一葉です。本日のこちらは本誌を読んだときには思いつかない…と言っていたACT.262の続き妄想です。
従いまして原作のネタバレが含まれています。
どんなネタでもバレちゃイヤン(/ω\)…なお嬢様は回れ右を推奨です。
キョーコちゃんsideでお届け致します。
お楽しみ頂ければ幸いです。
■ メモリーズ ■
「 ――――――― 最上さん 」
「 …は 」
敦賀さんの指が触れ、自分の小指が浮いた瞬間、背筋がザワリと逆立った。
思わず見上げた敦賀さんはとても優しい表情で、咄嗟に手を引っ込める。
「 ……っ!!!やめて下さい、放して!!!! 」
微かに触れた疑似の指輪は敦賀さんの手に残り、私は胸元で自分の両手を固く握った。
その顔は、もしかしたら過去を思い出していた?
4年前、あの女に渡したピンキーリングの思い出を……。
それを想像しただけで肩が震えて怒りと悔しさが込み上げた。
それは、いま食べたばかりのお弁当をすべて戻しそうなほどだった。
「 ……最上さん? 」
「 こんなこと、敦賀さんにされたくなかった!! 」
「 こんなこと? 」
最低だ。
まさか私があの女の身代わりにされるとは。
「 ……ごめん。あの…気に障ったのなら謝る。ごめん、最上さん 」
でも本当に最低なのは自分だと思った。
敦賀さんは何も悪くないのに。
私がこんな気持ちになるのは、この人に対して毒な気持ちがあるからで、敦賀さんが謝る必要などどこにも無いというのに。
でも嫌だったの、ものすごく。
貴方の心の中に誰かが住んでいる現実が。
だって、私
私はあなたを………
「 …っ……ごめんなさい、違います。悪いのは私です。私の方こそスミマセン。でも…… 」
「 あの、ね…最上さん。指にはめるのが嫌なら、押し花にしてから君に返すっていうのはどう? 」
「 え?……なん……で、ですか……? 」
「 なんでって、以前、俺の父もそうしていたから 」
「 え? 」
「 もちろん俺の母にね。見よう見真似だから上手くできるか判らないけど、そこはホラ!ちゃんと出来るように調べてからやってみるし!
これ、せっかく君の為に作ったから……出来る事ならずっと君に持っていて欲しいから 」
「 ……私の……ため? 」
「 そうだよ。だってこれ君のじゃないか 」
「 ……っ…… 」
「 ちなみに俺、さっき君に指輪を返す時ちょっとノスタルジックな気分になってた。両親がしていたその時の姿を思い出して…… 」
眉尻を下げながらそう告白してくれた敦賀さんの表情は、さっき私に指輪を差し出してくれた時と同じ顔。
それはどこか懐かしそうで、どこか嬉しそうな……。
私の瞳が左右に揺れた。
戸惑いを隠せなかった。
「 敦賀さん 」
「 うん? 」
「 さっき、ご両親のことを思い出されていたんですか? 」
あの女に指輪を渡したときじゃなく?
「 うん、思い出してた。
父もこんな気持ちだったのかなって考えてた 」
「 ……っっっ!!!! 」
とつぜん私の目から大粒の涙が溢れた。
湧き上がっていた嫌悪感はどこかに消えて、表現しにくい感情が私の中に満ちていた。
私の目から洪水が起きたと同時にギョッと表情を変えた敦賀さんは、右へ左へと何度も首を傾げながら私の顔を覗き込んだ。
「 ちょっ?!待って最上さん!?なんで急にっっっ??! 」
「 あ……ごめんなさい……あれ?どうしよう、なんか止まらないです……っ… 」
「 困……っ…最上さん!頼むから、気をしっかり持って!…って言うのはおかしいか??えっと、えっと……え?……っっ… 」
「 ……ふっ 」
ただの事務所の後輩が
ただこの人の目の前で意味不明に泣き出したってだけなのに
いつもはあんなにスマート紳士な敦賀さんが、やたらとオロオロしているのが少しだけおかしかった。
「 ……っと…… 」
「 いいんです。私のこれは気にしないで下さい…… 」
「 最上さん。俺、いままた一つ思い出した 」
「 え? 」
「 そういえばそんな事もあったなって。父が花の指輪を贈ったとき、母もそうやって泣いたことがあったんだ 」
「 それ、本当ですか? 」
「 本当だよ。それで俺の父はね、こうやって自分の指で優しく母の涙を拭いながら、そっと顔を覗き込んで幸せそうに微笑んで……こう…心のままに母を抱きしめていたよ。ちょうどこんな風にね 」
「 ……っっ!!! 」
敦賀さんの腕に包まれて、また涙が込み上げた。
この気持ちをどう表現すればいいのかがやっぱり自分には判らなくて。
ただ、これだけは間違いない。
心の中でたくさんの感情が溢れる中、一番多かったのは確かに嬉しい気持ちだった。
「 ……父もきっとこういう気持ちだったんだろうな 」
敦賀さんがどういう想いでそう囁いたのかは判らない。
けれど嬉しかったです、敦賀さん。
あなたが思い出していたのが
ご両親のそれだったと知れて
E N D
少しだけ色あせた押し花の指輪を眺めながら、いつかこの出来事を振り返る日が来たらいい。
もちろんその時は二人寄り添いながら笑顔で。
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