<共和国人民俳優 オミラン トラジ桔梗の花>
 
4章 韓国朝鮮の文化ー20
韓国朝鮮の映画❸
共和国映画の歴史
 
 
 
ウリハッキョでは小学1年生の頃からチョソン(朝鮮:共和国)映画を良く観ました。
 
ウリマルも良く分からない幼い子供が難解なチョソン映画を良く理解したモノだと、今思うと感心しますが、拙い語学力は語学力なりに、画で見て何と無く理解出来るモノなのです。
 
<映画 ピバダ血の海>
 
逆に言えば映画鑑賞を通じて、更にコトバを覚える事にも繋がり、本国の文化にも触れるキッカケになるのですから、映画の効果は底知れぬと言えます。
 
最近ではすっかり共和国とも縁が遠くなり、新作映画を観る機会も減りましたが、時折りYouTubeで配信して居る過去の名画を鑑賞しては感動に浸って居ます。
 
たまにはゆっくりと大きな画面で、共和国映画を鑑賞したいモノです。
 
今回は共和国の映画に簡単に触れたいと思います。
 
共和国で解放後、劇映画が制作されたのは1949年で、共和国初の劇映画(共和国用語で「芸術映画」「私の故郷」が制作されました。
 
<ムンイエボン>
 
韓国俳優チェミンスの母方の祖父ガンホンシクが演出して、植民地時代に「3千万人の恋人」と呼ばれたムンイエボン文藝峰が出演したこの映画は、日本の苛政に苦しむ農民たちと、これに対抗し戦った農民出身の抗日遊撃隊を扱っています。
 
余談ですが、最近観た韓国映画「マルモイ」にもムンイエボンのポスター看板が貼ってました。
彼女は1980年制作の「春香伝」の母親役で出演した事も話題になりました。
 
<ムンイエボン出演の溶鉱炉>
 
「溶鉱炉」と言う映画も制作されましたが、タイトルからも分かるように、新しい祖国建設に邁進する労働者階級の労働意欲を高める為に製作された映画です。
 
この事実から、建国間も無い時期に共和国映画の2つのジャンル、すなわち抗日遊撃隊の映画と労働者階級の映画が始まった事が分かります。
 
共和国映画の中で、今日まで絶える事なく続いて来たもう1つのジャンルが戦争映画です。
「少年パルチザン」(1951)、「再び前線に」(1952)から「ウォルミド月尾島」(1980)などに繋がる朝鮮戦争、共和国の言葉で『祖国解放戦争』の映画が製作され始めました。
 
<仁川上陸作戦阻止を描く ウォルミド>
 
戦後の1950年代後半、社会主義の建設に向けた社会主義的リアリズムが登場します。
まこの時期から、共和国が人民の自発的努力を重視する『千里馬運動』が始まりますが、この運動は、映画にも大きな影響を与えました。
 
スターリン時代のソ連の社会主義リアリズム映画では、農民が労働歌を歌って楽しく耕作するユートピア的な『社会主義ミュージカル』をよく見る事が出来ますが、共和国映画も同じく「カモメ号青年」(1961)、「赤い花」(1963)、「山頂のスリゲ鷲(トビ)たち」(1975)、など社会主義建設に励む民衆の姿を描いた映画が制作され始めました。
 
<映画 山頂の鳶(トビ:スリゲ)たち>
 
もうひとつのジャンルとして、韓国民衆の姿を描いた映画制作が始まりました。
 
金日成「南朝鮮革命は南朝鮮人民の力で成し遂げなければならない」とした教示を受け、韓国での民衆の闘いの姿を描いた、金正日が初めて現場指導したという2部作映画「成長の道で」(1964~65)は、この様な環境の下に誕生しました。
 
<映画 成長の道で성장의 길에서>
 
この映画は韓国でも描かれた事の無い、李承晩を打倒した「4.19人民蜂起」を題材にして居ます。
オマケですが、高校の時、国語の教科書にこの映画シナリオが載って居たので、私達も映画を鑑賞して感銘を受けた事を思い出します。
 
