いつもありがと、いちよーでっすо(ж>▽<)y ☆
このお話は、先日お届けしましたACT.258続き妄想「世界で一番」の続きです。
コミックス派でネタバレ回避お嬢様はこちらより回れ右を推奨です。
ちなみにですね、ものすごーく長くなっちゃったんですよ。頭の中ではそれほど嵩張る内容じゃないと思っていたのですけどね。
どちらにせよお愉しみ頂けたら幸いです。
■ プライスレス・キス ■
その夜、最上さんは俺の目の前で頭を抱え、盛大に背中を丸めてその姿を披露した。
頭の片隅でクスリと和み、何とも言えずに軽く握った右拳を口元に運んだ俺は、この子が気付かない程度にひっそりと微笑む。
――――――― なるほど。これが噂のorzポーズ……。
いま最上さんが打ちひしがれてしまったのは、そうなってしまうだろうと判っていながら俺がそれを尋ねたから。
笑い声が漏れそうになって、一度彼女から視線を外した俺は一呼吸おいてから再び顔向きを戻し、怯えている風の最上さんを見つめた。
もう一度柔らかく口元を緩めた俺は、貴島くんと飲みに行って本当に良かった…と、本気で思った。
「 …っ?!!落とされそうになった?! 」
携帯越しに社さんから緊急事態だという話を聞かされたとき、俺は耳を疑った。
「 そう。俺が間に合わなかったら間違いなくそうなっていた気がする。俺がそう指摘したら簡単にうやむやにされたけどな。
そんな恐ろしいことぉ…ってウソ泣きされて、あっという間に俺を悪者に仕立てたんだ。そういうの、相変わらずだよ、あの二人は 」
「 ……っ…… 」
確かに、あの子ならウソ泣きぐらい普通にしそうだと思った。
それでも俺は疑っていた。
まさか人を落とそうとするなんて。
それはほぼ殺人未遂という行為なのに、まさか本当に?と眉をひそめた。
「 ……ということで、世界で一番セキュリティがしっかりしているお前のマンションにキョーコちゃんを預けたいと思うんだけど 」
「 世界で一番? 」
……って、一体、誰の評価ですか…って問う間も与えず、社さんは軽く笑った。
「 トップ俳優のお前が安心して暮らしていられるマンションだ。セキュリティに問題なんてないだろ。
それに、そこの家主を俺は心から信用しているんだ。
蓮、俺は知っているよ。お前がキョーコちゃんを、傷つけたり泣かせたりするような男じゃないって 」
それは買いかぶり過ぎですよ、社さん。
それこそ時と場合に依るでしょう。
だいたい社さんは幾度かそれを目撃したじゃないですか。
俺の姿を見ただけで、本気で泣き叫んで逃げて行った最上さんの姿を……。
「 蓮 」
「 ……はい 」
「 どんなにセキュリティがしっかりした家を見つけたって、キョーコちゃんが一人で過ごす時間があるっていう時点で俺の中に不安が残る。だから…と思ったんだ。
お前にも色々思う所はあるかも知れないけど、俺はお前の所にキョーコちゃんを預けたい。ダメか? 」
社さんの声は真剣で、顔なんて見えなくたって本心から出た言葉なのだろう事は直ぐに判った。
これが例えば社長と面会した直後に持ちかけられた話だったとしたら、絶対ムリだと俺は断っていたに違いない。
なぜなら、あの写真を見せられてからずっと引っかかっていたから。
『 わかるよ。失恋したら一人寂しいマンションに帰りたくないもんな…。
ままならないと思ってたあの子を横からかっさらわれて…… 』
貴島くんも知っていたあの出来事。
どうしてそうなった?
