いつもありがとうございます、一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、sei様からお与かりした記念リクエストをお届け致します。
こちらは原作沿いです。
申し訳ありませんがそれ以外の設定に関しましてはお話からお察し下さいませ。(。-人-。)
なお、こちらはリクエスト成就作となります。内容リクエストを頂いても応諾できません。併せてご諒恕ください。
■ キケンなメに遭いたいの? ◇1 ■
キョーコがだるまやから、それなりにセキュリティーのしっかりしたワンルームマンションに引っ越したのは、キョーコが18歳になってすぐの頃だった。
泥中の蓮の紅葉役が当たり、実力派の仲間入りを果たしたことで大勢のファンがだるまやに押し寄せ、店の営業に支障が出た事がきっかけ。
ワンルームマンションは学生のみが利用できる学生支援機構から紹介されたもので、東京都内でも安価に暮らせるのが最大の魅力。
なにしろ東京都内ワンルーム、風呂・トイレ別、キッチンIHコンロ付き物件で家賃7万円が実現するのは学生支援機構ならでは。
一般人が同条件の物件を探せば月額家賃は18万前後と跳ね上がるだけに、キョーコはこの物件をとても気に入っていた。
しかもこのマンション、対学生でありながらエントランスの来訪者をテレビ画面で確認できるほか、鍵穴が無いカードキータイプの玄関施錠となっているため、ピッキング被害などが起ころうはずもない。
さらにマンション入り口はフロントオートロックだからセールスマンの立ち入りだってエントランスでシャットアウトされるし、マンションの各所には防犯カメラも設置されている。
このセキュリティー設備があるゆえに、他の物件よりは少々お高く、家賃7万円にプラス2万円が加味されているものの、水道光熱費は月1万円程度。食費はその倍の2万円程度。
女優としての仕事の都合上、交際費に多少のお金がかかるようになったものの、未成年ということもあってキョーコの生活費は月18万円弱…といった所で済んでいた。
だるまやを出る理由が理由だっただけに、入居するマンションのセキュリティー設備の条件を提示してきたのはLMEだったが、それに対してアドバイスをくれたのは蓮で、蓮もこれなら…と太鼓判を押してくれた物件だっただけに、LMEも納得してくれていた。
急な引っ越しではあったけれど、マンションには基本的な家具・家電などの設備も初めから整っていたから、キョーコは身一つで入居したも同然だった。
そんなある日。
キョーコはLMEに呼び出された。
呼び出したのは所属事務所の社長であるローリィ宝田。
社長から言い渡されたそれでキョーコは青天の霹靂を味わった。
「 最上くん。君に今の家からの引っ越しを命ずる 」
「 はぁ?いきなりなんでですか!! 」
「 訊いて驚け!なんと君の大河ドラマ出演が決まったんだ!素晴らしいオファーだろう!? 」
ローリィは左手を胸に押し当て、人形のように弧を描いた笑みを口元に浮かべると、天井を見上げながら右掌を天に掲げてまばゆいほどに目をぱちくりとさせた。
「 …なぜ私が?しかも今頃ですか? 」
「 ああ。キャスティングの時期がずれたのは出演が決まっていた女優が薬物違反で逮捕されたからだ。突然空席になったそれは決して端役ではない。だから早急に配役を埋めたいというアチラさんの都合あってのこと 」
「 それで、なぜ私に? 」
「 もともとこの役は今まで大河に出演した事がない、若い女優にスポットが当たっていた。しかも君は泥中の蓮で一度時代劇を経験している。そこが強みになったのだと思う。
どうした、質問で返してくるとは。やりたくないのか? 」
「 もちろんやりたいです。やらせていただきたいです! 」
「 よし、いい返事だ。…ということで、今のマンションは引き払うんだ。物件は早急にこちらで用意してやるから 」
「 待ってください、社長さん!それとこれと何の関係があるんですか?私、今のマンションすごく気に入って住んでいるんです。引っ越したくないです! 」
