なんでもない石のこと | ぼくは占い師じゃない

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易経という中国の古典、ウラナイの書を使いやすく再解釈して私家版・易経をつくろう! というブログ……だったんですが、最近はネタ切れで迷走中。

長くなりますが……
3冊ほど本の紹介を。

   *

NHKアニメ「おじゃる丸」に出てくる
カズマ君の趣味は石集めだ。

ぼくはといえば、
別に石集めは趣味じゃないが、
カズマ君のように石にかわいがったり、
石を持ち歩くこと自体は、
別に変だとは思わない。
そんなふうに、
石にかかわったのはいつごろだろう。

多分、一番最初は中学生の頃……

30年以上前のことになるだろうか。
パルコの中に「王様のアイディア」という
アイディア商品やちょっと変わった商品を売っていた店があって、
そこでみつけた「ペットロック」というのを買ったのが最初だと思う。

「これなんですか」

ときいたら、

店員のおねえさんは、

「血統書つきの石です」

と、ニコニコしながら答えてくれたのを覚えている。

そんな血統書なんて、どこが発行しているかと思えば

「日本ペットロック協会」

とかいう、わけのわからないところで、
紙の切りくずをしきつめて、空気穴の開いた、
いかにもハムスターのようなイキモノが入っていそうな、
シャレた茶色い小箱に入っていたのは、
手のひらよりやや小さい、温泉マンジュウ色の、
そこらへんにありそうなただの石で……

血統書は、小さなブックレット~~「飼い方」の説明書~~の裏表紙で、
その説明書には、大真面目に、
石の買い方だの、散歩のさせ方だの、
「石を飼うのがアメリカではやっている」だとか、
他のペットを飼うのにくらべて、
「鳴き声で困ることはない」とか、
「エサはいらない」とか、
「放し飼いにしても都市条例にふれない」とか、
本気なんだか冗談なんだかわからないことが書いてあった。

そんなものを、
当時の中学生にとっては決してハシタ金とはいえない、
700円だか800円だったか忘れたが
(1000円はしなかったと思うなあ)
ケッコウな金額をはたいて買ってしまったのである。
ひとりでこっそり買いにいけばいいものを、
友達と一緒にいったりしたものだから、
当然「中みせろよ~」ってことになって、
翌日から、

「あんなもん買うなんてichingはバカだ」

ということになり、クラスの女の子にも

「ねえねえ、『ペットロック』ってナアニ?」

などと半笑いされながらきかれ
(バカにしているのだ、
あざけ笑っているのだ、
せせら笑っているのだ。)、
当然、親にも怒られる。

「だまされたんだ!
返してきなさい!
そんなもん買うために
こづかいやってんじゃないよ!
本を買いなさい!本を!」

今考えれば、一種のジョーク商品、
ということになるのだろうが、
それでもなかば本気で、
しばらく飼って……
あ~つまり、持ち歩いていた。

オヤジにケーベツされながらも
旅行にも連れて行った。
ときどき一緒にお風呂にも入った。

ほどよい丸みと大きさの石だったこともあって、
そんなことをしていると
だんだん愛着がわいてくるから不思議だった。
なにせ30年も前の話だ。
その石も今はどこへいってしまったかわからない。

その後はといえば、
石集めにはまることもなく、
専門家になることもなく大人になったが、
もともとフシギなことが好きだったので、
社会人になってからパワーストーンなどを
いくつか買ってみたりもした。
いまはもうなくなってしまった店だが、
ある店でこんなようなことを言われたことがある。

「ウチの石はちゃんと鑑定して入れてますから、パワーは確かです。
それにくらべたら他の石はただの石ッころですよ」

PRと品質保証の意味もあったのだろうが、
なんだかちょっと、

「石ッころ」

というコトバに違和感を感じた。

パワーストーン屋さんのコトバじゃないような気も。

下の本には、
「ただの石ッころ」などというものはない、
と書いてある。

☆ 「パワーオブストーン」―石の力と力の石
北山耕平 著
荒地出版社

ネイティブ関係の著書が多い人なので、
ご存知の方も多いだろう。

同じようなテーマのエッセイで
以下のような本もある。

☆ 「ミステリーストーン」
徳井いつこ 著
筑摩書房

どちらかというと「パワーオブストーン」の方が、
石と自分(人間)との内的なかかわりにフォーカスされていて、
「ミステリーストーン」の方は、
民俗・博物誌的なエピソードが豊富である。
どちらも難しい本ではないので気軽に読める。

著者も出版社も違う二つの本だが、
不思議と、似たような、
結論というか、エンディングにたどりつく。

コンクリートもLSIチップも人工の石だ。
広く考えれば、燃料(石油)も金属も
石から取り出されて精錬されたもの。
樹脂は石油からできる。

石を加工してつくったモノに頼って生きている、という点では、
黒曜石を打ち砕いて造った矢じりも、
あなたが使っている、ホラ、その
ケータイやらパソコンもまったく同じものなのだ。

ぼくたちはいまだにストーンエイジに生きている。

分離しているのは人間の自我だけで、

「すべての石」

は、

地球と人ととのつながり、
つまり、忘れていた、そして今もそうである
ストーンエイジを思い出すカギになりえる。

だから、
「人にはひとりひとつの石がある(「パワーオブストーン」の帯より)」。

「すべての石」というところが大事だと思う。

路傍の小石だろうと、川原の丸石だろうと、
もちろんおこづかいはたいて買ってきた石だって、
適切なタイミングと、石との間の同意さえあれば、
「カギ」となりうる、とい意味ではまったく同等。

ただそうしていったん築かれた絆は特別なもので、
どこでどうやって出会った石であれ、
その石がいくらであれ、
他人からどうみえる石であれ、
あなたにとってその石は特別なものになる。

そんな石のみつけかたが、
「パワーオブストーン」の方に載っている。

もとは同著者が訳した「すべてのひとに石が必要」という、
バード・ベイラーという人の書いた絵本に載っているルールだが、
この絵本は現在絶版で出版社にも在庫がないようなので、
以下、冗長になるが「パワーオブストーン」から引用する。


○ 自分の石をみつけるための10の規則(一部略)

1)石をさがすのなら無数のきれいに輝く丸い石でできている山にいくこと。
でもそこにいけなくてもかまわない。
よくみれば石はどこにでも転がっている。

2)石をさがしている間はだれとも口をきいてはいけない。

3)石をさがすときはできるだけ身を屈める。

4)石をさがすときはあまり大きな石を選ばない。

5)石をさがすときはあまりちいさな石を選ばない。

6)石をさがすときは大きさにとことんこだわる。

7)石をさがすときは色にもとことんこだわる。

8)石をさがすときはカタチにもこだわる。

9)石をさがすときは匂いにもとことんこだわる。

10)石を選ぶときは誰の助けも受けず自分で決めること。


そういえば、冒頭のカズマ君が集めていた石も、
決して店で売っているような高級品ではなかった。
どこにでもころがっている普通の石だった。

なんでもない石の本では、こんなのがある。

☆ 「川原の石ころ図鑑」
渡辺一夫 著
ポプラ社

小学校高学年向けの本らしいが、
各地の川とその川原で採取できる「なんでもない石」が
みやすい一覧(フルカラー)になっていて、
「自分の石さがし」には、内容的に充分だと思う。

カズマ君は今は子供でお金がないから、
高いものは買えないのかもしれないが……

はたして、大人になったカズマ君は、
タイマイはたいて高っか~い
「パワーストーン」
を買うようになるのだろうか。