1970年代、金正日が後継として浮上するにつれ、青年金日成抗日遊撃隊時代に直接創作したという「不朽の古典的名作」が制作され出しました。
 
映画だけでなく小説、演劇、歌劇など全ての芸術の形で作り直されたこの作品群は「血の海」(1969)、「花を売る乙女」(1972)、「ある自衛団員の運命」(1975)、「安重根、伊藤博文を撃つ」(1979)などに繋がります。
 
<映画 花を売る乙女>
 
特に「花を売る乙女」はモスクワ映画祭で受賞し、今も傑作と評価されて居ます。
この映画が共和国映画の最高傑作と評価されるプロセスは、金日成主体思想で唯一体制を確立する時期、金正日が後継者に認められた時期、共和国の文学芸術が社会主義的リアリズムから主体思想的リアリズムに移った時期と重なって居ます。
 
<映画 遊撃隊5兄弟>
 
この時期、金正日が執筆した『映画芸術論』(1973)は、特有の「チョンジャ種子論」で1970年代以降、映画ばかりか全ての文学芸術の規範となりました。
 
ここで『種子』とは、作品の思想的、芸術的核であり、種子を正しく据えると、主題と思想が羽を広げ発展すると言う論理です。
 
1980年代、キム・ジョンイル金正日がいよいよ表舞台に踊り出た時期、キム・イルソン金日成を描いたジャンルがスクリーンに姿を表しました。
 
<映画 朝鮮の星>
 
それが文献映画と呼ばれる、10部作映画「朝鮮の星」(1980〜87)です。
1920〜30年代の青年金日成の抗日闘争を扱ったこの映画は、今日まで映画館、TVなどを通じて、共和国の人民が最も多く見た映画として記録されて居ます。
朝鮮総連でも繰り返し上映されました。
 
「朝鮮の星」はその後続の連作5部作「民族の太陽」(1987〜91)につながりました。
 
この時期、特記すべき映画が20部多部作映画「名も無き英雄たち이름없는 영웅들」です。
この映画は金正日の直接的なアプローチの元、朝鮮戦争期に韓国とアメリカ軍の内部で諜報活動を行った人たちを描いたスパイ映画です。
 
<映画 名も無き英雄たちのハイライトシーン>
 
現在では削除されて居ますが、各巻冒頭に「戦争期と、今も敵後で諜報活動をする革命同士に捧げます」と言うテロップが流れる為、日本には搬入不可で、共和国に訪問してのみ観られる人気映画でした。
 
この映画の大ヒットで、主演を演じたキムリョンリンとヒロインを演じた新人ホンジョンファを国民的俳優(女優)にのし上げました。
白黒映画で作られましたが、近年カラー化され
YouTubeで公開中です。
 
<カラー化完了>
 
この映画はスパイ映画としての完成度も高く、危機をすり抜ける主人公たちのスリルとサスペンスが魅力です。
 
この時期、『隠れた英雄』を描いた映画も多く制作されました。
 
それは、目立たなくても自分がいる場所で黙々と英雄的に行動する素朴な人物をクローズアップする運動と連動して居ました。
このジャンルで最も有名な映画は韓国でもよく知られている女優オミランを1980年代共和国映画界随一の国民的女優にのし上げた「桔梗の花」トラジコッ( 1987)です。
 
<映画 トラジ桔梗の花>
 
これまた余談ですが、私のムスメの名前は彼女から頂きました。
まさしく同姓同名です(笑)。
 
この時期、共和国に亡命し、その後映画制作資金をネコババしたまま拉致されたとして逃亡し、再亡命したシンサンオクが共和国で演出した「帰らざる密使」(1984)、「サランサラン私の愛」(1984)、「塩」(1985)、「プルガサリ」(1985)などの映画や伝統的な素材の映画が復活し、特に「ホン・ギルドン洪吉童」(1986)、「リムコクジョン林巨正」(1987)など、アクションと結合した映画が多く制作され、大変な人気を集めました。
 