「 ダメだ 」
「 ダメって… 」
「 …というより無理だろう 」
「 どうして無理なんですか? 」
「 そんなのは決まっている。いま君は18歳の高校三年生で、卒業までもう半年も残っておらんからだ。一方、大河の撮影はこれから約一年間続く 」
「 それが、どう…? 」
「 君は学生じゃなくなると言っているのだ 」
「 あ……学生機構… 」
「 そうだ。事務所としてはこういう場合、所属タレントに二つの道を考える。
一つは、芸能人をやりながら大学に進ませ、将来どちらに転んでも生きて行けるように、あらかじめ別の道も用意させておく…か、芸能人として一本道だけを極めさせるか、だ。
俺は君に後者を勧める。君は過去、トップ俳優になりたいと言ったことがあったな。俺もその道を強く推す。大学生になりたいというのならそれを止めることは出来んが、今後の役者人生を鑑みれば大学に通うことにそれほどの意味があるとは思えん。君の学生生活は高校がラストで十分だろう 」
「 ……っ… 」
「 悩んでもいい。だが答えは一つしか無い。大河ドラマ、出演するだろ?君が好きなお姫様の役だぞ? 」
「 やります 」
「 OK。新たな住居は追って君に報せる。いくつか候補を見繕うから、その中から好きな物件を選べばいい 」
「 社長さん。それ…ギリギリまで住むって言うのは…… 」
「 お勧めしないな。今後長く住むことになる家に早々に引っ越した方がいい。……なんだ?引っ越したくない理由でもあるのか?例えば畳の下に宝を埋めたとかか?それなら掘り起こせ 」
「 …っ…してないですよ、そんなこと! 」
「 ははは。ならばよかろう 」
「 ・・・・・・っ 」
キョーコが引っ越したくない理由はもちろんあった。
表向きの理由はセキュリティーがしっかりしているのに家賃が安いということだが、キョーコが今のマンションを気に入っている最大の理由は、だるまやにいた頃より蓮のマンションに近いということだった。
片想いなのは相変わらず。
叶わぬ想いであることなど当に知っている。
だからこそ、自分が住む5階の部屋の窓を開け放った先に、蓮が住む高層マンションを望むことが出来る眺望を彼女はとても気に入っていた。
朝、夕、必ず脳裏に蓮の姿を思い描き、部屋の中から崇拝する神に礼を捧げる。
それがキョーコの密かな楽しみになっていた。
だがそうだ。考えてみれば大学に進学しようなどとは考えてもいなかった。高校を卒業したらもっと芝居に打ち込みたいと思っていた。
学生機構が提供する部屋に住めるのは学生としての身分がある者に限られる。ずっと住み続けることは出来ないのに、キョーコはいつの間にかそのことを失念していた。
せめてギリギリまで…と言ったそれをローリィが反対した理由も本当は理解していた。
キョーコが学生でなくなる3~4月は引っ越しシーズンだ。
シーズン中は引っ越し代金はもとより、家賃も跳ね上がる傾向にある。だから、新居に引っ越すのなら、いま決める方がずっと安価でより良い条件を確保できるのだ。
キョーコには否が応でも受け入れるより他に術はなかった。
「 お話は分かりました。どうぞよろしくお願いします 」
「 おう。そんなガックリするな、最上くん。きっといい物件を探してやるから! 」
「 はい、お願いします 」
この話を蓮が聞いたらどう思うだろう。
想像してキョーコは苦笑を浮かべた。
後輩の一人がどこかに引っ越すと知った所で、あの大先輩に何を思えと自分は考えているのか。
――――――― でも引っ越したくなかった。もう少しあの人のそばにいたかった…
キョーコの心を知ってか、知らずか。
この情報はマネージャーの社にすぐ伝令され、そのまま蓮にも伝えられた。
⇒◇2 に続く
脳内完結8話の予定。あくまでも予定でw
⇒キケンなメに遭いたいの?◇1・拍手
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