1月だっちゅーのに家の周囲のあちこちで工事を目撃する日々…。
そして妄想が働いた。風がとても強い日に。
こちらは現代パラレル蓮キョです。お楽しみ頂けたら嬉しいです。
■ とつぜんハートに恋の矢が ■
せっかくの休みだっていうのに、トンテン、カンテン、音がうるさい。
自分の身体に見合ったそれなりに大きなコタツに下半身を突っ込み、横になってヌクヌクと温まりながらウトウトしていた俺は、一体何が始まったのかと自宅マンション3階ベランダから外を眺めた。
「 ……っ…!! 」
「 おーい、いいぞ、そっち持ってけ~ 」
「 あっ、すみません。そちらは通行止めになりますのでこちらからどうぞ… 」
昨日までは割と穏やかな日和だった気がするが、今日は北風が強めに吹いている。
首元を寒々しく撫でていく風に少しでも抵抗しようと肩を縮めた俺の視界に近場の工事現場が映った。
……なるほど。そういえばあの角のパン屋、つぶれたんだよな。
工事しているってことは新しい店舗でも入るのか。
「 …うっ…さむっ…… 」
余りの寒さに身がすくんだ。急いで部屋に戻り、何気なく時計に目をやると昼少し前。目も覚めたことだし何かを買いに行こうと思った。
外気温に見合う格好で外に出る。
徒歩10分程度のコンビニで昼食を購入し、回り道をしてわざと工事現場の前を通るとそこには人っ子一人居なかった。
…さすがに誰もいなくなっているな。
12時を過ぎたからだろう。
静かになった工事現場の前を通り、そのままマンションに足を進める。
すると道ばたに停められていた6人乗りのトラックに、雁首を揃えた作業員5人の姿が見えた。誰もが口をもごもごさせているところを見ると昼食真っ最中というところか。
そうだよな。
ポカポカ陽気なら外で食べるだろうけど、さすがにこんなに強い冷風では車内に逃げ込む気持ちも分かる。
そのまま足早に通り過ぎ、マンションの入り口に到着したとき俺の目に異様な光景が飛び込んだ。
なんとガードマンが一人っきり、外で弁当らしきものを広げていたのだ。
「 ……は? 」
風除けのつもりかマンションの壁に寄り添い、なるべく小さくなろうとしているのだろう究極に背中を丸めている。
ベランダに出た時の自分と同じように首を亀のように縮めているが、首元を守る物が何も無く容赦ない風に吹きっ晒し。
帽子を被っているので顔は見えなかったが、北風の冷たさに負けた手が箸を持ちながらブルブルと震えていた。
……嘘だろ。いくらガードマンと作業員は別会社の人間とはいえ、こんな寒い日ぐらいちょっと狭くなったとしても車内に招いてやればいいだろう。
可哀想だな、と思った。同時に少しの後ろめたさを覚えた。
いくら正規の休みとはいえ、こうして自分より年下とおぼしき人間が北風吹きすさぶ中で働いる間に俺はコタツでぬくぬくしていたのだ。
しかもやっと訪れた昼食時間だろうに彼は寒さで震えている。
昼休憩は一時間ぐらいだろうか。その間、こんな寒さの中にいたんじゃ休憩そのものに意味が無い。こっちは再びこたつでヌクヌクしながら昼食にありつこうというのに、それじゃあまりに可哀想だ。
「 ……君、良ければウチに来るか?そんなところじゃ寒くてちっとも美味しく感じないだろう 」
「 えっ?! 」
「 そう、君。ガードマンくんだよ。遠慮しなくていいよ。おいで 」
「 …っ…えっ、あっ、ありあとうごらいまふっ。ふぃぃぃぃっっ……さぶいぃぃぃ 」
「 本当にね。…弁当、落とさないように持っておいで 」
「 おっ、落としまへんっ、えったい死守します。ありがろうごらいまふっ 」
「 ぷっ… 」
寒さですっかりかじかんでしまったのだろうに、それでもお礼を口にした彼の礼儀正しさに口元が緩んだ。我ながら良いことをした、と自己満足にしばし浸る。
ここが俺の家、と言って彼を玄関に招き入れたとき、しかし俺は絶句した。
「 ありがとうごじゃいまふ、おやましやす 」
帽子を脱ぎ、ご丁寧にお辞儀をして俺を見上げたガードマンくんはどこから見ても女の子。
彼は彼ではなくショートカットの彼女だったのだ。
まさか女の子がガードマンだったとは考えてもいなかった俺は、彼女を見下ろして二度、三度と目をぱちくりさせた。
そうか。
道理でこの子一人だけがトラックの車内に呼ばれなかったはずだ。
そりゃあそうだろう。
男だらけの中に女の子を呼ぶなんて、常識的な男なら誰だって躊躇するに決まっている。
「 ……あろ? 」
「 あ、ごめん。なんかボーッとしちゃったよ。いいよ、コタツに入りな?スイッチ入れてね 」
「 ありまとうございます~…お邪魔しまふ~~ 」
寒さで回っていない舌っ足らずさがちょっと可愛く……。
ちょっと…?いや、何だかこの子、超絶可愛い気がする。
けど、大丈夫か?
