【場面緘黙が治ってきた】約1年間のカウンセリングで顕著に症状が改善した子(高校生) | 場面かんもく相談室「いちりづか」

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1年間で顕著に緘黙症状が改善した高校生の紹介です。

 

【対象】

まきこさん(仮名)女性

高校2年生で相談開始

 

【概要】

約1年間、6回のカウンセリングで顕著に症状が改善した高校生の女性です。本人と相談しながら話す練習に取り組み、同級生の前でも声が出せるようになりました。

初回から本人とは筆談で聴き取りをすることができました。

面談は2ヶ月に1回程度の頻度で行いました。「話す練習」の宿題の達成状況を確認して、次のステップを一緒に考えるという方法で、話せる相手や場所を増やしていきました。

 

【練習の経過】

<面談1回目:アセスメント、目標と練習メニューを考える>

まきこさんは小学2年生の途中くらいから学校で話せなくなり、それ以降現在まで緘黙症状が続いているとのことでした。初回は母親から緘黙症状や生育歴等を詳細に聴き取り、まきこさんとも筆談でやりとりをしました。

まきこさんから「話せるようになりたい」という強い意志が確認できたので、「話す練習」に取り組むことにしました。私から練習方法の概要を説明し、「目標」を考えるところから始めました。

相談しながら考えた結果、目標を「担任のA先生と、学校で話せるようになりたい」に設定しました。またこの目標を達成するための練習の方法として、まずは「放課後に教室で、A先生に教科書を音読する」に取り組むことにしました。

 

<面談2回目~5回目:話す内容や相手がステップアップ>

「話す練習」は宿題形式で実施しました。毎回の面談で練習方法を相談し、その結果を記録用紙に書いてきてもらうという方法です。

毎回の話す練習(宿題の内容)は、次のようにステップアップしていきました。

1回目:「放課後に教室で、A先生に教科書を音読する」

2回目:「放課後に教室で、A先生に教科書を音読する。できればしりとりもする」

3回目:「放課後に教室で、A先生からの簡単な質問に答える。できればテーマを決めて話す」

4回目:「放課後に教室で、B先生からの簡単な質問に答える」

5回目:「休み時間に教室で、A先生とテーマを決めて話す」

面談は概ね2ヶ月に1回の頻度で行いましたが、その間に毎回5~7回くらいの練習を行ってくることができました。

 

(3回目の面談時の記録:一部抜粋)

日付 場所 活動(状況の説明) 不安レベル
○月○日 A先生 教室(放課後) 教科書の音読(5行) 3.3
○月○日 教科書の音読(2段落) 3
○月○日 教科書の音読(4段落) 3
○月○日 教科書の音読(2段落)・しりとり 3.2

 

5回目の面談では、3学期に学習成果の発表のプレゼンテーションがあるので、それができるための方法を相談しました。録音よりも自分の声で発表したいとのことだったので、A先生に練習の機会を作ってもらって、しっかり練習してからみんなの前での発表に臨むことになりました。

 

<面談6回目:クラスで発表ができた>

プレゼンテーションは、とても緊張したけれど無事に行うことができたとのことでした。まきこさんが同級生の前で声を出すことができたのは、小学校低学年以来だそうです。

同級生には事前に担任のA先生から、まきこさんが声で発表することを説明してありました。そのためまきこさんが話してもみな特に驚いたり、過剰なリアクションをしたりすることもありませんでした。

また発表後に何人かの同級生がまきこさんに話しかけてくれて、ことばを交わすことができたそうです。

 

【解説】

比較的短期間で緘黙症状が改善したケースでした。

緘黙症状が続いていた期間は小学2年生から高校2年生まで約8年間でしたが、「話す練習」に取り組んでからは約1年間で症状が改善しました

他のケースでも同様ですが、まきこさんの話す練習が上手くいったのも【WPC】の3要素が揃っていたからだと言えます。

 

【W(本人の意思)】本人が「話せるようになりたい」と思っていた

【P(綿密な計画)】面談で本人とのやりとりができ、一緒に計画を考えることができた

【C(関係者の連携)】高校の先生の協力を得て、練習が継続して行えた

 

特にまきこさんの場合、本人自身の「話せるようになりたい」という気持ちが強かったことが、練習が短期間で進んでいった要因ではないかと考えています。

 

 

 【注意点】

事例の紹介にあたっては、本人及び家族の同意を得ています。

ただし個人に関わる情報ですので、転載は絶対にしないでください

また必要に応じて細部を改変していますので、事実と異なる場合もあります。

 

この事例の紹介はあくまで個別のケースに対して上手くいった方法です。

同様の方法を行っても、他のケースに対しては効果がない場合もあります。

練習メニューを考えるにあたっては、様々な要素を慎重に考慮した上で、個々に応じた方法を選択するようにしてください。