ケプラーのこだわり | ぼくは占い師じゃない

ぼくは占い師じゃない

易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

先日、草加の先まで足をのばして、
おもしろいオモチャを買ってきた。

ゾム・ツール というアメリカ製のオモチャである。
知育玩具……ということになるのだろうが、
大人でも充分楽しむことができる。

ノードと呼ばれる丸いカゴ状のパーツと、
ストラットと呼ばれる棒状のパーツを組み合わせて、
主に多面体を組み立てていくもの。

玩具の分類としてはブロックの類になるのだろうが、
見た目からしてレゴやなんかとはずいぶん違う。
学校の化学の授業のときに見せられた分子模型を思い出す。

オモチャ……
とはいっても大学や研究機関でも使われているそうで、
そういうところでは、まさにその、分子模型のような
使われ方もしているのだろう。

もともと正多面体のことをインターネットで調べていて、
たまたまみつけたものだったのだが、すぐ気に入ってしまい、
その週の週末には買ってしまった。

いくつかキット(といっても、ボールと棒が
ごちゃっと入っているだけの塩ビ・ボトル)
があるようだが、ほしかったのは「Kepler's obsession」
と題されたキットで、「ケプラーのこだわり」と訳されていた。

obsessionを辞書で調べてみると、「こだわり」というよりも、
「とりつかれること」「強迫観念」などの、もっと強い、
どちらかというとあまりよくはなさそうな意味が並んでいる。

ヨハネス・ケプラーの名前を知ったのは
たぶん中学の理科のときで、
非常に熱心(だったんだろうなあ。内容はともかく、
習ったということをまだ覚えてるくらいだから)
な先生から、そのときは惑星の楕円軌道と面積速度の話を
聞いたような気がするが(もう30年位前……かな)、

正多面体に外接する球の直径と
惑星の公転軌道半径に関連がある、
とする一般的には「奇妙な(そして有名な)」
着想について知ったのは、
たぶん高校のとき、カール・セーガンの「コスモス」を
テレビで見たときだったと思う。
あながち「奇妙」でもないんじゃない?
という話もある(→*1)。

話がすぐ横道にそれてしまうが、
キットはそのケプラーにちなんだもので、

正二十面体<正八面体<正四面体<正六面体<正十二面体

という順で右が左を順次内包していく多面体モデルだ。
内包関係にあるプラトン立体。
ケプラーの太陽系モデルとはちょっとちがう。


zome01
【最初は小さな正二十面体。】


zome02
【正二十面体に外接する正八面体を組み付ける。
正八面体の十二の辺を黄金分割した点が
中の正二十面体の頂点になっている(*2)】

.
zome03-1

zome03-2
【正八面体の周囲にさらに正四面体を外接させる。
正四面体の各辺の中点が正八面体の頂点になる】


zome04
【同様に正四面体の周囲に正六面体を】

正四面体を構成する12本のストラットをもう一組入手して、
立方体の、正四面体が接していない頂点を結べば、
もうひとつの正四面体を組み込むことができる。
先の正四面体とペアでマカバ・スターができるはず。


zome05
【この角度からではわかりにくいが、立方体(黄色)の各面に、
赤い屋根を乗せると正十二面体になる】

そもそもなんで、
正多面体をネットで調べていたかというと、
多面体を構成する面の数が、
易システムの構成と合うところが多く、
気になっていたからである。

易のマークを構成する一本一本の線を「爻(こう)」というが、
この爻はかならず、陰か陽かどちらかの状態をとる。
中間はない。
デジタルなのである。
易のマーク(大成卦)は爻6本でできている。

その構成から、
たとえば以下のような対応をとることができる。

爻2本でできるマーク(4種類、四象)→正四面体
爻3本でできるマーク(8種類、八卦)→正八面体
爻6本でできるマーク(64種類、大成卦)→正六面体

最後の立方体の対応はわかりにくかもしれないが、
13の月の暦に代表される銀河ツール は、
易という言語をその一部に含み、
立方体の各面をひとつひとつの爻に対応させている。

いいかえれば、立方体がひとつあれば、
それが易のマーク、
64卦すべてをあらわすことができるということ。

各面がパタパタと陰か陽に明滅するようなイメージを描くと、
その明滅パターンの組み合わせは、2の6乗で、64とおり。

正十二面体は、
12という数から、即座に十二消長卦を連想させる。
十二消長卦は、事象や、時序・季節の推移をあらわす
12パターンの大成卦の集合。

正二十面体→二十は、
易ですぐに対応する構成は思いつかないが、
易と関係が深い前述の銀河ツールの構成要素である
「太陽の紋章」は、ちょうど20種類ある。

銀河ツールでは、20種類の「太陽の紋章」は、
「惑星のホロン」とかたちで地球全体にヒモ付けられている。

ていうことは一番中心の、偶然に青い正二十面体は、
地球のモデル……?

妄想は広がっていくのである。

妄想はともかく、
正多面体は頭の中で想像するよりも、
実際に手を動かして触ってみて、
また、できたものをこうして手元において眺めていると、
いろいろなものが見えるような、
脳みその端っこの方をくすぐられるような、
なんとも不思議な気分になってくる。

携帯ゲームや、テレビゲームも決して悪いとは思わないが、
子供が最初に触るのはやっぱり、
実体のある「モノ」の方がいいのかもしれない。

だけどこのゾム・ツール、
子供のおもちゃとして買ってあげるには、
少々お値段がはるのがタマにキズ。

----
ご参考

*1 新装増補版「謎のの古代図形」秋山清著 コスモトゥーワン
   旧題「神の図形」

*2 「正多面体を解く」一松信著 東海大学出版会