二次小説執筆術サンプルSS改・B設定 | 有限実践組-skipbeat-

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B設定・ガマン大会をメインにして楽しんでもらえるお話。


【問題点解消箇所】

三段構成組み換え

タイトルと内容の合致

大会内容の刷新

視点変更

行動理由・動機の明確化


サンプルSSと同じ、三人称記載にて。

ただし、言葉遣いや行間の使い方などは一葉スタイル。



二次小説執筆術・サンプルSS改・B設定

■ ご褒美までもガマン大会 ■





 ここは何よりも愛が好物のローリィが住まう、屋敷というよりは御殿といった方がしっくりくる建物の中。

 自室の椅子にバスローブ姿で腰かけていた彼は、昼間の出来事を思い返していた。



「 ……少々、目に余るようになってきたな 」



 現在の関東地方は、地上にムチ打つ酷暑中。

 連日に続く暑さのせいか、社員の様子に覇気がない。


 このことには少し前から気づいていた。

 何しろ、それまでだったら派手な衣装を着こなしている自分を見て、目を丸くしたり、事務所の隅でこっそり肩を揺らしたり、苦笑を浮かべたりするのが常だったのに、その反応が確実に薄くなっているのだ。

 それでしばらく様子を見ていたのだが。


 しかし今朝、インディアンの族長を思わせる奇天烈な格好だったのにも関わらず、まるで普通の挨拶しか返ってこなかったのを受け、いよいよ来たなとローリィは思った。



「 もうこれ以上の放置は危険だな。ということで、手を打っておくか 」



 そう呟いてのっそりと立ち上がったローリィは、今が25時であることを確認し、ロサンゼルスのクー宅に電話を掛けた。

 この由々しき事態を打破するために。





 翌日のことである。



「 これから、ガマン大会を開催しようと思う 」


 顔を見せるなりそう宣言したLMEの社長、ローリィ宝田に向けて、社員一同は明らかに不服満載の声をあげた。


「「「 ええぇぇぇえ~?? 」」」



 無論、そうなるであろう。

 何もこんな暑い時期に、それでさえ鬱陶しいというのに、そんな面倒くさいことを提案されてもやる気なんてまるで起きない。さして涼しくなるわけでもあるまいし。


 しかし、そんな社員の不満声を受けてもローリィは怯まなかった。



「 大丈夫だ。俺は強制するつもりはないからな。大会はあくまでも自由参加で行う。その際、一応は勝ち抜き戦なのだが、誰かと競う必要もない。なぜならこの大会は、お前たちに覇気を取り戻してもらうことを目的としているからだ。従って、参加者には自分自身と闘ってもらうことになる 」


「「「 …はぁ…、自分自身… 」」」



 とんだスポ根ドラマかよ・・・というツッコミが社員の脳裏をよぎったが、それを口にする者はいなかった。

 つまりまだ社員の頭の中ではかろうじて理性が働いているということだろう。

 それも時間の問題だろうが。



「 もちろん大会と言うからには賞品も用意してあるぞ。俺が用意した3つのガマンを耐え抜いた者には、もれなく明日から、一ヶ月間の有給休暇を与えることとする 」


「「「 えっっっ?!! 」」」



 ここで社員の態度と目の色が変わった。明らかに話を聞く体制に入っている。

 無論予想済みである。

 なにしろ丸々一ヶ月の休みが社長公認で与えられるかもしれないのだ。しかも給料が保証された状態で。いい意味での寝耳に水である。



「 では、この時点で参加意思のある者は挙手を願う 」


「「「 はいっっ!!! 」」」



 見渡す限りの社員が全員右手を頭上に掲げた。

 その光景を目の当たりにしてローリィは満足げに頷いた。


「 おお、やる気を出してくれて嬉しいぞ 」



 しかし、である。

 常識的に考えれば、全員を就業時間中にガマン大会に参加させるわけにはいかなかった。そこで、各部署とも人数を半分に分ける形で、時間をずらして参加してもらうことにした。