なぜこんなことになったんだ…と、それこそ出口のない迷路に迷い込んだように俺の頭を支配したあの写真。
この状態のままあの子を目の前にしたら
最上さんが泣き出してもひどい事をしそうだ…と俺は危惧すらしていた。
だけど、今の俺は――――――― ……
「 社さん。お話は分かりました。もちろんダメだなんて言わないですよ。そうですね、そんな話を聞いてしまったら確かにあの子が一人きりになる時間があるのを俺も不安に思います。でも、そんな風になり得る時間を最上さんが俺の家で過ごしてくれるなら……多少は解消されるかな 」
「 本当か!サンキュ、蓮 」
「 いえ、お礼なんて…。けど社さん。そんな話をしたら逆に最上さんが遠慮しそうな気がしますけど 」
「 ぬかりない。お前の所だって言ってないから。それに、荷物をそっちに運んじゃえば気軽にUターンなんて出来ないだろ。加えてお前がそれをさせないだろうし? 」
「 ……クス 」
この場合、さすが敏腕って俺は社さんを褒めるべきなのだろうか。
だけど少なくとも社さんがそういうつもりなら、俺はその期待に応えようと思った。
「 やぁ、最上さん、いらっしゃい。君の部屋はもう用意してあるから荷物は自分で解いてもらえる?それと、何か月になるのかは判らないけど気兼ねしなくていいから。これからよろしく 」
「 ………敦賀さん… 」
案の定、最上さんは瞳を曇らせてしまったから
Uターンを阻止すべく、俺は彼女に釘を刺した。
「 あ、そうそう。一応念のために言っておくけど、誰にも迷惑をかけずに何とかしてみせます…っていうのは一番無責任な発言だから 」
当然、彼女が持ち得る選択肢は一つだけに絞られ、最上さんは素直に降参の意を示した。
「 こちらこそ、これからどうぞよろしくお願いします。なるべくご迷惑をおかけしないようにしますので 」
ご迷惑?
おかけするのは俺の方かも知れないよ?
なぜなら
君が一番触れて欲しくないと思っているだろうそれに、俺は堂々と踏み込むつもりでいるのだから。
…――――――― そして、互いに仕事を終えて戻った夜。
俺は最上さんと向き合い、予定通りの質問を口にした。
「 最上さん。君をこの家に住まわせるに当たり、一つ確認しておきたい事があるんだ 」
「 はい、なんでしょうか? 」
「 君はあの夜。俺と公園で会う前にアイツと会っていただろう 」
意表を突く質問だったのか、最上さんは表情を消して両目を大きく見開いた。
「 ……あの夜?…とはどの夜の事で…。それに、あいつとは? 」
「 君が俺とコーンを見間違えて公園で盛大に号泣した夜のことだよ。俺に会う前に君はアイツと会っていて……二度目は許さないって言った接触をしただろう? 」
「 ………っっっっっ!!?!!! 」
俺のこれに多少の演技が入っていなかったとは言わない。
そのせいなのか最上さんはかつてないほど怯えを見せて、一瞬で壁際まで下がるとそこで頭を抱えて背中を丸めた。
そう。
orzなポーズを……。
「 最上さん 」
「 …っっっ…敦賀さん、すみませんでした!!!でもお願いです!あとで切腹でも何でもしますから!!!だからどうか今だけ、命だけはお助け下さい!! 」
「 こら、なにを言い出すんだ 」
「 だだだだだって、紅葉の役はやっと獲ったばかりで、映画の撮影はこれから始まるんです!色々頑張って修業して、モー子さんにも虎徹さんにもお世話になって……。怖い思いだってして……それでやっとここまで来たんです。だからっっっっ 」
それこそ真摯なまなざしで
肩も背筋も震わせた最上さんが、俺の足元で三つ指をつく。
床に額を擦り付けん勢いで背中を丸めた最上さんの懇願姿勢はやけに堂に入っていて、本当に、貴島くんと飲みに行って良かった…と思った。
あのときその決断をしなかったら
こんな風に凪いだ心でこの話を口にすることは出来なかっただろうし
それこそ落ち着いた姿勢でこの子の話を聞こう…なんて態度を取ることすら出来なかった。
「 最上さん。そんなことしなくていいから顔を上げて 」
「 嫌です!ダメです!!敦賀さん、どうか許して下さい!!約束を守れなかったことは謝ります!!本当にすみませんでした!!ですがどうか、どうかっっ!! 」
「 言っておくけどね、そりゃ、約束を守れなかったこと自体は少し腹立たしく思っているけど 」
「 やっぱり 」
「 思っているけど!
