第7章 韓国ドラマ映画
270.ドラマ ヨニン恋人❸
 
 
 
『ヨニン恋人』全21話視聴完了しましたが『ドラマロス』から逃れられずに居ます。せめてドラマロスを埋める作業として、取り憑かれた様に関連記事を探し読み漁って居ますが、幸い話題作のせいも有り記事には困りません。否、洪水の如く溢れ出て居て私の様な知りたがりには堪りません(笑)。

 

 

読み進めると珍しく、語りたいパッションが沸々と湧き上がって来ます。
と言う事で『ヨニン恋人』レビュー最終回として今回は『丙子胡乱ピョンジャホラン』を題材にした今回の作品の意義、今ドラマの作品的価値などについて語りたいと思います。
 
ドラマは当初、期待に反して派手な演出で軽い印象を受けるストーリー展開により5.4〜4.4%の惜しい視聴率で出発しました。

 

 

ましてやヒロイン・ギルチェを演じたアン・ウンジンに対するミスキャスト論争まで繰り広げられ、作品にケチが付くなど順調とは言えない展開でした。
一部の視聴者たちは『ヨニン恋人』の劇序盤部、ギルチェを演じるアン・ウンジンの話し方とトーンが時代劇と合わないと指摘、コレによりミスキャスト論争にまで発展してしまいました。

 

 

彼女はストレスから顔面マヒまで起こったと告白して居ます。
キム・ソンヨン監督はドラマ終映後のインタビューで、こうしたミスキャスト論議について以下の様に述べています。
「とても苦しかった。
ストーリーに力があって、俳優たちの演技も見事なので作品が上手く行くという自信はあった。
我々は1〜6話までの台本を知って進めるのでギルチェのキャラクターが理解出来て、あとで補完される地点というのが計算に入っている状態だった。
ところが、ギルチェ役に似合わないという反応もあり、ギルチェらしくないという言葉が私の心を痛めた。

 

 

俳優は演出者を信じて従ってくれただけだ。脚本と私のディレクション通りに動いてくれただけなのに俳優まで攻撃されたから結果はさて置き、苦しくて痛んだ。
「4話を見れば応援して愛情を持ってくれる筈」という考えがあった。
放送された1、2週間は現場の雰囲気も落ち込んだ。
反応は無視できないし、大変な時期を過ごした。」
と残念だった当時の気持ちを吐露しました。

 

 

しかし、4話のエンディングがSNSで盛り上がると5話の視聴率が8%台に上がり、以降10%台まで突破しました。 
1部最終話の10話は自己最高の12.2%を記録し、2部を期待させる数値にまで昇り詰めました。 
TV話題性でも軒並み上位を独占、アン・ウンジンのミスキャスト論議はウソの様にかき消された事は言うまでも有りません。

 

 

国内だけでなく海外でも爆発。
グローバルOTT楽天VIKIによると『ヨニン恋人』は8月5週目の集計で、米国、カナダ、スペイン、オーストラリア、ニュージーランドなど5カ国でトップ2に。
オランダ、ノルウェー、スウェーデン、イギリス、スイス、フランス、イタリアなど42カ国でトップ5に入り、合計68カ国トップ10に入りました。
もちろん日本だけは契約の関係で「蚊帳の外」に置かれた事は当然の事ですが。

 

 

余談で、最近「丙子胡乱」とその後の混乱を描いた作品が多い気がします。
『御史とジョイ』『梟(フクロウ)』、仮想史劇では有りますが先日NETFLIXEで配信完了した『魅惑の人』もこの時代をモチーフにして居ます。なぜでしょう?
 
「丙子胡乱」については以前、ワンポイントコラムに書きました。
 
記事はコチラ
「丙子胡乱」は豊臣秀吉の侵略戦争「壬辰倭乱」「丁卯胡乱」の後に立て続けに起こった戦争です。
7年にも渡り我が国に多くの被害をもたらせた「壬辰倭乱」より相対的に被害が軽微だったと一見思わせますが、その衝撃と影響は壬辰倭乱に劣らず朝鮮に大きな打撃を与えました。

 

 

上記の戦争は戦争序盤には様々な城邑と首都の漢城が日本軍に陥落するほど散々でしたが、中盤・後半には侵略・占領した日本軍を追い出す痛快さがあり、リスンシン、クァクチェウ、キムシミン、チョホンなど多くの名将・英雄が活躍し多くの物語を紡ぎました。
しかし、「丙子胡乱」の様にロクに抗争も出来ず徹底的に敗北した戦争はまずもって唯一の例です。

 

 

朝鮮王朝の外交失敗や戦略的失策があまりにも明確なうえに、戦争が起こると抗争どころか徹底的に敗北、喧々諤々の論議に時間のみ費やし、最終的に朝鮮側は過酷な清の要求をすべて聞いて降伏するしか有りませんでした。
朝鮮は20年前にも自国を「上国」と呼んだ女真族(満州族)に惨敗を喫し逆に「上国」と仰ぐ羽目に陥り、王子たちが捕虜として引き立てられる屈辱を受けました。

 

 

国王仁祖と西人派の無能さが極致を極め、「支配者が自己の保身の為のみに起こす行動が、民衆にどれだけの被害と不幸を与えるか」を余儀なく物語る「典型例」になって居ます。
この時代を描く作品が近年多いのは、その後の朝鮮王朝社会に甚大な影響を与えたからこそ、社会の変革が叫ばれている現在に共鳴するモノが多いからでは?と推測します。
 
