本日は、発売まであと少しの一迅社文庫アイリス2月刊の試し読み、第2弾をお届します(〃∇〃)
試し読み第2弾は……
『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…10』

著:山口 悟 絵:ひだかなみ
★STORY★
乙女ゲームの悪役令嬢カタリナに転生した私には、ゲーム続編でも破滅の運命しかなかった!? 来るべき対決の時に逃げられるよう、闇の魔法の訓練もがんばることにしたら、新たな闇アイテムを手に入れることに…。あれ? なんだか私、悪役としてスキルアップしてない? そんな中、魔法省の上司で、攻略対象のサイラスのマリアへの恋心を応援していたら、新たなイベントも発生してーー!? 大人気破滅回避ラブコメディ★第10弾!!
2021年7月よりテレビアニメ第2期放送開始!!
コミックゼロサムにて、イラストのひだかなみによる長編コミック版も大人気★連載中!! コミカライズ①~⑥巻大好評発売中! スピンオフコミック①~②巻も大好評発売中!
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「――ということでラファエル、カタリナ嬢に闇の魔法を教えてやって欲しい」
ラーナがこれまでの経緯を説明し、そう締めくくった。
話を聞いたラファエルは少し考え込んで、
「僕も闇の魔法に関しては自己流で使っていたので上手く教えることができるかわかりませんが、それでもいいのなら引き受けます。ただ……」
「ただ、なんだ?」
口ごもったラファエルにそう声をかけたラーナに、ラファエルが眉をきゅっと上げた。
「そうすると魔法道具研究室の業務が大きく滞ってしまうので、ラーナ様にはきちんと部署で仕事をしてもらう必要がありますが、よろしいですか?」
「うっ、せっかくの闇の魔法について、聞いたり見たりできると思ったのに……」
ラーナは、それはせつない顔をしたが、
「仕方ない。カタリナ嬢の闇魔法習得は上からの指示でもあるからな……しかし、後から少しでいいから見せてくれ」
としぶしぶ了承した。
ちなみに今日はもう終業時間が近かったのと、今日中にしておかなければならない仕事がラファエルにまだたくさんあるとのことで、闇の魔法の練習は明日からということになった。
そして、ラーナはラファエルに引きずられ部署へ、私はソラに送られ、馬車が迎えに来ている門へと向かった。
「なんか今日は悪かったな。ちゃんと教えてやれなくて」
歩きながら、ソラがそんな風に言ってきた。
「ううん。私も魔法を教えろとか言われてもできないし、そういうのは向き不向きがあることだから」
「ああ、そうだな。俺も人に教えるって柄じゃないからな。元々、勉強も好きじゃなかったしな」
「えっ、ソラは勉強好きじゃなかったの!?」
なんでもこなす優秀なソラが、勉強を好きじゃないなんて発言したもので、私は驚きに目を見張った。
「ああ、興味があるもんには食いつくけど、興味がないもんにはからっきしやる気が起きなくてな」
「おお、私と同じね。私もそれでよく先生に注意されたわ」
なんでもできる存在だと思っていたソラの意外な一面に親近感が湧く。
「ははは、あんたもそんな感じだよな。俺もよく勉強教えてくれた奴に注意されたよ」
「勉強を教えてくれた人?」
何気なく聞き返した言葉に、
「ああ、スラムにいた時に文字とか計算とか教えてくれた奴がいてさ」
そう返されて、ソラがエテェネルのスラム出身だったことを思い出す。
孤児でありスラムで生きていたソラは私たちのように学校に通っていたわけではないのだ。それでこれだけ優秀なのだからソラは本当にすごい。
「へぇーどんな人だったの?」
なんだか昔を懐かしむような眼差しを見せたソラにそんな風に尋ねてみると、
「すげ~変わった奴だったよ。やることなすこと突拍子もなくて、ガキの頃は異国から来た奴だから変わってるんだと思ってたけど、その後に、他の国を転々としてもあいつみたいな奴はいなかったな」
とても楽しそうに答えてくれた。その顔はとっても幸せそうだった。
「そっか、ソラはその人が大好きだったんだね」
私がそう言うとソラは「えっ」っと驚いた顔をしたので、私も驚いた。気付いてなかったんだ。ソラって意外と鈍感なところがあるんだな。
私はちょっぴり可笑しくなって笑いながら指摘した。
「だって顔に大好きって書いてあるよ」
その言葉に軽く目を見張った後、ソラはうつむいて、
「……ああ、確かに、そうかもな」
ぶっきらぼうにそう答えると、
「……それにしても恋愛面ではあんだけ鈍いのに、こんな時だけ鋭いってどうなってるんだ」
と何かをボソボソと呟いた。小声で聞き取れず、
「えっ、何、聞こえなかった」
と聞き返したが、
「何でもない」
とまた頭をぐしゃぐしゃにされたので、抗議の声をあげると、
「そう言えば、あんたにどことなく似てた気がするな」
ソラがクスクス笑って言った。