<共和国代表イケメン リヨンホ>
 
特に帰国子女だった大学生リヨンホは上記の映画で電撃デビューし、共和国を代表するイケメン俳優として長く人気を集めました。
全くの余談ですが、共和国訪問時に彼と記念写真を撮ってもらった事が一生の記念です。
 

 

1990年代初め、ソ連と東欧圏の崩壊は、共和国に極度の「自主路線:ウリ式社会主義」を選択させ、映画も1980年代の活力を失って硬直化を辿ります。
 
金正日が野心的に企画した多部作芸術映画「民族と運命」(1992〜)は、韓国、日本、アメリカなど資本主義の国で生きる人々の腐敗と堕落を叱咤、祖国統一の為に孤軍奮闘する人物を描き、人民に「朝鮮民族第一主義」を鼓吹しました。
 
<映画 民族と運命>
 
2000年代の最も注目すべき映画は「一女生徒の日記」(2006)です。
 
物質的・世俗的な欲望を率直に出した、共和国の青少年を描いた映画としてカンヌ国際映画祭(フィルムマーケット)で上映された最初の共和国映画となりました。
 
<映画 一女生徒の日記>
 
2012年にはキムジョンウン金正恩体制になり、留学帰りのニューリーダーのイメージアップか、海外合作映画が相次いで公開されました。
 
当時公開された3作品は、ベルギー・アメリカ・中国とそれぞれ初合作した作品で有ると言う点で注目され、各種の国際映画祭で披露されました。
 
<映画 キムドンムは空を飛ぶ>
 
6年間掛け完成した
「キムドンム(さん)は空を飛ぶ」は、ベルギー国籍のアンヤ・ダエルレマンス、イギリスのニコラス・ボナー(「千里馬サッカーチーム」(2002)制作)と朝鮮人民軍4・25芸術映画撮影所が合作したコメディー映画です。
炭鉱労働者のヨンミが高所恐怖症と労働者階級という劣悪な条件を克服して、空中曲芸師の夢をかなえるという内容です。
 
<映画 山向こうの村>
 
5年余りの間、北朝鮮地域のあちこちで撮影したという「山向こうの村」は、会寧出身在米韓国人ベビョンジュンが製作、朝鮮戦争の時期、韓国兵士共和国看護士の愛を描きました。
 
<映画 山向こうの村>
 
現在では核問題に伴う制裁によりこの様な合作は影を潜めて居ますが、今後、条件が整えばこの様な映画が量産されると思われます。
 
「少年探究者たち」(2013、TV)は、中学校の科学バーチャルクラブの生徒が科学バーチャル大会の参加を準備し、「善意の競争」をして、朝鮮戦争の時期の無名戦士たちの肉声を蘇らせ優勝するという内容です。
 
 <映画 少年探究者たち>
 
金正恩時代に入り、これ迄のドグマを脱し、市場経済を取り入れた生産請負制・生産責任制が導入され、社会に競争の原理を打ち出して居ますが、その様な風潮を反映して居ると言えるでしょう。
 
2022年に新作『ひと昼、ひと夜하루낮 하루밤』が制作、公開されました。
この映画は1958年を舞台に反宗派主義活動をスリラー・サスペンス映画調に描いて居ます。
当時の状況を現在の状況になぞらえて描いているのが大きな特徴です。
 

<映画ひと昼、ひと夜>

 

この様に、共和国での映画は娯楽と言うより社会教育手段としての性格が強いですが、時代と共に変化が見られ、社会を写す鏡としての役割も果たして居ると言えるので、純粋で言い尽くせぬ新鮮さが有ります。
 
中々日本で普通に鑑賞する事は難しいですが、
YouTubeなどで英語字幕入りで公開されて居る作品も多いので、機会が有れば是非触れて頂きたいです。
 
韓国映画についてはコチラ

 

<参考文献>
우리 민족 끼리
나무위키 
북한영화❶〜❹

 

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<共和国を代表する人民俳優 ホンヨンフィ>