目を閉じれば、今でもあの日の光景が浮かんでは消えていく…。
それはまるで、昔観た映画のワンシーンのように。
やり場のない想いだけが胸に残り、 時が経った今でも、あの日の切なさを連れてくる。
10年前のGW最終日―― そう、その日は母の日だった。
病室で交わした、何気ない会話。 自然にこぼれる笑顔。
『それじゃ、来週また御見舞いに来るからね!!』
『うん、来週…またね!』
それが、 母と交わした最後の言葉になった。
平成28年5月9日。
まだ夜も明けきらない午前4時過ぎ、 突然鳴った携帯電話。
嫌な予感を振り払うように、 急いで病院へ向かった。
ハンドルを握る手は震えていた。
少しずつ明るくなっていく空を見ながら、 頭の中には走馬灯のように、 たくさんの思い出が溢れていた。
お願いだから…
間に合ってくれ…
時間よ、止まってくれ…。
病室の前に着くと、 扉は静かに閉ざされていた。
ゆっくり開けたその先で、 父も、弟たちも、おじさん夫婦も泣いていた。
フラットになった心電図。
母の日に贈ったデッキから流れる優しいBGM。
そして、 まだ少し温もりの残る母の手。
あたたかかった。
小さい頃から、 何度も握ってもらった、 大好きな母の手だった。
2016年5月9日 午前4時35分。
母は、満60歳で生涯を閉じました。
あれから10年。
長いようで短かった10年。
今でもふとした瞬間に、
『あ、お母さんに話したいな』
そう思うことがある。
嬉しかったこと。 苦しかったこと。 頑張ったこと。
本当は、 もっとたくさん話したかった。
もしも、もしも時間を巻き戻せるなら――
ちゃんと目を見て、 『ありがとう』って伝えたい。
産んでくれてありがとう。
育ててくれてありがとう。
たくさんの愛情をありがとう。
思い出されるのは、 いつも笑顔の母です。
10年経った今日も、 あの日のことを忘れない。
そしてこれからも、 母がくれた優しさと愛情を胸に、 前を向いて生きていこうと思います。