『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。8』を試し読み♪ | 一迅社アイリス編集部

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こんにちは!

本日はアイリスNEO4月刊の試し読みをお届けしちゃいます!
о(ж>▽<)y ☆

試し読み第1弾は……
『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。8』

著:天壱(てんいち) 絵:鈴ノ助

★STORY★
ゲームのラスボス女王・プライドに転生し、悲劇を回避する為がんばってきた私。本来のゲームではなかった穏やかな日々の中、迎えた18歳の誕生祭。フリージア王国の参列者や戦地で共に戦った同盟国の来賓の前で、私と妹のティアラの婚約者候補の発表がされる。候補者はそれぞれ3名、名は秘匿されているものの会場に候補者全員がいることが告げられて……!? 気づけば、周囲に物凄く愛されている悪役ラスボス女王の物語、第8弾登場!

2023年7月よりTVアニメ放送中!!
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コミカライズ新章、コミックゼロサムにて連載中!! コミカライズ①巻発売中!

前章、コミカライズ全③巻も発売中!


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「姉君、行きましょう」
「お姉様っ! 皆様が待っていますよ!」

 丸一日掛けた身嗜みと豪奢なドレスに身を包み歩き出す。視線の先にはウェーブがかった金色の髪と瞳をした可愛い妹のティアラと可愛い義理の弟ステイルが待ってくれている。この前の祝会もすごく楽しかったけれど、今回のパーティーは規模が段違いだ。来賓も既に大勢が城に集まってくれている。母上や父上だって、皆が私を待ってくれている。だって今日は……

「ええ!」

 私の、十八歳の誕生祭なのだから。

「御誕生日おめでとうございます、プライド第一王女殿下」

 ありがとうございます、と。来賓一人ひとりへ同じ挨拶の後に言葉も交わし合う。
 プライド・ロイヤル・アイビー。ウェーブがかった深紅の髪に吊り上がった紫色の瞳を持つフリージア王国の第一王女、それが私だ。……そして乙女ゲーム〝君と一筋の光を〟の第一作目に出てくる最低最悪外道ラスボス女王だと前世の記憶を思い出したのが、八歳の頃。気がつけば、もう十八歳になっていた。
 真紅を基調としたドレスは、今回は刺繍も更に増して鮮やかだ。二年前には残念に空いていた胸元も今やちゃんとそれなりにボリュームがあるから女性らしいドレスも大分着慣れてきた。それに我が国が誇る予定の学校制度も実施がもうすぐそこまで来ているから、気持ち的にも胸が張れる。

「姉君。……御体調は大丈夫ですか?」

 こそっ、とステイルがまた私の傍まで来て耳打ちをしてくれた。漆黒の髪と瞳、黒縁眼鏡を掛けた第一王子のステイルは一個下の義弟だ。ええ、ありがとうと御礼を言うとステイルからにっこりと笑みが返ってきた。
 二年前の誕生祭から、ステイルはこういう公式の大きなパーティー中は頻繁に私の様子や体調を確認しに来てくれる。「今度こそちゃんと、姉君の変化にすぐ気づきたいので」らしい。二年前、レオンの初登場に私がすごく動揺した上その後も色々心配をかけたことをまだ気にしてくれている。来賓と和やかに会話を済ませながら、細かく私の様子まで確認しに来てくれるステイルは本当に流石だ。ステイルだって、次期摂政として国内外かかわらず人気もすごく高くて引っ張りダコの筈なのに。
 ステイルは「何かあったらいつでも呼んで下さい」と言うと再び優雅な足取りで来賓の方へ去っていった。堂々と歩むその姿はまさに第一王子そのものだ。
 そう思っている間にも、また新しい来賓が私に挨拶をと歩み寄ってきてくれた。御誕生日おめでとうございます、と言われて私からも笑顔を返す。

