<太宗テジョン イバンウォン>

 

 

2 2 近- 背信と革新の太祖 李成桂

 
 
 


本節では近世として朝鮮王朝(李朝)時代の歴史を辿ります。1860年代大院君登場より近代に入るのでそれ以前と言う事になります。

高麗末期、史上最大の高句麗故土回復の機会がやって来ました。
中国で明が勃興し、高麗を圧迫していた元が北に退いたのです(北元)

 

<六龍が飛ぶ>

 

高麗は反元政策で、元に奪われていた双城摠管部(쌍성총관부 サンソンチョングァンブ咸興辺り),
東寧摠管部(トンニョンチョングァンブ동녕총관부 ピョンヤン辺り)の領土を奪還しましたが、
1383年それを明け渡せとの明の要求に奮い立ちました。
 
恭愍王(コンミン공민왕)の治世時、第一次遼東遠征で遼東城と遼東半島一帯を一時的に占領しましたが(1370)
5万の兵による第二次遼東遠征で悲願の高句麗故土奪還の望みが李成桂(リソンゲ리성계)に託されました。


   <太祖 李成桂 肖像画>

ここで彼は威化島回軍(ウィファドフェグン위화도회군)と呼ばれる反逆を試み、クーデターで最高権力者の崔榮(チェヨン최영)を破り政権を奪ります。

彼の遠征反対の理由は主に「事大」でしたが、さて果たして反逆しなければどうなっていたでしょう?

 

<太宗テジョンイバンウォン>

 

共和国では故土回復の最大の機会を逃し、
民族に背いたとの理由で朝鮮王朝成立を強く貶めます。
結論付けは難しいですが、
攻撃して占領に成功してもベトナムの様に明より攻撃を受けていたでしょう。

高麗末期は軍事的にかなり鍛えられていたので良い勝負はしたと思いますが、果たして?


    <衛化島回軍 ルート図>

満洲はその後の満洲族の国家「清」が勃興する地域でも有るので
国土回復はその後もかなり至難だったと思いますが、
不戦敗での放棄が高麗の国土回復精神を損ねてしまったのはやはり罪が大きいと言えます。

別の歴史を見てみたいですね。

 

<太宗テジョンイバンウォン>

 

ちなみに満洲とは元々曼珠(マンジュ:仏教の文殊菩薩 )から変化した吉祥を意味する言葉ですが、女真と言う名称を嫌った女真族が
自らを満洲族と名乗った事から(大和と言い換えたのと同じ趣向ですね)満洲族の本拠地と言う意味で呼ばれた地名です。
 
民族名が地名になった珍しいケースと言えるでしょう。
 
<ドラマ 大風水>

現在中国では日本の傀儡国「満洲国」を連想させるとしてその語は禁止され、
民族は「満族」地名は「東北(トンペイ)地方」と呼びます。

我が国から見ると「北方領土」と言う呼び方がより合うかも知れません。
そう呼ぶと切迫感が湧きませんか?

 

<六龍が飛ぶ>

 

その後、李成桂は明に新国号「朝鮮」と「和寧(화령)」の2つをお伺い立て、
明が朝鮮を選び(これも事大だとこき下ろす人も居ます)
彼が初代国王=太祖(태조)として即位し朝鮮王朝が出帆します。
首都も漢陽(ソウル)に遷都しました。

ドラマも多数作られて居ますが、
古くは「龍の涙(룡의 눈물)から
新しい所では「大風水(대풍수),
変わり種として「六龍が飛ぶ」迄多数です。


   <ソウル 景福宮>

余談で,最近はドラマも正攻法では無く
斬新な切り口で展開するドラマが増えています。

例えば「大風水」では李成桂の政権奪取の裏に
風水師が居たと言う設定で、彼を主人公に据えています。

ドラマ「六龍が飛ぶ」では6人の英雄達を主人公に据え
高麗を倒し朝鮮を建国する彼等の成功ストーリーとなっています。

 

 

これら史実とは違うヒュージョン史劇は韓国で多くの人気を得ています。

 

また最近、KBSで中断している大河ドラマが6年ぶりに制作される事が発表されましたが、太宗を描いたドラマだそうです。

 

このドラマ、タイトルは『太宗テジョンイバンウォン』で2021年12月より2022年5月まで放送し、つい最近大円団を迎えました。

 

 

