一葉です。いつも本当にありがとうございます。
弊宅500記事を記念して、一般枠からリクエストして下さったセーちゃん様リクエストの続きをお届け致します。
ニマニマ、萌え萌えして頂けたら嬉しいです。
前話はこちらです⇒恋は甘い囁き◇前編
■ 恋は甘い囁き ◇中編 ■
それは例えばこんな時。
「 敦賀さん。おはようございます! 」
「 最上さん、おはよう 」
これはいつもの会話です。
敦賀さんと共にLME芸能事務所に所属している後輩の私が、尊敬してやまない大先輩に挨拶をしているだけなのです。
なのに、私が声をかけた途端、敦賀さんはほんわりと表情を緩めてくれて、あまつさえ直視するのが難しいほど神々しい笑みを浮かべるだけでなく…
「 ん。今日も元気でなにより。最上さん、これから別の局に行くんだろ?俺もその近くに移動するから俺の車で送ってあげるよ 」
私の頭をポンポンってしながらこんな風に優しく手を差し伸べてくれるから、つい甘えてしまう私がいて
「 本当ですか?嬉しいです。ありがとうございます 」
じゃあ行こうか、なんて言われてヒョコヒョコ後を付いていくと、突然立ち止まった敦賀さんの背中にツッコんじゃったりする私がいて……
「 ……なにをしているんだ、君は 」
「 すぅびばせん。だって敦賀さんが急に立ち止まるから…… 」
「「「 ……っ……ふふふ…… 」」」
私たちが一緒にいると、周りの人達は相変わらずニマニマ、ニマニマ。
そんなことなどまるで気にしない風な敦賀さんは、紅葉を見つめる蓮真のようなまなざしで私のことを見下ろして
その視線に私はドキドキするしかなかった。
「 隣を歩けばいいのに後ろを付いてきたりするからだろう。本当にいるのかどうか確認しようとして立ち止まっただけだ。ほら、最上さん 」
「 ほらって……。なんですか、この手 」
「 手を差し出されたら差し出してくるのが常識! 」
「 にゃうっ?!敦賀さん、手なんか繋がなくても…… 」
私があなたを見失ったりするはずない…とか、決して口には出せないから。
強引に結ばれた手だとしても振りほどくなんて出来やしない。
放っておいてくれればいいのにまたそれを周りの人が煽るから、敦賀さんが目の前にいると嬉しい反面、私はいたたまれなかった。
だってね、この恋心は誰にも気づかれちゃダメなのよ。
「 ね、見て見て。紅葉と蓮真がイチャイチャしてるぅ 」
「 あ、ほんと!それよね。それをドラマでもやってくれたら良かったのに 」
「 同感!!いいわ。もっと仲良くしちゃって 」
ちがう。私はいま紅葉じゃないし
敦賀さんは蓮真じゃない。
だけど、周りがそれを求めるから敦賀さんはその態度を貫こうとしているのだと思うし、私個人としては周りがそう見てくれるからこの状況を享受できていたのだと思う。
ほんの少しだけ素直になった紅葉の気分で
大好きな人の手を握り返す。
するとそれに気付いた敦賀さんが再び私に視線を落とした。
まるで蓮真のような慎み深い愛情をたたえて私に微笑みかけるから、だから私も笑い返すの。
長く紅葉に心を傾けてくれていた、蓮真の愛情を受け止めるかのように……。
「 京子ちゃん。だいぶ遅くなっちゃったけど紅葉が主人公のあのドラマ、本当に良かったわ!感動しちゃった 」
「 ありがとうございます 」
「 ねぇ?正直な話、紅葉を演じた京子ちゃん的には志津摩と蓮真どっちが好き? 」
「 あ、それは、私は蓮真が素敵だと思いました 」
「 でしょ?!なんかわかる気がする~。だって京子ちゃん、古賀くんと映画宣伝していた時より敦賀くんと一緒に居る方が幸せそうだもの 」
このとき心臓が止まりそうなほどドキッとして
慌ててそれを否定した。
「 違いますよ?!私が言ったのは敦賀さんではなく蓮真のことで…… 」
「 うん、判っているわよ。紅葉としてと言うより京子ちゃん的に志津摩より蓮真がいいって思ったってことでしょ?それでいいと思う。だって私もそう思うし!そういうことでしょ? 」
「 そう。そういうことです…… 」
「 そうよね。実際に蓮真の方が超イイ男っぷりだったし。敦賀くん、カッコ良かったわ~。ねっ?! 」
「 え?ええ、はい。そりゃあもうあの人は何を演じさせてもカッコ良くて… 」
「 やっぱり女って優しい男に弱いわよね。だから志津摩より蓮真の方がいいってみんなが言うのよね。ね、京子ちゃんも思うでしょ?敦賀くんの方が好きでしょ? 」
「 はい、そりゃあもう…って、あれ?! 」
ちょっと待つのよ、私!!