「ところでプライド殿下は……今、御交流のある御人などは……?」

 また、聞き慣れた問いが投げかけられる。正直、聞かれる度にぐうの音も出ない。今、目の前のベロニカ王国の第二王子も悪気がないのはわかっている。その証拠に今までも何回か社交界で会ったことがあるのに未だに私を前にすると緊張で赤らんでいる。そこまで緊張する相手に嫌味を言うような人にはとても見えないし、きっと単に話題の一つか私の行く先を心配してくれているのだろう。
 苦笑いしながら私が「ごめんなさい、その件はお話しできませんの」と返すと、話題を間違ったと思ったのか俄かに肩を落とし、挨拶と共に去ってしまった。……本当に申し訳ない。
 挨拶が始まってから、こんな感じで肩を落としていく男性が続出している。でも、私もティアラもその話題に関しては母上達から口止めされているし本当に言えないから仕方がない。彼らも第一王女との話題探しに苦労しているのはわかるのだけれど。……あれ? いま、来賓と話していたステイルがこっちを見て少し笑ったような。もしかして私の話下手に呆れちゃったのだろうか。いやでもちょっと悪い笑みにも見えたような気がする。

「プライド。御誕生日、おめでとう」

 は、と。聞き慣れた声に振り返るとレオンだった。蒼い髪に翡翠の瞳。中性的な顔立ちをした彼は、隣国であるアネモネ王国の第一王子で私の盟友だ。ワイングラスを片手に笑いかけてくれたレオンは今まで話した来賓よりもずっと気心の知れた相手で、私はほっと少し力が抜けてしまう。ありがとうと言葉を返すと「ワイン、美味しいよ」とグラスを掲げてくれた。来賓との挨拶ばかりで私が自分のワインすら飲めない状況を気に掛けてくれたらしい。御礼を言いながら手に持っていた自分のグラスで喉を潤すと、レオンもそれに倣ってくれる。

「流石の人気だね、プライド。誰か目にとまるような良い相手はいたかい?」

 ワインを傾けてから滑らかに笑いかけてくれるレオンに、私はまた苦笑する。今までと同じように「ごめんなさい、その件はお話しできないの」と返すと少し驚いたように目を丸くさせ、そしてすぐにまた笑んでくれた。

「そうか、君も忙しいんだね。今日は身体に無理とかはしていないかい?」

 さらりと労いと共に会話を流してくれるレオン、本当に完璧過ぎる。心の中で感謝しながら私も彼に「大丈夫よ」と言葉を返した。

「もう大体の来賓とは話し終えたかな?」
「ええ、大体は。もう暫くしたら母上からのお話があると思うわ」

 今日は私の誕生祭ということで、同盟国の殆どが参加してくれている。母上からも、今回の誕生祭で大事な御報告がありますので是非にと招待状が送られたこともある。お陰で例年よりも来賓が多かった。そこでふと、レオンが思い出したように周囲を見回し出した。

「そういえば……ハナズオ連合王国の彼らとはもう話したかい?」

 ハナズオ連合王国。サーシス王国とチャイネンシス王国が一つとなった我が国の同盟国だ。
 レオンの言葉に私は首を横に振ってから答えた。私に挨拶待ちの列ができてしまっていたこともそうだけど、ハナズオ連合王国にもすごく人垣ができていた。レオンと一緒に同じ方向へ顔を向ければ、ハナズオ連合王国の周りに人が集まり過ぎてここからでは彼らの姿すら見えない。うっすらと時々ランス国王の髪らしき金髪がチラつくけれど、それ以外は完全に埋もれている。
 彼らが同盟を結んでいるのは我が国だけだけれど、もともとハナズオ連合王国の金脈や鉱物の取引をと望む声は世界中で多い。これを機会に是非我が国とも! と今も声が聞こえてきた。

「レオンは話せた?」
「僕もまだだな。先にプライドと話したかったし、……既に交易を交わしている僕がハナズオ連合王国と関わりを持ちたい彼らの交渉に割り込むのは悪いから」