「丙子胡乱」は以前から数多くの映画やドラマで扱われましたが、大部分は宮闕内で行われる政治的な話が中心でした。
一方、今回の時代劇『ヨニン恋人』は捕虜、「還郷女ファンヒャンニョ」の問題などこれまでメインには扱われなかった話を扱いました。

 

 

ファン作家はインタビューで以下の様に述べて居ます。
「これまで(この様な題材を)あまり扱っていなかったので試してみたかったし、扱っていない理由を知るためにも慎重に接近した。
複数の危険要因があるにも関わらず、捕まった捕虜の叙事詩を選んだ理由は、「丙子胡乱」後に拉致されて行った朝鮮の捕虜に強力な話があるという確信があったから。
 
悲しいけれど感動的な、残念ながら熱い話が宝のように積まれていると思い、それを簡単かつ楽しく解きたいという欲望、そして一生懸命やればやれるという自信もあった。」

 

 

流石は『帝王の娘スベクヒャン』『逆賊〜民を盗んだホンギルドン』などの史劇で庶民の生き生きとした生き様を描いたと評価される作家さんです。
 
ファン作家は「一方では、丙子胡乱の時期を扱った既存の歴史コンテンツで、国王仁祖の無能さとソヒョン世子の死、あるいはキム・サンホン、チェ・ミョンギルなどに喩えられる政治官の対立は描写しながら、数万人の捕虜たちについて扱っていないことに疑問を感じた。 
 
記録が足りなくて実体を推測するのは難しいかも知れないが、探してみると「還郷女」に対する記録、逃げた捕虜に対する記録、捕虜に対する朝鮮国王と朝廷大臣たちの立場などを見つけることが出来、これを良くまとめて、その時代の人々の話を広げることができると思った」と説明しました。

 

 

歴史記録によると、丙子胡乱によって清に連れ去られた捕虜が50万人以上、一説には60万人とも言われます。
朝鮮捕虜たちの惨状はドラマ『ヨニン恋人』でも「コレでもか!」と気分悪くなる程描かれて居て、延々と続く惨状にドラマを観る我々の気分が沈鬱になる程です。
 
しかし、作家はあらゆる資料を駆使して史実通りに描くことに注力したと言います。
この様な血の滲む作業がこのドラマのリアリティーを生み出す原動力で有った事に疑いの余地は有りません。

 

 

前回にも書きましたが、ギルチェはそんな不幸のドン底でも誇りを失わず堂々と生きます。
捕虜を逃れて帰って来ても生命の脅威を受けて免れた多くの女性が命を絶ったり殺されました。国が力がなくて守ってくれなかったのに国家はむしろ彼女らを非難しました。
 
これは現在、現代社会に於いて犯罪被害者やその遺族に降り掛かる社会の冷たい視線とも似て居ます。
犯罪被害を受けた側なのに被害の理由を彼らから探して非難したり、セカンドレイプを与える行動が韓国社会で頻繁に起こって居ますし、日本でも大同小異です。

 

 

しかし、ドラマ『ヨニン恋人』ナムグン・ミン演じるイ・ジャンヒョンは少し違う言動を見せます。
「たくさん痛みましたか?とても大変でしたか?でももう終わりました。今は心配しないでください。」
ドラマは現在も続く被害者への偏見を如何に打破すべきか、被害者にどう接すべきで有るか、主人公ジャンヒョンを通じて強く示唆してくれます。
 
コレまでの3回に渡るレビューを総合すると、このドラマは正に現段階に於けるヒュージョン史劇の傑作で有ると断言出来ます。

 

 

残念なのはハッピーエンドに拘る余り最終回に於いて蓋然性が欠如してしまった事、群像劇として物足りない事、ギルチェがメインのストーリーで有りながら主演のナムグン・ミンがメインに叙述されてしまい、彼女目線での叙述が省略されてしまった事など…です。
しかし、コレらの些細な欠点がこのドラマの価値を大きく毀損するとは思えず、あくまで少々の「球にキズ」に過ぎません。

 

 

私はフュージョン史劇の傑作として今まで
❶チュノ推奴
❷緑豆の花
❸赤い袖先
の3作を挙げて来ましたが、そのラインナップに当ドラマを加えたいと思います。
ドラマタイトルが、私も間違えた様に他の『ヨニン恋人』と差別化する独創的なタイトルで有ったなら言う事なしでした(笑)。
OSTとテーマ音楽も最高で必聴。ウィーンとブダペストまで録画に出掛けたと有って「大河ロマン」の雄大さを随所に醸し出してくれて居ます。
語りたいことは誠に尽きませんが、コレにて『ヨニン恋人』レビュー、一見落着です。
<参考文献>
‘연인’ 감독, 안은진 미스캐스팅 논란→여주교체설에 답했다 “예상 못해, 괴로웠다”[EN:인터뷰③]
K스피릿 드라마 ‘연인’, 그 아픈 역사의 존재 ‘환향녀(還鄕女)’
오마이뉴스 '조선인 인간시장'까지... 처참했던 병자호란 이후[TV 리뷰] tvN <벌거벗은 세계사>
매일경제 [인터뷰②] ‘연인’ 작가 “장현 ‘안아줘야지’, 오랜 사색의 결과물”김소연 기자
 
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