この人いま私になんて言った?敦賀さんの方が?!
それ、志津摩と蓮真を比べてじゃなくて古賀さんと敦賀さんのことを言っていませんか?
確かに私は古賀さんより断然、敦賀さんの方が好きですけど…って、ちがぁう!!
お願いですから役と本人をごっちゃにして話すのをやめて頂けませんか。
隠さなきゃいけないのに
敦賀さんへの想いを素直にぶちまけそうになってしまう。
「 あの~…少し違うんですけど。私が言ったのは蓮…… 」
「 やん、京子ちゃんったら!!もう敦賀くんを呼び捨て~。
でもそうなるわよね。だってあのドラマをやってから二人は一層仲が良くなっているもの。息ピッタリって感じで、羨ましいぞ~。このこのぉ 」
「 違います!私が言おうとしたのは敦賀さんの名前じゃなくて役名の蓮真…… 」
「 いいの~、そんな焦らなくても判っているから大丈夫~。
紅葉には絶対に蓮真よね。だってあんなに紅葉のことを一途に想っているんだもん。女としてはそういう男と一緒になった方が倖せになれるんだからね、蓮真、超お勧め!! 」
……お勧めって…。
お勧めして下さるのは有難いんですけどそれはドラマの話でしょう?
でもいま、あなたは素で敦賀さんを推していませんでした?
それが良く分からない人が多くて本当に困るの。
いまだって軽く混乱してる。
この人が言っているのは本当はどっち?
敦賀さん推し?それとも蓮真推し?
でもどっちにしても止めて欲しい。
そのうちどちらに比重を置いて話しているのか自分自身でさえ訳が分からなくなってしまって、危うく自分の恋心を暴露しそうになる自分が怖い。
「 京子ちゃん、どうかした? 」
「 ……いえ、ちょっと疲れたなぁって思って… 」
それでも最初の頃は、敦賀さんはさすがだわ…とそう思っていただけだった。
現実とドラマを混同してしまう人が現れるなんて敦賀さんの演技が本物に見えるという証だ。だからさすがに敦賀さんよね、と私は感心していたのだ。
「 そっか。京子ちゃん、色々忙しそうだものね。大丈夫?敦賀くん、呼ぶ? 」
「 だっ、大丈夫です!そんな、なぜに敦賀さんを…… 」
「 ん?それは私が敦賀くんに会いたいから♡
あのドラマ、紅葉と蓮真がはっきりくっついて終わったら良かったのにぃ。紅葉もそうしたかったでしょ? 」
「 あはは。そうですね。それだけに残念ですぅ。ドラマはもう終わってしまったので 」
そして願わくばこの会話も終わりにして欲しい。
「 ねー、残念よねぇ。せっかく京子ちゃんが志津摩より蓮真って心が決まっているのに 」
「 決まってなんか… 」
「 え?でもいま京子ちゃんそう言ったじゃない。蓮真の方がいいって 」
「 言いましたけど。確かに言いましたけどっ 」
でも私は演じるだけで、あくまでもシナリオを考えるのは私じゃない訳ですし…ってハッキリ言うべき?