でも、赦さないなんて思ってないよ 」
「 ………… 」
「 ほら、顔を上げて 」
「 ………敦賀さん。どうしてですか?だって私、約束…… 」
「 俺はね、昨日のことのように覚えているんだ。俺の胸であんなに切なそうに号泣した君の姿を…。
それが全ての答えだろう。心ここにあらずだった君の隙を、卑怯にもアイツがついたんだ。どうしてそれを責められる 」
「 ……っっ……つるがさん… 」
「 なんてね。本音を言うと知った時はだいぶショックだった。君と同じように…って言っちゃうと大袈裟かも知れないけど、それでも、俺にも隙が出てしまう程度にはショックだったんだよ。
でもお陰で気付けた。君と同じ立場に立ったことで 」
キスしていたからと言って
そこに心があったとは限らないってことに気付けた。
「 ……同じ立場? 」
「 実は俺、昨日、貴島くんと飲みに行ったんだけど…… 」
「 え?貴島さんと?! 」
「 うん。その帰り際に出会い頭の事故があってね 」
「 出会い頭の事故…ですか?まさか車?! 」
「 いや、違うから。前に君に話した事があるだろう。俺が子供の頃、たらこ唇がチャームなサラリーマンのおじさんと出会い頭にキスした事があったって。もちろん俺はそれをキスだと認めていないけど。…で、それをまたやっちゃったんだよ、俺 」
「 ええっ?!またおじさんとですか?! 」
「 違う。今回のはセクシーをウリにしていた女優と、だけど…… 」
「 女…優さん、と……? 」
「 そ。間抜けだろ、俺。笑っていいよ?最上さん 」
「 ……っ!!! 」
てっきり、俺が言った通りに最上さんは頬を引きつらせても笑うのかなって想像していたのに、彼女は塩水をかけられた植物のようにシュン…と肩を落とした。
「 敦賀さん 」
「 ん? 」
「 それ、本当に出会い頭の…だったんですか? 」
「 そうだけど。なぜそんな事を聞く? 」
「 いえ、別に。べつに、敦賀さんがどなたと恋のステップを踏もうが私には関係ありませんから…… 」
「 ………… 」
また君は。
どうしてそう俺の理性を試そうとするんだ。
だいたいね、キスしたぐらいで恋のステップを踏めるなら
俺と君の方がよっぽどそうなっているはずだと思うんだけど。
……って、違うか。
この子とキスをしたのは蓮じゃなく久遠だった。
「 ……最上さん? 」
「 ………ハイ… 」
「 君がその役を獲ったあとで怖い思いをしたって話は社さんから聞いている。だから俺の所に来たんだろう、君は 」
「 はい、そうです 」
「 うん。なのに俺が君に切腹を命じるはずが無いだろう。それを忘れないように。あとね、何でもするって君は言ったけど、イヤだったら避けていいから 」
「 ………へ?……っ!???…… 」
何が?…と疑問符を浮かべた最上さんと目が合って
決してゆっくりではないスピードでこの子に近づいた。
イヤだったら避けていいって言ったのは俺の本音で
その証拠に俺は
細い肩を抱くことも
小さな顎を抱くこともしようなんて思わなかった。
「 ……っ… 」
だって、グアムでしたのはそうだっただろ?
まるで求め合ったように触れた唇。あのキスをしたかった。
今度は蓮である俺で
君と初めてのキスを交わし
そしてこのキスから、君と恋のステップを踏めるようになったらいい。
「 ……つ、るがさ…ん…… 」
最上さんは少しも逃げるそぶりを見せず
唇が離れた途端に触れ合ったばかりのその唇で、細く俺の名を刻んだ。
「 最上さん。このキスは君にとって何回目? 」
「 ……っっっ?! 」
――――――― 触れあっていた時間もそうだけど
離れてから視界に入った彼女の顔を見澄まして
心が温かくなったのはなぜだろう。
言葉にされた途端に戸惑いを隠せなくなったのか、最上さんは両目を挙動不審に動かした。
「 ……はっ……っっっ…初めてはコーンでっ!敦賀さんは2番目ですっ!!
私、もう寝ます!おやすみなさい!!! 」
「 …あ、オヤス、ミ… 」
燃え上がりそうなほど真っ赤な顔で、逃げてゆくあの子の後姿に喜色が浮かぶ。
追いかけるようにオヤスミと呟いた俺は、扉がパタンと閉じた所でどうしようもなく締まりがない破顔を浮かべてゴロンと床に転がった。
「 ……ふっ。ファースト・キスがコーンで……セカンドが俺?なるほど、そっか。……くっ……っっっ… 」
それ、どっちも俺だって知ったら、君はどんな反応をするのだろう。
なんてね。今はいいか。
そんなこと考えずとも。
「 今それを考えた所で意味なんてないんだからな。今はまだ 」
ただ、一つだけはっきりしたな、と思った。
どんな時でも
あの子と交わすキスだけが
俺にとってとてつもない価値があるものだってことが。
E N D
限定記事でお届けした素敵続き妄想を読んでいないお嬢様にも、何となく伝わるように書いたつもりです。
ちなみにorzポーズを噂していたのは某様です(笑)
⇒ACT.258続き妄想の続き◇プライスレス・キス◇拍手
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