スナック菓子じゃあるまいし、こんな簡単に見ず知らずの男の家にサックリ入るなんて、この子、少々無防備すぎないか?
「 あう~~~ん、あったかぁぁぁいぃぃぃ。ほぐれるぅぅぅ 」
「 ……あの、さ、君。今さら言うけど、俺、ガードマンの仕事をまさか女の子がしていたとは思っていなかったから、さっき玄関で君が女の子って気づいて実はビックリしたんだけど… 」
「 あい、そうだと思っていました。さっき下で私をガードマンくんって呼んだときにそうだと…。でも、だから貴方は優しい人なんだって分かったんです。お心遣いに感謝します! 」
「 あ…そう?……あの、良かったら弁当、温める?レンジで… 」
「 いいんですか?!嬉しいです! 」
コンビニで買ってきた弁当を電子レンジで温め直し、同じように彼女が持ち込んだお弁当も家のレンジで温めた。
「 はい、お弁当…とお茶 」
「 ありがとうございますぅぅぅ!!大切にいただきます。……ゴクッゴクッ…。は~美味しい、あったかぁぁぁいぃぃぃ。幸せぇぇぇ 」
「 ぷっ……お手軽な幸せだな 」
「 だって!!今日ものすごく寒くて本当に地獄だと思ったんですっ!! 」
「 うん、だね。俺もさっきそう思った。ベランダに出たときに 」
「 でしょう?だからここは天国です!地上の楽園です~ 」
「 ぷっ。…それは良かった。ところで休憩は何時まで? 」
「 1時に工事が再開しますのでそれまでです 」
「 そう。じゃあそれまでここにいればいいよ 」
「 !!!本当にありがとうございます。本当に本当に感謝します 」
「 いや、俺の方こそね、普段こんなに人から感謝されるなんてないから偉い人になれた気分だよ。それにしても、なんでまた女の子がガードマンの仕事を? 」
「 それは、時給がハゲタカだからです! 」
「 ハゲタカ? 」
「 馬鹿高いって意味です! 」
「 ああ、そうなんだ 」
あとで社さんに話したら笑い転げられるだろうけど
このとき俺のハートにはもう、恋の矢がサックリと刺さっていた。
E N D
…で、工事期間中(…と言っても道路工事とは違うので一ヶ月ほど)蓮くんは自分のお休みの日に必ずキョーコちゃんを自宅に招き、一緒にお昼を摂るように。
その際、キョコちゃんが時給の良いガードマンの仕事をしているのは幼なじみの男のためだと知り、早々にショータローと縁を切った方がいいと提案、幾度となくキョーコちゃんを説得。
そしてキョーコちゃんがフリーになったと同時に見事キョコちゃんを自分の彼女に♡(〃∇〃) …っていう、お手軽妄想!お粗末っ(笑)※続きません
⇒とつぜんハートに恋の矢が・拍手
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