 聞くと、レオンのアネモネ王国も奴隷制度撤廃後はすぐにでも同盟を結ぼうとランス国王達と話を進めているらしい。未だ奴隷容認国であるアネモネ王国だけれど、防衛戦で第一王子直々に民を大勢救助して回ったことがすごく評判になったらしい。中には既にレオンを慕う民も多いとか。……確か、レオンの救助にはヴァルも一緒にいた筈なのだけれど。残念ながら、レオンと違い彼のファンがいるという話は全く聞かない。
 レオンはこの一年……いやもう殆ど二年か。この二年間で、交易だけでなく国外の社交界へも頻繁に出るようになったお陰で、かなりの人気が出ていた。レオンの人柄と貿易や政治の手腕を慕って各国の王侯貴族、女性は当然のことながら男性にも大絶賛を受けている。お陰で、それまで国外の社交界にレオンが出てこなかったことも単に出し惜しみされていただけだと思われている。今も私とレオンが話しているのを遠目から多くの令嬢が眺めては頬を染めていた。各国の王女や令嬢にも望まれることが続いているらしい。レオンは過去にアネモネ王国国内でそういうモテモテ生活に慣れてしまったせいか、全くものともしていないけれど。以前に聞いた話だと、レオンは少なくとも国王になるまでは婚約者を探すつもりもないらしい。更に言えば「プライドより先に婚約するつもりはないよ」とまで言われてしまった。……正直、すごくすごく胃が重い。婚約解消した相手である私とフリージア王国を気遣ってくれるのは嬉しいし、現アネモネ王国国王もそれに関しては同意らしいけれど。婚約解消ってなると、一般的に女性の方が傷が残るから当然といえば当然でもある。

「でも、話したいとは思うよ。ランス国王には勿論、ヨアン国王にも挨拶をしたいし、……セドリック王子とも改めて話してみたいからね」

 一瞬、レオンの瞳が妖しく光った。そういえばレオンは私がセドリックに何か失礼なことをされたことだけは知っているんだった。この前の料理とクッキーの件といい、セドリックの知らないところで敵を増やしてて申し訳ない。……まぁ、身から出た錆なのだけれど。

「さて、……僕はそろそろ他の人とも挨拶をしてくるよ」

 元婚約者があまり長い間独占したらお互い不要な噂も広がるからね、と。レオンはその場から一歩引いた。私も一言答えると、レオンは「ああ、あと」と思い出したように呟き、そして笑った。

「今日のドレスも、すごく似合ってる。この会場で誰よりも美しいよ。……心臓に悪いくらいだ」

 滑らかな笑みに妖艶さが差して、思わず心臓が高鳴った。私の顔が熱くなると同時にレオンの白い肌が紅潮した。今のお世辞は流石のレオンも照れたのか、でもその途端に色気まで出てきて一瞬私がワインを落としかけた。傾いただけで済んだけれど、中身が減っていて本当に良かったと思う。
 レオンは目で周囲を見回すと、そっと一歩離れたままの位置から上半身だけ私へ傾け囁いた。

「あまりそんな可愛い顔を他の令息や王子に見せちゃ駄目だよ? ……皆が虜になってしまうから」

 ッまたそんな台詞を!! お世辞に照れたと思ったらまた甘い言葉を囁かれて今度こそ顔が火照りきる。醸し出される色気に全身が痺れて動けなくなってしまう。なのにレオンはもう火照りが冷めた顔で滑らかに笑うと「じゃあまた」と軽く礼をして去ってしまった。それを言うなら不意打ちの妖艶さをレオンも控えないと!! ……といっても、最近ではレオンが他の女性の前でそれを出しているのは見たことがない。やはり気心が知れた相手だとうっかり出てしまうのか。
 思わずパタパタと手で顔を扇ぎながら息をついてワインを傾ける。次を待ってくれていた来賓であるクレマチス王国の大公と挨拶をと、私は気を取り直した。




「いや〜、プライド様。今回もお綺麗だったなぁ」

 アラン隊長が暑そうに団服の胸元を手でパタパタとしながら呟いた。俺もエリック副隊長もそれに頷きながらワインを飲み込む。もうプライド様と最初に挨拶してから大分経つってのに、未だに遠目から視界に入るだけで身体が熱くなる。
 アーサー・ベレスフォード。父上譲りの蒼の目と、銀髪を頭の上で括った俺はプライド様の近衛騎士として今回の誕生祭に招待されていた。茶色がかった金色の短髪にオレンジ色の瞳を持つアラン隊長は一番隊の騎士隊長、そして栗色の髪と瞳を持つエリック副隊長は副騎士隊長。お二人とも、八番隊の騎士隊長になった俺と同じ、プライド第一王女の近衛騎士だ。

