モチベーション・ダダ滑り低空飛行中一葉です。
なのに勢い込んで妙な話を書いてしまった…。
たまには逆の立場を、と思っただけだったのに。
性急な展開の蓮キョですが、宜しければご賞味くださいマセ。
■ 魅惑な約束 ■
さすがにお昼時間を迎えると、張りつめていた現場の緊張感も緩やかにほぐれていくようだった。
今日は突然入ったお仕事だったから
どうなるかと冷や冷やしたけど
自分なりに納得のいく仕事が出来た、と
少し誇らしげに笑顔を浮かべる。
また、敦賀さんに報告したいな…なんて
どこか甘えた気持ちが顔を出した。
「 あれ?京子ちゃん、それ自前? 」
「 あ、はい。そうなんです 」
今日はもともと学校に行く予定だったから
たまたまお弁当を持って来ていた。
現場にロケ弁当も用意されているのに、と教えてもらったけれど
大丈夫です、と笑顔を向け、だるまやでこしらえたお手製のお弁当を広げる。
「 わー、美味しそうねえ。自分で作ったの? 」
「 えへへ…。はい、そうなんですぅ 」
現場で用意してもらえるお弁当は有難いと思うけど
和食が好きな自分としては、揚げ物中心のお弁当はどうも苦手で
無理に勧められることはないだろうけど
それでもつい予防線を張った。
「 実はいま、ダイエット中なので… 」
「 えー?そうなの?10代の女の子にダイエットは必要ないと思うよー? 」
「 …ふぅん…ダイエットねぇー。俺にはしっかり食べろとか言うくせに? 」
背中から届いた冷ややかな声にビクつき
大急ぎで振り向いた。
現れた神の姿に私の頭は大パニック。
「 きゃっ!?つ…敦賀さ…どうしてここに… 」
「 ん?近くまで来たからついでに寄ったんだ。先輩としてご挨拶がてら差し入れを…と思ってね 」
神の寵児がニーッコリと笑顔を浮かべた瞬間
現場は黄色い声に埋め尽くされたけれど
急遽入った後輩の仕事現場に
芸能界でトップに君臨する大先輩が差し入れ持ってご挨拶??
私は一体、どこから突っ込めばいいのでしょうか…
「 だからね、俺達たまたまその時、LMEにいたんだよ 」
まだ何となく黄色い声がざわめく現場の中で、急遽用意してもらったイスに腰を下ろした社さんがきらびやかなご馳走を前に爽やかな笑顔を浮かべた。
どうやら椹さんが私に連絡をくれたとき
お二人はその内容を聞いていたらしく
急な仕事ならもしかして、と気を回し
わざわざ差し入れを持って来てくれたということなんだけど…。
「 …普通、先輩が後輩に差し入れってしないと思います 」
拡げられたお弁当の豪華さに思わず私は眩暈を覚えた。
繰り返すけど、本当に急遽いただいたお仕事なんですよ?
なのに、お昼時間に間に合うように、と足を運んでくれた敦賀さんが持参して下さった差し入れは有名店の和食弁当で
しかも現場のスタッフさん全員にまで行き渡る数を用意するなんて
本気で普通じゃないですよね?
「 普通ならね。でも君は俺にとって特別な後輩だから 」
そう言って浮かんだ神々スマイルに私の心がピリリと痺れる。
や、やめて下さい、敦賀さん。特別なんて言わないで下さい。
私は普通の後輩でしょう?
そりゃ、私はご迷惑ばかりかけている後輩だから
普通じゃないかも知れませんけど!
口パクだけでそのセリフを呟くと
敦賀さんは少しだけ子供っぽい笑顔を浮かべた。
「 ほら、俺、色々と君にお世話になっているだろう?だから。君は俺にとって普通の後輩とはちょっと違うよ? 」
―――――― って!またそういう意味ですか。
判ってます!