 いわゆる午前と午後の部に分けた。


 当然のことながら、午前の部の参加者には、午後の部の参加者に大会内容を漏らすのはタブーと諭したのだが、それでも不満を顕にするものが確実にいた。

 しかしローリィ自身に不安はなかった。


 なぜなら、多くの社員が休暇に入ってしまえば、各部署の仕事が立ち行かなくなるのが明白だからだ。そうなって困るのは上役たち。

 つまり、椹や松島などの主任連中が己を犠牲にして出勤人数の帳尻をあわせねばならなくなる。そんな彼らが部下の行動に目を光らせない訳がなかった。


 ローリィに不安は一切ない。あらゆる意味で。


 そもそも、賞品を手に出来る社員など一人も出ないのだから。




 かくして、LMEビル内のひときわ大きな一室に、本日出勤した社員のうちの半分が一堂に会した。

 ここは時に記者会見の場となり、100名以上の報道陣をも飲み込む異様に大きな部屋である。


 ガマン大会参加者は、入場時に一人が一つのパイプ椅子を伴った。そして誰が指示した訳でもないのに、まるで体育館で行われる卒業式の如く、彼らは瞬く間に整然と並んで腰を下ろした。

 設置されていた壇上からその光景を見下ろしたローリィはまた満足げに頷き、秘書から手渡されたマイクを口元に近づけた。



「 うむ。実に気持ちがいい。では、早速ガマン大会を始める。

 最初にしてもらうガマンは笑いだ。当然、少しでも口元を緩めた者はガマン出来なかったとみなして即刻退場してもらう。また、その際の判定員は周囲の人間ということになる。つまりお前たちは大会に参加しながら、決して不正がない様に、お互いを牽制し合うのだ 」



 その言葉で、自然と輪が作られた。

 どうやらそれは部署ごとに分かれてくれたらしい。

 その様はまるで新入社員のオリエンテーリングのようだった。



「 では始める 」


 言いながらマイクを手にしたままのローリィが、人の輪の一つに歩み寄った。

 社長が意味深に口元を緩め、一人の社員にマイクを突き出す。


 何が起こるのかの予想がつかず、誰もが口を閉ざしてその成り行きを見守った。



「 俺の質問に楽しい回答をくれ。ラッパーとタッパー。この違いを教えてくれ 」


「 は?…えっと、楽しい?(…あっ!笑わせろって事か。よし!)陽気なのがラッパー。容器なのがタッパーです 」



 プッ…と、どこからか笑いが漏れた。

 それほど面白い事を言っている訳ではないはずなのに、大勢の人間が集まって、顔を突き合わせながらシーンと静まり返っていると、他愛もないことが物凄く面白く感じるのが不思議である。



「 お前、いま笑った。退場! 」


「 あー、くっそぉぉお!なんだよ、それ、卑怯なり(笑) 」


「 あはははは 」


「 おい。今は笑いをガマンする大会の最中だぞ。当然、今つられて笑った者も退場だ 」


「 …っっ!! 」



 途端に緊迫した空気が生まれた。だが、やはりどこか緊迫しきれない感がある。

 笑いを堪えなければと考えれば考えるほど、笑いの空気は膨らんだ。



「 では次…は、誰に質問するか。ああ、君 」


「 はい! 」


「 楽しい回答を頼む。殺虫剤に書かれていたら嫌なことって、何だ? 」


「 え…っと、そうですね。・・・・お前も所詮は社会の虫なんだよ!とか? 」


「「「 …っっっ!!! 」」」


「 では君 」


「 ひゃいっ?! 」


「 どうか相手を傷つけないように、相手にブーだと伝えてくれ 」


「 そうですねぇ。…人間にそっくりですね?とか 」


「 ぶわはははは!! 」



 こうして、ガマン大会の笑い部門は大盛況のうちに幕を引いた。

 なんと参加者の30%が退場する事態となっていた。

 結果を受け、こんなもんだろうとローリィは思った。



「 敗者は退場したな。では次だ。次は寒さをガマンしてもらう 」


「 ひえぇぇ?? 」


「 いや、そこで慄かなくていい。寒さ我慢とはいえ、これ以上冷房を強めるとかそういうことはやらん。体調不良に陥っては元も子もないからな。では、何をしてもらうかと言うと、アイスを食べてもらう 」


「「「 アイス? 」」」


「 ああ。その際、乳製品アレルギーがある者には氷を用意してあるから案ずるなかれ。各自、自分が好きなカップアイス、またはカップ氷を持って、それを5分以内に食べ切ってくれ。食べ切れなかった者はもちろん失格。そして、ここが重要だ。もし、食べている途中で手を止めた場合、食べる意志なしとみなしてそれも失格とする。

