基盤。ホームグラウンド。
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病床に伏せってしまった時に、ご家族が献身的なケアをしてくれたという話で始まるエッセイを読んだことがある。どなただったか失念したが、女流作家さんだったと思う。そこまでなら、心温まる……といった類いの反応をしたくなるが、そんな家族の思いこそが実は重荷だった……と続く。
記憶は曖昧なので正しい表現ではないかもしれないが、告げはしなかったものの、このまま死んでもいいから放っておいてほしいと本気でそう願った。彼女にとって、家族の情や絆は煩わしく、苦痛以外の何ものでもなかった。新たに家族をふやすことなく、独身を貫いた。
原文卦名「家人」卦は、乾が坎を包み込んでいる卦である(坎の包卦)。その内に深く、悩みを内包している。
物事をどうとらえるかは、その人が何を[基盤|ホームグラウンド]に据えているかによって、それぞれにまったく違ってくる。
いわゆる常識や「ふつうそうだろう」という名目の過度な一般化で、迂闊に、一律に、善し悪し、正論的決めつけを押しつける事はできない。
歳を取れば取るほど特に、そういう判断で凝り、固まってくる。
「すまん。オレがまちがってた」はますます言い辛くなる。
もしくは、言わない。
そんなことでは支援者どころか、家族にも嫌われてしまう。
ぼくは先の女性のように強く生きる事はできないだろう。
退職したら残る味方は家族ばかりだ。
友人知人?
いやいや。
彼等には彼等の人生がある。
家族にもそれぞれの人生があるが、友人知人とちがって、家族の人生は自分の人生とより深くクロスオーバーしている。
シェアしていると言ってもいいかもしれない。
正月には身内が集まる。
気をつけたい。
よいお年を。
