お付き合い頂きましてありがとうございます、一葉です。
こちらは現代パラレル蓮キョ、短編連載です。
お楽しみいただけたら嬉しいです。
前話こちらです⇒ 創生の森◇1
■ 創生の森 ◇2 ■
――――――― おかしい。今日も更新されていない…。
ひと口だけ味わったコンビニのおにぎりを袋の上に戻し、最新情報に更新してみたが表示は何も変わらない。
前回はいつだったっけ?…と更新日付を確認するとやはり4日前の日付。
……変だな。
今まではずっと2~3日に一度、必ず更新されていたのに…。
サイト自体がまだ若いから、読者数はそれほど多いという訳でもないのかも知れない。
けれど設置されているカウンターを見れば少なくとも自分と同じように閲覧を楽しみにしている人がいるのが判る。
ひょっとして、具合が悪くて更新できないとか…?
それとも飽きてしまったのだろうか。
いや、それは有り得ない気がする…と、空いた右手を軽く握り、口元を抑えた所で休憩室のドアが開いた。
「 れーん、昼食中に悪い!! 」
「 社さん、なんです? 」
「 すまん!…って、また携帯見てるのか。本当に意外だな。特に本好きって訳でもないお前が…。
そんなに面白いのか?その話、素人が書き綴っているものなんだろ? 」
「 だと思いますけど……。けど、少なくとも先が気になるので読みたいと思うほどには面白いですよ。ところで何です? 」
「 あっ、そうだ!いま電話があって、あと30分ほどしたら持ち込み客が来るって言うんだ。お前の休憩もちょうどその頃終わるだろ。受付を頼めるか? 」
「 ああ、はい。大丈夫ですよ 」
「 悪いな。俺はこれからPCとHDの復旧作業で手が離せなくなるからさ 」
「 あー、あの!窓全開で外出したらゲリラ豪雨になって有り得ないほど水浸し、慌てて帰宅し避難させようと持ち上げたら手が滑って床に落としたとかいうアレ。……復旧可能なんですか?情報はどれぐらい拾えそうです? 」
「 それはやってみないと判らん 」
俺の質問に渋い表情を浮かべ、胸の前で両手を組んだ社さんのそれに、我ながら愚問を投げかけてしまったな…と笑いが浮かんだ。
「 ふっ。それもそうですね 」
ここは、小さいながらも俺の職場である。
俺と社さん以外の従業員など一人もいない二人で起ち上げた会社で、社名は情報改復センター。
故障したパソコンや認識しない記憶媒体…例えばMDやHD、USBやSDカードなどを対象に、何らかの不具合により取り出せなくなった情報を取り出し、改復、あるいは回復させる会社なのだ。
ベンチャー企業…というと聞こえがいいかも知れないが、実態は目新しいものなど何もない。
けれど俺たちは自分達の技術に絶対のプライドを持っていた。
それもそうだ。
俺達は自分達が持ち得る技術がきっと人様の役に立つ。そういう自信があったからこそ起業したのだから。
「 ちなみに持ち込みって法人ですか? 」
「 いや、個人みたいだ。女の子の声だったな 」
「 ……なるほど 」
「 何がなるほどなんだよ 」
「 いえ、どこかの会社の営業さんとかだったら贔屓にしてもらえるかな…とか、考えただけです 」
俺の言葉に社さんはクスリ…と軽い笑みを漏らした。
「 蓮。まだ起業して半年も経っていないだろ。そんな焦らなくても堅実な仕事をしていけば自然と依頼は増えてくれると俺は考えてる 」
「 ……ですね 」
「 じゃ、頼むな 」
「 はい……っと、ちょっと待った!社さん 」
「 うん? 」
「 名前!持ち込みする人の名前は聞いてないんですか? 」
「 あ、悪い。最上キョーコって言ってた 」
キョーコ?
何てタイムリーな…。
「 了解です 」
「 よろしく! 」
もちろん、想像なんてしているはずもなかった。
30分後、データ復旧の依頼者となる持ち込み主の最上キョーコという女性が、まさか俺がハマった小説を執筆している京子本人であることなど。
⇒創生の森・3 へ続く
ところで、続きが先読みできるお話って、読者様は読んでいて面白いのだろうか…。
うん、ま、いっか♡
※ニュアンスの差※
回復⇒一度悪い状態になったものが元の状態に戻ること。一度失ったものを取り戻すこと。
改復⇒状況や形態を元通りに戻すこと。
⇒創生の森◇2・拍手
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