ARIF MARDINへの敬意なのか? トルコの絨毯模様にBEE GEESのロゴ。これがグループの最盛期を象徴するロゴとなった。右上がドイツ盤。その下がアメリカ盤。左上はシンガポール・マレーシア盤。下がイギリス盤。キーカラーが国によって異なっているのが面白い
A面 3曲目の「WIND OF CHANGE」が好きだ。この曲のリズムが身体を揺さぶらせ、迫ってくる。ロサンジェルス、ニューヨーク、そしてフロリダで音を作っていく過程で、GIBB兄弟が感じとったもの。それは陳腐な物言いだが、広い大陸、成功と挫折、民族のるつぼ、人種差別、そして、そこでの無力感。後に生まれる名曲「STAYING ALIVE」にも共通する「閉塞感」が、この曲にも宿っている。途中、「HELP US SURVIVE ,MAKE US ARRIVE」
などと韻を踏んだ表現も気が利いている。
針を降ろす。1曲目「NIGHTS ON BROADWAY」。正にアメリカを象徴するニューヨーク・マンハッタンの劇場通りの夜を歌った曲での幕開け。盛り上がりにファルセットを使用したことで、後期BEE GEESの運命まで変えてしまった曲だ。アリフ・マーディンの「裏声での叫び」の要求にBARRYが応じたのがきっかけで、以後、スタイリスティックス(THE STYLISTICS)ばりのフィラデルフィア・ソウルへと変貌していく大きな要因となった。
2曲目の「JIVE TALKIN’」。もはや、説明の必要もないだろう。完成されたダンス・ミュージック。冒頭のオープンDでのチューニングの「C」音をリズミカルに奏でる音はクライテリア・スタジオまで行く途中、橋を渡る際に、決まって生じた「音」がベースとなっている。
つまり、 1曲目から 3曲目まで聴いた時点で既にBEATLESサウンドに代表される英国ロックの香りは全くない。「これが、あのBEE GEESなのか?」。そんな感覚にとらわれていると次の「SONGBIRD」で「あっ、やっぱりBEE GEESだわ」と安心させられる。美しい旋律。今となってはGIBB 3兄弟、いや 4兄弟に逆に捧げたい曲だ。私にとってのSONGBIRDはBEE GEESそのものだ。そして、ラブソングの「FANNY」。相変わらず優しい旋律だ。FANNYは人名?
75年当時、日本盤「MAIN COURSE」を手に入れたばかりの頃、別の意味で泣けたことがある。B面1曲目「ALL THIS MAKING LOVE」が、針飛びした。現在の高価なレコードプレーヤーではどうか知らないが私の愛機 4チャンネルステレオでの再生ではどうしても飛んだ。レコードをかけている時は静かにそろそろと床を歩き、少しでも乱暴に歩こうものなら確かに針飛びはしたけれど、静かに厳かに聴いているにもかかわらずである。
しぶしぶずっとそのレコードを聴いて育った。だから「ALL THIS MAKING LOVE」は別の意味で引っ掛かる(タイトルも)。これはロックだ。しかし、その後に「COUNTRY LANES」「COME ON OVER」というキレイな旋律と歌声が続くのだ。やはりこれも従来のBEE GEES節。「COUNTRY LANES」は夏になるとどうしても聴きたくなる。続く「EDGE OF THE UNIVERSE」は軽ーいノリのおとぎ話。お気楽な気分でリズムと音を楽しめばよい。それが本質。「BABY AS YOU TURN AWAY」ではBARRY がファルセットで初めてソロをとっている。最初、やはりこれには驚いた。
BEE GEES の最高傑作とまで言われたアルバム「MAIN COURSE」。センチメンタリズムなし。何とも大人の味わいじゃないか。文句なしの軽音楽。完成され、研ぎ澄まされた味わい。「ODESSA」のような重厚さはアルバム全体からは感じられない。「チッチチッチチー」というタイヤの擦れる音を想像しながらライトな感覚でドライブする時のBGMには最適だ。
ファルセットを随所に用い、R & B(リズム アンド ブルーズ)に成長した彼らの音楽性。当然、ARIF MARDIN の影響と考え
られるが、あくまでも作曲はGIBB BROTHERS 。
思い出すなあ、このアルバムが発表された頃、高校生だった。それまでのBEE GEES のイメージとはちょっと異質な「何か」に気が付いたものの明確な答えも出せずに、ただただ、見守るだけだった。今はトータルで考えられる。過去の BEE GEES と 未来の(アメリカのブラック・ミュージックを取り入れ、その後、脱皮した)BEE GEES のブレンドの味わいが何とも言えないコクを確かに醸し出している。