<ドラマ チョンドジョンのリソンゲ李成桂>
 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮 歴史のトリビア>
77.科田法について
 
 
 前にドラマチョンドジョンのレビューで言及しましたが、朝鮮王朝初期に「科田法」を実施しました。
科田法とは一言で、文武官僚に収租権(税を受け取る権利)を渡した土地制度です。
朝鮮の歴史において大事な制度だったので取り上げます。
 
個人的な話しですが、ブログ管理人の大学卒業論文は「朝鮮王朝初期の土地制度に於ける幾つかの考察」でした。
 
<東京小平の朝鮮大学校>
 
史料集めに国会図書館や東大東洋研究所など方々を廻り格闘、途中祖国訪問延長や突然の入院などのアクシデントも有り難産だったそうですが何とか自分独自の結論に辿り着く事が出来、
見事朝鮮大学の卒業論文賞を受賞する事が出来たそうです。
 
今でも誇りだそうで、自慢出来る事の少ないそのアッパ(父親)はミックスツインズに事あるごとに吹聴しているので、
可哀想にそこのツインズの耳には大きなタコがぶら下がって居るとか?😅
 
<朝鮮王朝初期の土地文書>
 
高麗末、田柴科体制(土地の収租権を給与)が崩れて権門勢家が土地を強奪するなど「農莊」を拡大しました。
高麗末の農荘で農場主は、不法に農民を佃戸(小作)として農荘に縛りつけ、租税を払わず彼らの国の力役を不法に免除させました。
 
高麗末の農荘が免税・免役の特権を享受すると国家財政は底をつき、官僚の禄俸(給料)も正しく支給出来なくなって来ました。
 
<朝鮮王朝の基本法 経国大典>
 
実権を握った李成桂は大土地兼併と農荘の拡大により、貧しい新進官僚の不満と塗炭に陥った農民の声を代弁し、
国の財政確保という面でも土地制度改革に取り組みました。
 
↓↓  この頃の政治はこちらで↓↓↓
そして、1391年(恭譲王3)5月に科田法が公布されました。
①この科田法の第一の内容は私田改革です。
ここで私田とは収租権を地主が持つ土地、公田とは収租権を国が持つ土地を指し、あくまで収租権に限っての権利です。
 
所有権レベルで土地は農民の所有(民田)でした。王土思想は有りましたが、名目上に過ぎず実質は民有地(私有)だったのです。
朝鮮王朝時代の土地所有制度はこの様に、ひとつの土地に所有権と収租権が重層的に存在した事が特徴だったと言って良いでしょう。
 
<ドラマ チョンドジョン>
 
以前植民地時代の研究では、朝鮮王朝時代において土地は全て国有地で有ったとしましたが、現在では上記の様に所有権は農民の個人的な所有(民田)で有った事が明らかになっています。
 
私田改革で権門勢家の農荘を解体して公田に戻し、基本收租権は国家に帰属させました。
 
<ドラマでの科田法>
 
②次に、その上で文武の官僚に経済的基盤を与えるために、収租権を個人に与える私田「科田・功臣田・外官田・軍田など」を支給しました。(これを一言で科田と呼びました)
 
支給は基本1代限りでしたが世襲出来る土地もありました。
私田畿内の原則に基づいて、科田は京畿道内にのみ分給されました。
 
③最後に、公田でも国の農民の租税負担を削減し、私田の佃客(小作人)や借耕者の負担を軽減させるべく、税率を10分の1(10%)に限定、並作半收(小作料50%の小作)を禁じます。
 
↓↓↓これは以前
当コラムでも取り上げました。
 
この様に土地の支配関係で、
高麗末の私田の紊乱が排除され、農民の所有権に基づき、収租権を国家が管理する土地支配関係に転換されました。
これは国家が全国の農民を把握、統制管理する事を意味しました。
 
そのため、農民の民田は租税・徭役・軍役・貢納などの賦課基準となり、農民がその義務の負担を負う代わりに、
農民の所有権が保証されたのです。
 
<太祖リ(イ)ソンゲ李成桂肖像画>
 
こうして、農民の所有地(民田)は安定した所有権となりました。
 
朝鮮初期の農民の土地所有規模は1、2結程度と零細で、自立度が低かったのですが、科田法施行以後は土地所有農民が70%に達し、国家経営も安定して来ました。
 
しかし、科田を不正に自己所有地とするなどの行為も増え、科田法はのちに職田法に移行します。
職田法は、私田を現職者のみに分給する法律で、土地分給も科田法より減少させ、官僚が退職した後は国家に返還させますが、しまいには明宗期には職田制さえ廃止され、禄俸は土地で無く現物で支払われる事になります。
 
<朝鮮王朝期の農民を描いた民画>
 
16世紀には連作法が普及し、農業生産力が増大して、農村に市場が発生発達するなど商品経済が盛んになりました。
この様な経済発展を背景に朝鮮王朝では、次第に民田における地主・佃戸(小作人)の関係が重要な関係になって行きます。
そして3度の戦乱を受け、朝鮮は後期社会へと変貌して行くのです。
 
科田法はこの様に、朝鮮王朝前期社会に於いて公田、私田、民田を決定付けた始発点として、歴史的に重要な意味を持つ法律だったと言えるでしょう。
 

 

 
ドラマ チョンドジョンでも
大地主を中心とした高麗権臣達の反発は酷く、
やがて国論を2分する様な大事件と化します。
 
科田法チョンドジョンら高麗を打倒して
新しい国を建設しようとする易姓革命派の試金石として、
チョンモンジュら反対派を除去する重要な案件として作用する事になります。
 
既得権を奪われる大土地所有者の反発を、
このドラマで充分に確認する事が出来ます。
          
<参考文献>
한국민족문화대백과사전 科田法
 

 

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