渡り鳥などと言うには、滞在が長すぎました。渡り鳥失格です。そもそも、越冬の為に秋に南へ飛ぶ渡り鳥とは、全くの反対です。しばれる冬に十年も在住していた訳ですから。
さらに言うと、鳥としての適性も備えてはおりません。この地を立つ鳥にして、遺言などと称して跡を濁して仕舞おうとしているのですから。
兄弟方には、後ろ脚で砂をかけることになってしまいました。私は鳥ではなく、馬です。
どうか私をお許しください。恨まないでください。受けた恩を返し切らない私を憎まないでください。この地を嫌いになった訳ではありません。決して、見捨ててしまおうなどと考えた訳ではありません。もし私に人生が二度与えられたなら、一度目はこの地を選んだでしょう。私の身体が二つあるのなら、両方の地に分かれ、それぞれ日々を送ったでしょう。しかし、よしんばそうであっても、魂が一つである限り、二者択一を迫られたならば、不肖の私はこの地を離れるしかないのだと思います。私にとって魂の還る場所は、ここではないと感じたのです。
勝手なことを正直に申し上げると、残念で、心残りばかりです。この地の十年後、二十年後を、ともにあなた方と見たかったです。自分で選んでおいて、やはり身勝手ですが、後ろめたさを感じるばかりです。
残念で、心残りな私が遺すのは、この地の行く末への不安と期待、願いです。発展途上のこの地を、少しでも子どもらの生きやすいように、と願っています。そして、諸兄らの優しさ、偉大な愛情にして慈愛の心で、きっと良くなることを祈っています。わがままですが、どうか、どうにかと願うばかりです。
後ろめたさばかりを語ってきましたが、旅立ちを濁す渡り鳥、もとい砂をかける馬、そんな私という馬の鼻向けに、せめて、また逢う日をどうか望んでください。私も、いずれまた逢える日を、夢に見ます。