトップ・スターだからです。マスクだって誰も持っていないものにすべきと考え、刺繍させていただきました。これでそのマスクは世界に一つだけのマスクです 」
「 まだ俺の家にもマスクはあるけど。そうか、ありがとう、最上さん 」
「 いえ 」
ありがとう、だなんて。
言われる筋合い、本当はないの。
だって私は無言ながら訴えたかっただけだから。
敦賀さんはアルマンディのじゃない。
私のものだって。
「 最上さん 」
「 はい 」
「 俺にも針と糸を貸して。それと、そこにあるマスクも 」
「 え。いいですけど、でもこっちのマスクは今日買って来た私のですよ。何の変哲もない市販の3Dマスクなのに、どうするつもりですか? 」
「 俺がそれに刺繍を入れる 」
「 え? 」
「 だから簡単な奴を教えて。そしたら、そのマスクも世界に一つだけのマスクに出来るだろ 」
「 ・・・それで? 」
「 まだ誰にも言えないけど、君は俺のだからっていう、無言の訴え。それを俺も刻みたい 」
「 ・・・っっっ!! 」
その瞬間、アンビリーバボー♪と叫び出したい気分だった。
ああ、皆様
本当に不謹慎な私でスミマセン!!
私がそれをした意味がダイレクトに伝わっていたことが単純に嬉しかった。
敦賀さんの言葉で、だいぶ気持ちが救われた。
E N D
小さな疑問を問題視してはいけませんよ。そこは華麗にスルーでお願いします。
そして、無言なのに宣言って、なんぞやw
■ おまけ ■
「 新型ウィルスの影響で、撮影が全部中止になっちゃって、自宅待機を命じられたときに敦賀さんは何を考えましたか? 」
いまは私たちも、取り敢えず以前と同じ状況に戻ったと言えば戻ったと言えるのかもしれないけれど、それでもまだ感染者数は減少しておらず、警戒態勢は続いている。
そんな中でもお仕事をこなせるようになったこと自体はとてもありがたいと受け止めているけれど、それまでのあいだ敦賀さんはとても辛かったに違いない。
これでもかと演技に情熱を燃やしている人だから。
お芝居をすることが何より好きなひとだから。
敦賀さんは私から視線を外し、口を閉ざして逡巡している様を見せた。
それからまた私に目線を戻すと、静かな口調で頬を緩めてそうだね、と呟いた。
「 ・・・そうだね、とても辛いと思った。カメラの前に立てないことより、君の瞳に映してもらえないことの方が何倍も 」
「 え・・・・・ 」
「 誰より君に会いたかったよ 」
言葉の意味を飲み込むのにしばし時間がかかってしまって
嚥下後、理解に至った瞬間に私は全身で発火した。
「 …っっっ!!! 」
何と言ったらいいのか分からず、真っ赤になった両手で真っ赤になった顔を覆うと、悪戯めかした表情を浮かべた敦賀さんが、満足そうにクスクスと笑う声が聞こえた。
⇒2020年時事3作目◇無言独占宣言・拍手
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