 無論、これも勝ち抜き戦ではない。先ほどと同じ様に、大会参加者である君たちが、自分と自分の周囲にいる人間を判定するのだ。では、各自一つずつ選んで 」



 この部屋には業務用の大きな冷凍冷蔵庫が備えられていた。

 普段は冷蔵庫として、先ほども言ったように100名以上の報道陣が集まった際に、彼らへ配布するためのペットボトルドリンクを保冷するために活用されているのだが。

 今日は冷凍庫に切り替えられていたらしい。中には大量のアイスが詰め込まれていた。


 ちなみにアイスのメーカーはLME所属タレントがお世話になっているそれだった。もちろんローリィが準備していたものである。

 真夏の酷暑の厳しさを受け、いつガマン大会を開催するか、社長はそのタイミングをずっと見計らっていたのだ。



「 なんだ、普通のアイスだな。しかも食べるのは一人一個だろ? 」


「 これを5分以内なら楽勝、楽勝♪ 」


「 私、王道のバニラー♪ 」


「 笑うのをガマンしたあとだから喉が潤うな 」



 各自が一人ひとつのカップを手に取った。

 それを確認したローリィがスタートを宣言すると、誰もが冷菓を口に運んだ。



「 うわ、癒されるー 」


「 今日も本当に暑いもんね 」


「 チョコ、うまっ! 」


「 オレンジもうまいぜ 」


「 楽勝♪5分なんて必要ないぜ。俺が一番乗りしてやる 」


「 なにをぉ、負けるか!!うおぉぉぉ… 」



 時間はたっぷり5分間。

 しかも真夏にアイスである。

 失格になる者などいないだろうと誰もが思っていたのだが、決してそんなに甘くはなかった。



「 うおおぉっ…頭がキーンとする… 」


「 手を止めた者は退場! 」


「 ええっ?厳しぃ~ 」


「 やだ、虫歯が出来ているみたいで痛い 」


「 そこも!少しでも手を止めたら失格 」


「 ぐはっ…キーンとするぅ 」


「 失格、失格!! 」



 アイスクリーム頭痛というものがある。

 これは、アイスやカキ氷など、極端に冷たいものを食べた直後に数分間程度発生する頭痛である。


 口腔内の温度が急激に低下したことによる生体反応なのだが、これは真夏の方が発生しやすく、また誰もに引き起こされる可能性があると同時に、そうなってしまえば誰もが一時的に手を止めざるを得ない。