こういう会話をいったい何度繰り返せば蓮真波は引いてくれるのかしら。
紅葉と蓮真の関係がはっきりしないままENDが結ばれてしまったから、未だに私に蓮真をお勧めする人がいて、そういう人はリアルでも敦賀さんの事が好きらしくて妙な勢いで敦賀さん推しを絡めて来るから私はかなり困惑していた。
だって本当はね。
ドラマをやっている間も心底、苦労していたの。
言うなれば紅葉を演じている私は、紅葉が片想いしているはずの志津摩を演じた古賀さんではなく、志津摩のいとこの蓮真を演じた敦賀さんが好きなのだ。
誰にも悟られてはいけない恋心。
それを押し殺すのに苦労した。
なのに、そんな私の胸中を知ってか知らずか、状況はエスカレートするばかり。
「 敦賀さん。先日に引き続きまたまた同乗させていただき有難うございました 」
「 いや。このあとも頑張って 」
「 はい、頑張ります。敦賀さんもがんば…… 」
「 やーん。彼氏に送ってもらったの?京子ちゃんったら♡ 」
「 いえ、敦賀さんは彼氏じゃないですけど 」
「 あん、隠す必要ないでしょ。紅葉が倖せなら私も幸せなんだから。いいのよ、堂々としていて 」
「 ですからそもそも私はいま紅葉じゃな… 」
「 あ~素敵よねぇ!!自分に一途な年上の色男、さいっこぉぉ!!
敦賀さん。蓮真、本当にステキでしたよ。どうか紅葉を倖せにしてあげてくださいねっ 」
「 ……ありがとう。倖せに出来るように頑張るよ 」
敦賀さんの凄い所はこういう所だと思う。
そしてそれは社さんにも同じ事が言える。
自分の存在はまるで無視されているっていうのに、車内で社さんは楽しそうにクスクス笑っているだけだった。
「 最上さん。いいから放っておこう。無下に反論しても意味なんてないよ 」
「 ……そうでしょうか 」
意味は無いかも知れないけど、正直どう反応したらいいかもう本当に困っているんです。
だって私は真実あなたが好きだから。
隠し通せるかが判らず自信が揺らぐ。
それに、もしそうなってしまったら敦賀さんだって困るでしょう?
なにを考えているんだこの子は…って、絶対そう思うでしょう?
私の窮地を他所に、周りの人達は私たちを見つけるたびに私と敦賀さんが近づくようにわざと仕向ける。
まるでそうするのが当たり前の顔で、そうするのが使命のように。
「 京子ちゃん 」
「 はい? 」
「 敦賀くん、向こうに来ていたわよ 」
「 え?そうなんですか 」
「 そうなんですか、なんて涼しい顔していないで。ほら、顔を見せてあげなさいな。蓮真だったら絶対喜んじゃうから♪ 」
「 ……っ!! 」
だからいま私は紅葉じゃないです…って、最初のうちこそ言っていたけど、およそ一ヶ月が過ぎた頃、敦賀さんが私にこう言った。
「 最上さん。抵抗するのもね、あからさま過ぎるとそれはファンの心を裏切ることになるだろ?だから従順に応じちゃっていいよ。俺もそうするようにするから 」
「 ……う……はい。敦賀さんがそうおっしゃるなら… 」
敦賀さんにこう言われてから私は抵抗するのをやめていた。確かにその通りかもしれないと思って。
紅葉と蓮真を応援してくれている人たちは、原作の熱烈なファンなのかも知れない。
そういう人達の声に押されて紅葉のドラマが出来たのだから、そのドラマを見て更に夢みたファンの人達の希望の声を私が否定してはいけないと思った。
それに、敦賀さんにも。
あからさまに自分が否定的な態度でいるのは失礼だと思ったし、何より堂々とあの人に近づけるのは嬉しいことだったから、敦賀さんが言ったようにそれからは従順にしようと心がけた。
「 ほとぼりが冷めるまで変に抵抗せずに、ね? 」
「 はい、じゃあそうしますね 」
「 うん、ね。そうしよう。お互いに 」
「 はい、分かりました!! 」
そうしようねって敦賀さんとも約束をしたから、それからは周りの勧めに乗っかって否定するのをやめていた。
もともと私は後輩だから、敦賀さんがいるよって言われればちょっと挨拶をして来ますねって席を立つのは当たり前のことだったし。
それで敦賀さんと二人でいる時に良かったわねって言われたら、ちょっと図々しいとは思うけど、はい良かったです…って答えていた。
でもそれが、周りの目には紅葉の変化に見えたのかも知れない。
それこそ、志津摩への恋心に終止符を打ち、新たな恋に目を向け始めた紅葉のように。
その証拠に
蓮真推しフィーバーは収束するどころかさらに加速していった。
⇒後編へ続く
蓮真推しフィーバー。
一葉が一番熱狂的かも(笑)
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