
ROBINが死んだ。ガンとの闘病はさぞや大変だったことだろう。医師によれば奇跡的回復も一時はあり、その強い精神力は周囲を驚かせるばかりだったようだ。よくぞ頑張った。遺作となってしまった「TITANIC REQUIEM」は私、いやファンにとってははからずもROBIN’S REQUIEMになってしまったが、この特筆すべき新作の評が殆どないので、ROBINへの追悼として、そして何よりもBEE GEES の終焉に思いを馳せながら感想を記してみたいと思う。
まず、1番最初に聴いた感想は「素晴らしい」の一言だ。とうとうROBINは自身の音楽性を「クラシック音楽」の領域にまで広げてしまった。確か「僕らは正式な音楽教育を受けていないんだ。いわばストリートエジュケーションだね」と彼らの歩みを紹介する「ケッペル・ロード」でROBINは語っていたと思う。その口調の裏にはヨーロッパの古典音楽への敬意が感じとれる。
もともと、ROBIN はキリスト教を基盤にしたヨーロッパ音楽を志向していた。その代表的な例は彼らの4作目のアルバム「ODESSA」に顕著だが、表題曲「ODESSA」は勿論のこと「BLACK DIAMOND」「LAMPLIGHT」もそうだったし「JOKE」だってある意味その線だと思う。ソロアルバム「MAGNET」でロビン自身はR&Bを大いに志向しているという姿勢を示したけれども、ロビンの透き通るような声質はどうみても、黒人音楽よりもヨーロッパの聖楽隊のそれに合っていると思う。
1 TRIUMPH この悲劇に象徴的なフレーズで始まる。男性テノールのリフレインが印象的。ただ、これはあくまでもタイタニック号の完成というイギリスの造船技術の最高峰を讃える大勝利の歌だそうだ。が私には今から壮大で悲劇的な物語がはじまるぞ、という大いなるアピールに聴こえるのである。
2 FAREWELL まるでベートーベンの「第九」第3楽章のような穏やかで静かな弦楽演奏が展開していく。標題の通り幸福感が漂う。新大陸アメリカでの希望に満ちた生活や、新しい仕事を求める人々などの思いを乗せて航海が始まった幸福感を表しているという。
3 MAIDEN VOYAGE 前曲の続きで夢見心地で心躍る航海の楽しい心情が表されている。NEW HORISONS(新なる地平線)に向けて航海をする豪華客船には新鮮な雰囲気が満載だ。オープニングを聴いた時はかつて見た映画「ロミオとジュリエット」で二人がベッドで共に朝を迎えるあの小鳥がさえずるような清々しい空気を感じてしまった。
4 NEW YORK SUITE IN C MAJOR 自由の新天地を目指しての航海の特別な感情が乗客を支配している。格調高い雰囲気の中に響くバイオリンの音色も決して悲しい響きではなく高貴さが漂っている。
5 SUB ASTRIS (UNDER THE STARS) 満天の星空を進む豪華客船の中は祝杯ムード。ある者は甲板に出て星空を眺め、ある者はドレスをまとい、船長とともに食事やシャンペンを楽しみ、別の場所ではフォークダンスをするなど、やがて訪れる運命とはまるで別な雰囲気の中で過ごしている。だが、音楽的にはこの辺から段々と悲劇的な運命の忍び寄りが感じられる展開の旋律に変化は感じられる。
6 KYRIE このタイトル。日本語訳は「求憐」だそうで、まさに運命は氷山への衝突へと深刻化。人々が右往左往する様子が目に浮かぶようだ。悪魔が運命を支配し始めるその様子がまさに音楽によって表現されている。
7 SOS(TRACT) 船の沈没がはじまる。人々は逃げ惑い、避難し混乱とパニックという阿鼻叫喚がこれから始まる、いや既に始まっている、そんな切迫感と絶望感が客船を支配している。