「 そこ、失格、失格、失格、退場!! 」



 ちなみに、これを発生させないようにするには、ゆっくり食べるのがいいらしい。


 そのことを知っていた者は、その通りに食べていた。

 結果、もちろん勝者は居て、参加者は半数程度がとどまった。

 ちなみに敗者認定された者も全て食べ切ってから各部署に戻っていった。


 勝者だけが残った部屋を一瞥したローリィはニヤリと笑った。



「 ほぅ、なかなか優秀じゃねぇか。では、いよいよ最後の関門だ。これをクリアできる者がどれほどいるのか、結果が今から楽しみだ 」


「 社長!早く次は何をするのか言って下さい 」


「 よし、明かしてやろう。次は映画を観てもらう 」



 ローリィの言葉に、残った社員一同は表情を固めた。

 予想外の発言だった。



「 映画? 」


「 ああ。そんな訳で隣の部屋に移ってくれ 」



 社長の音頭のもと、秘書の導きで隣室に移動しながら社員たちは憶測を飛ばしまくった。


「 もしかしたら、今度はあくびをガマンさせるんじゃないか?ものすっごく退屈な映画を見せてさ 」


「 いや、それよりあり得ないほどグロい映画を見せるんじゃないか?それで目を反らすのをガマンさせるんだよ 」


「 違うわ、きっと恐怖映画よ!叫ぶのをただひたすらガマンさせるとか、震えるのをガマンとか 」


「 残念ながら全部違うな。ガマン大会最後のガマンは、涙だ。1時間49分、泣かずに映画を堪能できた者がガマン大会の勝者となる 」


「「「 涙か… 」」」





 上映されたのは


 おにいちゃんのハナビ…という、日本映画だった。



 白血病を患う女子高生、華の療養のために、新潟の小さな町に引っ越してきた須藤一家の物語。

 世界一の花火が打ち上げられる「片貝花火まつり」の日、半年間の入院生活を終えた華は、兄が引きこもっていることを知り、外に連れ出そうと策を練る。


 引きこもりの兄と余命僅かな妹の実話を映画化した作品である。



 しかし最初、社員の誰もが、社長が言ったように泣くのをガマンするような映画にはとても思えなかった。

 華は、副作用で髪が抜け落ちた頭にかつらを被り、兄を買い物に連れ出し、または新聞配達のアルバイトを見つけてきたりする。

 重病を患っている割には彼女は健康的で明るすぎ、その見え透いた行動力が鼻についた。

 何しろ彼女は引きこもりの兄を引っ張り出すために、兄の部屋の壁までぶち壊すのだ。



 しかし物語が進んでいくうち、それが華の全力だったことを知る。


 華は、自分の余命が短いことを知っていた。

 それでも彼女は決して悲観はせず、生きているうちに自分が出来ることは何かを考え、行動していた。それを受け止めて行く兄の変化や行動に心が温かくなってゆく。


 雪が積もる冬の風景が真実寒々しく、片貝町の花火が見たいと兄にお願いする彼女のそれに胸を打たれる。



 実はこの街では、ある特定の人物のために花火を打ち上げることが出来たのだ。しかしそれには、ある程度の資金が必要だった。


 華は、闘病の甲斐なく逝ってしまうのだが、その後の兄の頑張りが凄かった。

 愛する人の喜ぶ顔が見たくて、妹のために打ち上げた花火を見上げて、兄が号泣するシーンでは兄の熱さに心を打たれた。

 そこにいた誰もが、もしかしたら彼以上に泣いてしまっていたかもしれない。



 ローリィの思惑通り、社員のほぼ全員が涙を我慢できなかった。

 それぐらいその映画はとても良い作品だったのだ。





 ――――――― そう。ほぼ、である。



 つまり、泣かなかった社員がいた。

 その数、片手ほど。



 何よりも愛が好物のローリィからしてみたら、これほどの愛に溢れ、胸打たれる物語を観覧して涙を流さない社員の存在を見過ごすことなど出来なかった。


 だからこそ打っていたのである。ある、奥の手を。



「 ガマン大会を見事耐え抜いたのはたったの5名だったか。ならば特別に別のご褒美をやろう。もうすぐ昼だからな。特製オムライスだ 」


「 おお、いいっすね! 」


「 ありがとうございます 」


「 あー、これで明日から一ヶ月の有給休暇かぁ。やったな、俺たち! 」



 彼らはみんな嬉しそうだった。

 もちろん、そうなるだろう。

 社長公認で一ヶ月の有給休暇を過ごせるなど、まるで夢のような出来事だ。


 そしてその通り。それは儚い夢でしかなかったのである。



「 お前ら、そのご褒美を残すなよ?もし残したら、賞品を受け取る権利は剥奪するからな 」


「「「「「 大丈夫です!! 」」」」」


「 大食いに出てくるような5キロもあるオムライスじゃ確実に無理ですけどね 」


「 これは普通に一人前ですから、これならペロリですよ 」


「 そうか。ならいいが 」



 ローリィは意味深に口元を緩め、午後から始まる予定の、残り半分の社員のためのガマン大会を開催するために踵を返した。

 そうしておきながら、映画上映中にジュリエナ特製オムライスを用意してくれた優秀な秘書に近づいた。



「 あれ、ちゃんとジュリのレシピ通りに作ったんだろうな? 」


「 もちろんでございます。あの方の指示通りの材料と分量で、あの方の動画通りに調理いたしましたので再現率は100%だと断言いたします 」


「 ならよし 」



「「「「「 いっただっきまーす♪ 」」」」」



 ちなみにそのご褒美は午後の部でも挑戦者が現れたのだが


 どちらの部でも完食できた者はただの一人もいなかった。






     E N D


ガマン大会の内容をメインにするため、クーやジュリエナの登場を無くしてボリュームを抑え、ご褒美の登場により、社長に翻弄されただけの社員たちのお話という形にまとめました。


「おにいちゃんのハナビ」というのは実際にある映画です。泣ける映画をひたすら探して、ようやく見つけました。 ※一葉は観ていません。

国本雅広監督作品。ご興味がある方は是非w


ちなみにですけど、お話の中の筋書きを読んで目を潤ませたお嬢様は、今後も休まず弊宅に遊びに来てくださいね♡



執筆後の推敲20回以上。それ以上はやっても変わらないと判断しての結果がコレ。


こちらは執筆術◇6 に準ずるお話です。

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