「去年のプライド様の誕生祭でも同じことを言っていなかったか? アラン。去年はそんなに緊張してなかっただろう」

 可笑しそうに笑いながら副団長のクラークがアラン隊長を見た。その少し離れた先では騎士団長である父上が他の来賓と今も忙しそうに挨拶を交わしている。……こういう時、騎士団長ってのは大変なんだなと思う。父上、騎士団でもクラーク以外の奴と談笑ってあんましねぇのに。
 クラークからの言葉に「まぁ色々ありましたから」と笑いながら返すアラン隊長は、そのまま「お前もそう思ったよな?」とカラム隊長に視線を投げた。瞳と同じ赤茶に赤毛混じりの髪をしたカラム隊長は三番隊の騎士隊長で、この人も同じ近衛騎士だ。アラン隊長に言われて「まぁ……」と呟くカラム隊長は、前髪を指で払いながらまたプライド様に視線をやった。

「もう数度目になりますが、……本当にいつも信じられません。自分が、こんな公的な場に御招き頂くなんて」

 エリック副隊長の言葉に俺も何度も頷く。俺もプライド様の近衛として何度も招待はされるけれど、未だにこの空間は慣れないし落ち着かない。分不相応過ぎて、すげぇ肩身狭い。

「お前達はプライド様の近衛騎士なんだ、胸を張れば良い」

 そう、クラークがエリック副隊長にだけでなく俺にも笑みを向けながら言ってくる。ンなこと言われると今度はあの人の近衛なのがもう既に分不相応な気がする。……実際そうなんだけど。それでもあの人の傍にいてぇンだから仕方ない。
 プライド様の人気は未だにとどまるところを知らない。俺達が挨拶をする前も、終えた後も今もプライド様に挨拶をする各国の王侯貴族が後を絶たない。なんでか今日は皆すぐにプライド様と話して去っていっちまうけど。
 二年前の婚約解消から、プライド様から婚約とか交際みたいな話は全く聞かない。社交の場としてパーティーや式典には招かれるけど、特定の相手はいねぇみたいだし手紙だって未だに貰うばっかで返信も……、…………。………………………………手紙。

『何があっても絶対に』
「~~っっ……」

 駄目だ、急に別のことを思い出して一気に熱が上がる。急いで皆から顔を背けて俯くと、カラム隊長が「どうかしたか?」と心配してくれた。大丈夫ですと返しながらグラスの中身をがぶ飲みして誤魔化す。深呼吸を何回かして、顔の火照りを酒のせいにする。そのままカラム隊長の視線の先へ目を向けると、ちょうどプライド様が目に入った。……すげぇきらきらしてて、笑顔が遠目でも眩しい。
 どんな来賓にも笑顔を向けて時々口元を隠して笑うその姿が綺麗過ぎて、今でもあの人の傍にいられている現実が時々信じられなくなる。真っ赤なドレスが整えられた髪と合わさって、同じ人間だってことすら忘れちまうぐらいに。

「見惚れてしまうよね」

 っっ?!‌!! ……突然、横から声を掛けられて思わず慄いた。続けて「隣の彼は確かヤブラン王国のアクロイド卿だったかな」と説明してくれる。声だけは抑えたけど、残り少ないワインが軽く跳ねて数滴零れた。俺の反応に少しだけ目を大きくしたその人は「驚かせてごめん」と滑らかに笑うと、近くにいた給仕に新しいワインを頼んでくれた。俺は取り乱したのがすげぇ恥ずかしくて、姿勢を正しながら改めて挨拶をする。やばい、ぼーっとし過ぎた。

「レオン第一王子殿下、……失礼致しました」


~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~

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①巻の試し読みはこちらへ――→『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』を試し読み♪
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『悲劇の元凶となる最強外道ラスボス女王は民の為に尽くします。』特設ページ♪

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前章、コミカライズ全③巻も発売中!