多くのドラマで描かれた激動且つ波乱な時代のドラマだけに関心を集め、視聴率も9%10%台と及第点を獲得しました。

特に主人公チュ・サンウクの人間味溢れる太宗テジョンことイバンウォンの演技が評判でした。


ドラマレビュー記事はコチラ


ドラマとは違い、斯く評価の散々な朝鮮王朝太祖ですが、
意義が無かったのかと言うと
全く無い訳では無く、高麗は474年を過ぎ、
特にモンゴルの支配の下、
権門勢家による富の独占と、
仏教との癒着による社会の荒廃など末期を迎えていました。

 

 

この頃勃興して来た新進士大夫(儒生)達は
自分達の新しい世界を渇望し、
太祖王朝設立者達はその欲求を忠実に体現したと言えます。

こうして世界的にも珍しい性理学を理念とする
稀有な儒教理念国家(東洋唯一)が誕生しました。


<旧韓末の鐘路>

いずれワンポイントコラムにて取り上げますが、紊乱した高麗末期の土地制度を改め
科田法」クァジョンポプ」を実施し、
農本主義を打ち出し経済を安定させ、
民生の保護にも努めて居ます。
512年の長きに渡りました。

我が国の国家は長期に亘る事が特徴的ですが、
朝鮮王朝も例外では有りません。

長期に存続した理由は多数有ると思われますが、激動の近世にこれ程命脈を保てた一番の理由は
やはり多くの欠陥はあれど性理学(朱子学)
国是として国民を教化したのと
世界的にもこの時期としては珍しい中央集権制確立のせいだと思われます。

どちらも中国からの輸入品ですが
本家よりも朝鮮に於いてしっかり根付きました。

 

 

儒教の呪縛が
長らく我が国を捕らえて来ましたが、
正しくここが始まりでした。
 
また中央集権だったので地方自治時代の今日としては地方自治の伝統が無い為、
日本やイタリアなどと違い地方活性化が
容易では無い等課題が多いですが、
その時代としては先進的かつ合理的統治スタイルだったのでしょう。
しかし建国後混乱が続きます。
王子の乱と呼ばれる息子達による血で血を洗う権力争いが2度も勃発しました。
 

<ドラマに於ける王子の乱>

 

結局実力者、3男の李芳遠(リバンウォン리방원)が兄を第2 (チョンジョン정종)として
2年間隠れ蓑に利用したのち
3 太宗(テジョン태종)として権力を握り政権の基礎を固めます。
 
以前よりドラマ上で多く描かれたとしても脇役的に描かれる事の多かった李芳遠(リバンウォン리방원)こと太宗テジョンですが、どうあれ朝鮮王朝の礎(いしずえ)を作った人物として高く評価する事が出来ます。
 

 

今回、6年ぶりに復活したKBS大河ドラマは彼の経歴、業績を史実として追うと共に、「李芳遠リバンウォン個人」と言う人物象そのものにズームを当て、彼を生き生きと描いたと評価されています。
 
途中ドラマ撮影中の家畜虐待疑惑がもたれ放映休止期間が有ったものの、韓国国内で36話を好評裡に描き切ったこのドラマ、今後日本でも放送される事でしょうから今から要チェックです(笑)。


   <第三代 太宗 イバンウォン 肖像画>

 
余談として朝鮮に
「ミイラ取りがミイラになる」と言う諺(ことわざ)として
함흥차사(ハムンチャサ咸興差使)と言う
慣用句が有ります。
 
それは王子同士の血を血で洗う後継争いに嫌気が差した太祖が早々に上王として引退し
故郷の咸興に引っ込んでしまい、
度重なる太宗(三男李芳遠)の送った首都への帰還を促す使者を斬ってしまったので
使者が戻る事が無かったと言う故事から来た言葉です(当然フィクションですが:笑)

 

 

共和国の歴史観では
王や支配者の歴史では無く
人民大衆の歴史と唱えるので王の治世を強調しませんが、
やはり指導者によって歴史は動くので無視は出来ないと思います。
 
韓国の史劇でも王様は必ず出て来ますし、
居ないと味気無いコーヒーの様になります。
なので近世では歴代王の名前も記す事にします。
 
歴史篇まとめです。
     気になる時代をどうぞ↓↓
 
 

<参考文献>
朝鮮史研究会編 朝鮮の歴史
山川出版社 世界歴史体系 朝鮮史1
山川出版社 世界歴史体系 中国史
李殷直 朝鮮名人伝
조선력사연구소   조선전사
동아대학교 석당학술원他 高麗史
キネマ旬報社 神田聡他訳
         朝鮮王朝実録
キネマ旬報社 金両基 
   ビジュアル版 朝鮮王朝の歴史 
垣内景子 朱子学入門

 

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<ドラマ 六龍が飛ぶ>