カオス。
無秩序。あらゆる可能性。
リセット。白紙状態。
母体、マトリクス。
☆
すべての爻の陰陽が不正な状態にある。
前述の「秩序」と正反対の卦だ。秩序の卦を倒置(リバース)しても、陰陽反転(インバース)しても、上下卦を入れかえても、この卦の[象|かたち]になる。
つまり、秩序の卦からは最大限にかけはなれている。
秩序の卦を意識とするなら、この卦は、通常の意識からはまったく認識できない「なにか」だ。
すべてが「のびしろ」であり、起こることが予想できない。
裏を返せば「あらゆること」が起こる可能性がある。
そういう意味ではすべてのもの一切の母体でもある。
[母体|マトリクス]。
あらゆる事象は例外なく「ここ」から現れる。
そして再び「ここ」へともどっていく。
そもそも「それしかない」ところのもの。
宇宙の基盤である「混沌」と、それを経験する意識ともいえる「秩序」。このふたつの[視座|パースペクティブ]の間で、私たち人間複合体には、ありとあらゆることがゆるされている。
天地(乾坤)に始まって、最後から二番目が秩序、そしてこの混沌の象が六十四卦の最後に配置されたのは、意味のないことではないだろう。
こういって易は終わる。
煮てもいい。焼いてもいい。
この先は、どうぞご自由に。