判っているのに…
どうしてこの人はそういう
紛らわしい言い方をするのかしら
「 最上さん? 」
「 …はい? 」
「 君が作ったお弁当には負けるけど、せっかく持ってきたから一口だけでも食べてくれる? 」
「 もちろん、一口と言わず頂きます 」
頂きますけど
この有名店の和食弁当と私のお弁当を比べること自体、間違っていると思うんですけど。
どっと疲れながら箸をつけると
お茶をどうぞ、と持って来てくれた女性スタッフさんが
本当に気さくに爆弾を落とした。
「 確かに京子ちゃん、お料理上手ですもんねー。このお弁当見たら一目瞭然。はい、お茶どうぞ。敦賀君と社さんも 」
「 いえ、それほどでも… 」
「 あ、すみません 」
「 有難うございます 」
「 それほどでもあるわよ、京子ちゃん。これだけ作れれば凄いものよ。これならすぐにでもお嫁に行けるわね。じゃあ、ごゆっくり~ 」
思わずグッと喉を詰まらせてしまった。
そんな話を敦賀さんの前でしないでほしい。
ご存じないでしょうけど、私はこの人に生涯の純潔を誓ったんです。
誰にも心を奪われないって
そう約束をしたんですから…
そうね。
約束は、ちっとも守れていないけれど…。
「 …なに赤くなってるの?キョーコちゃん 」
「 いえっ!何でもっ!! 」
危険!
つい敦賀さんを見つめて顔を赤らめてしまった。
「 どうせ君のことだから、子供の頃の夢とか思い出したんだろう?夢はお嫁さん…とかって 」
「 断じて違いますっ!私がお嫁になんて行けるワケないって考えただけですっ! 」
握り拳を作ってきっぱりと言い放ってから
少しセリフを間違えていた事に気が付いて私は慌てて立ち上がった。
バカ、キョーコ。
行けるわけない…じゃなくて、行かない、でしょ!
この恋心が実らないことは
自覚したとき覚悟を決めたことじゃないの。
「 あれ?じゃあ、キョーコちゃん… 」
「 ちがっ!社さん、違います! 」
「 …ふーん?そうなんだ。それなら俺が貰ってあげようか? 」
ごく自然に
けれどどこか雅な動作でお茶を口に運んだ敦賀さんは
そう言ってまた神々しい笑顔を浮かべてから頬杖をついた。
…もう、いやだ、この人。
どうしてそう…
「 敦賀さんっ!冗談でも言っていいことと悪い事があるんですよ。そんなセリフ、ただの後輩に言ったらダメです! 」
「 だから、君はただの後輩じゃないって言ってるのに… 」
ただの後輩じゃないっていうなら私は一体なんだっていうんですか。
どうしてここまで翻弄されなきゃならないの。
優美にお茶をテーブルに置いた敦賀さんは
少しだけ真面目な顔つきで私の方に向き直ると
まるで子犬をあやすような笑顔を作って右手の平を差し出した。
「 最上さん、はい… 」
「 …? 」
これは、犬のお手ですか?
心の中でツッコミを入れながら
素直に差し出された大きな右手に自分の手を重ねると
ぎゅっと握りしめた敦賀さんが、私の手の甲にキスを落とした。
「 ふにゃあああぁぁぁぁぁぁ!!!な…なにをぉぉぉ… 」
「 俺の手を取ってくれたって事はYESってことだね。嬉しいよ 」
「 い…イエス…?イエスってなんの… 」
「 君が俺のところへ嫁に来てくれるのを了承したってこと 」
「 し…しし…してませんけど… 」
「 社さん、いまの見てましたよね?ってことで、証人になってください 」
「 …いいけど、良いのか? 」
「 敦賀さん、手を離して下さいー!じゃなきゃ本気に取りますよ!私が敦賀さんちに転がり込んでもいいって言うんですか?ダメでしょう?それは困るんじゃないですか? 」
「 いいよ、本気で。俺ちっとも困らないし 」
今日、差し入れに来て得したな、とまばゆい笑顔を浮かべて
イスに腰かけたまま私を見上げた敦賀さんは
離れたくなんかないけど、これから仕事があるから仕方ないよね、と言ってもう一度、私の手にキスを落とした。
「 ふやああぁぁぁぁ…! 」
心臓がバクバクしすぎて
呼吸困難になりそうな私の耳にそっと近づき
優しい声音で甘く囁く。
「 じゃあ、今夜早速俺の所に転がり込んで来てくれる?俺、ちゃんと君を迎えに行くから。…約束だよ? 」
約束って!そんな魅惑的な約束、本当に本気に取りますよ?
冗談だって言ってももう知りませんからね。
これは私を翻弄した罰。
前言撤回は無効ですよ。
絶対、絶対、出て行ったりしないんだから。
E N D
ラストを予想せず思い付きで書き綴って行ったらこんなのになっちゃった(笑)
突き進む蓮君の勢いと開き直ったキョーコちゃんが素晴らしい。(///∇//)
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