「えっ、その勉強を教えてくれた人と? その人も悪役顔だったの?」
同じ悪役顔の系統だったのかと尋ねたが、
「悪役顔ってなんだそれは……というか顔とかじゃなくて、雰囲気がな」
との答えが返ったきた。
「雰囲気?」
「ああ、同じ変わり者同士だからかもな」
「え、私、全然、普通だと思うけど」
私は身分こそ高いがどこにでもいる平凡な女子だ。
ソラがなんとも言えない目を向けてきたけど、いや、本当に私は普通の女子だからね。悪役顔なのを除けばザ・平凡なのだ。
「でも、ソラが勉強好きじゃないって意外だと思ったけど、話を聞いたら興味ない勉強でそっぽ向いてる姿が浮かんでくるよ」
興味のない勉強が嫌でプイって横を向いている小さいソラの姿がありありと脳裏に浮かぶ。なんだったら居眠りもしてそう。
「ソラはいくつくらいの時に勉強を教えてもらってたの?」
小さいソラを思い浮かべたら、そんな疑問が浮かんできたので聞いてみると、
「さぁ、いくつだろうな。俺、物心ついた時から孤児だったから、自分の正確な年とかわかんねぇんだよな」
という答えが返ってきた。
「えっ、そうなの! じゃあ、今いくつかも、生まれた日とかもわからないの?」
スラムにいたのは聞いていたけど、自分の年齢や誕生日までわからないとは知らなかった。
「ああ、何もわからねぇな」
ソラは気にした風もなくさらりと答えたけど、
「それじゃあ、お祝いができないじゃない」
私はソラの方へずいっと身を乗り出してそう言った。
「はっ、なんだお祝いって?」
「誕生日のお祝いよ」
「ああ、そうか、そういうのするとこもあるんだよな」
ソラは興味なさそうだが、私にとっては問題だ。
「ソラにはいっぱい助けてもらってお世話になっているから、誕生日にお祝いして感謝を伝えようと思っていたのに……」
聞き出したら、壮大なお誕生日会をしようと密かに思っていたのだけど、まさか知らないとは困った。
「……いや、祝いとかそんなのいいから」
「あ、そうだ! 知らないなら作ったらいいんじゃない。いい、ソラ?」
ナイスアイディアと思い、ソラに聞くと、
「はぁ」
とポカーンと口を開けお許しの返事がきたので、
「じゃあ、いつにする。いつがいい?」
と詰め寄って聞くと、ソラは私の勢いにやや後ずさりしつつ、
「いや、俺はそんな……」
何か言いかけたが、私がどうするどうすると見つめていると、
「……いつでもいい。お前が決めてくれ」
と言ってくれたので、
「えっ、私が決めていいの!? え~と、じゃあ」
しばらく考えて、
「じゃあ、私とソラが初めて出会った日にしましょう。去年の学園祭の日。え~と、確かあれは九月の終わり頃で、何日だったかしら?」
首をひねる私にソラがぼそりと、
「……二十五日」
と教えてくれた。
そっぽを向いたそっけない答えだったけど、ソラがあの日を覚えていてくれたことがすごく嬉しかった。
「うん。じゃあ、九月二十五日がソラの誕生日で決定ね。もうじきやってくるから、お祝いさせてね」
私はニコニコとそう言うと、ソラはそっぽを向いてまた私の頭をぐしゃぐしゃにした。
またかい! と思ったが、ソラの誕生日が決まりそれをお祝いできる嬉しさでいっぱいだったので、そこは軽く流した。
そんなやりとりをしつつ、門へ到着すると、私は夕焼けに染まった真っ赤な顔のソラに見送られクラエス家への帰路へとついた。
馬車に乗り腰を下ろすと一息ついた。
なんだか今日は疲れたけど、でもソラの誕生日が決まって、お祝いができそうでよかった。
ふふふ、どんなお祝いしようかな~なんて、しばらくはお祝いのことを考えて浮かれていたけど、そういえば明日からラファエルから闇の魔法を教えてもらうということを思い出した。
大事なことなのに、すっかりお誕生日のお祝いに心が持っていかれていた。今はとりあえず明日のことを考えなくては。
ラファエルに教えてもらうのか。ラファエルには学生の時にも勉強を教えてもらったことがあるが、とても丁寧でわかりやすかったのを覚えている。なのでおそらく今日の私たちのような擬音だらけのどうしたらいいんだみたいな展開にならないと思う。
それにしても、闇の魔法の習得とかますます悪役に近づいていっている気がする。
Ⅱをしておらず、先の情報がわからないからこそより不安だ。
もっとⅡの情報を――――あ、そうだ! 昼寝で見たあの夢!?
あの後、久しぶりにメアリやソフィアと話してそのあとすぐに『闇の魔法を覚えろ』とか言われて、『とりあえず頭の隅に』と追いやってしまったら、そちらも今まですっかり忘れてしまっていた。
ああ、なんで私っていつもこうなんだろう。自分の駄目さ加減にへこみつつ、私は昼の夢をもう一度、頭の中で整理することにした。
~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~
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