8 DISTRESS(CONFUTATIS) 苦しみ。ロビンはこの曲が1番気に入っているそうだが、これは悲しい運命を讃える文字通りの讃美歌なのだろう。神の救いを求め、祈り、それでも事態は深刻化していく様。
9 SALVATION(GRADUAL) 救助、救援。どうしようもない結果を招いてしまった悲しい結末に人間の無力さを感じざるを得ない。
10 REFLECTIONS タイタニックについては生存者は多く存在したと聞いてはいるがそれでも1513人という犠牲者を出している。静かに、何事もなかったように生存者たちのボートが浮かぶ。
11 DAYBREAK 夜明け。まさにオペラを想定した男性歌手(プリモ)によるソロを思わせる。感動的に愛を歌いあげている。
12 CHRISTMAS DAY プリマドンナによるソロと思える。父を失ったクリスマスの日を少女はいったいどう過ごせばよいというのか。
13 LIBERA ME まさに歴史的悲劇への鎮魂歌で、オープニングのフレーズも加わり、歌い上げるこの「TITANIC REQUIEM」のテーマにふさわしい。
14 DON’T CRY ALONE ロビン・ギブのソロにふさわしい悲哀に満ちた旋律。やっぱりロビンの声は悲壮感と哀愁に満ちていて素晴らしい。この曲の解説は泣かせる。つまり、1人生き残った妻に亡き夫が語りかけるという想定。今は亡きROBIN の ファンへのメッセージと考えると泣けてくるが。
15 IN PARADISUM(AWAKENING) エンディングにふさわしい神々しさに満ちた讃美歌だ。人間という精神性の高い生き物が運命に翻弄される崇高なドラマの終焉に賛辞を贈るべくドラマは静かに幕を引く。人生とはいったい何ぞや、という哲学的命題に対する魂の救済はやはり信仰しかないのか、と思わざるを得ない。
かくして、壮大な叙事詞「タイタニック・レクイエム」は完成した。
まず、1番最初に聴いた感想は「素晴らしい」の一言だ。とうとうROBINは自身の音楽性を「クラシック音楽」の領域にまで広げてしまった。確か「僕らは正式な音楽教育を受けていないんだ。いわばストリートエジュケーションだね」と彼らの歩みを紹介する「ケッペル・ロード」でROBINは語っていたと思う。その口調の裏にはヨーロッパの古典音楽への敬意が感じとれる。
もともと、ROBIN はキリスト教を基盤にしたヨーロッパ音楽を志向していた。その代表的な例は彼らの4作目のアルバム「ODESSA」に顕著だが、表題曲「ODESSA」は勿論のこと「BLACK DIAMOND」「LAMPLIGHT」もそうだったし「JOKE」だってある意味その線だと思う。ソロアルバム「MAGNET」でロビン自身はR&Bを大いに志向しているという姿勢を示したけれども、ロビンの透き通るような声質はどうみても、黒人音楽よりもヨーロッパの聖楽隊のそれに合っていると思う。
1 TRIUMPH この悲劇に象徴的なフレーズで始まる。男性テノールのリフレインが印象的。ただ、これはあくまでもタイタニック号の完成というイギリスの造船技術の最高峰を讃える大勝利の歌だそうだ。が私には今から壮大で悲劇的な物語がはじまるぞ、という大いなるアピールに聴こえるのである。
2 FAREWELL まるでベートーベンの「第九」第3楽章のような穏やかで静かな弦楽演奏が展開していく。標題の通り幸福感が漂う。新大陸アメリカでの希望に満ちた生活や、新しい仕事を求める人々などの思いを乗せて航海が始まった幸福感を表しているという。
3 MAIDEN VOYAGE 前曲の続きで夢見心地で心躍る航海の楽しい心情が表されている。NEW HORISONS(新なる地平線)に向けて航海をする豪華客船には新鮮な雰囲気が満載だ。オープニングを聴いた時はかつて見た映画「ロミオとジュリエット」で二人がベッドで共に朝を迎えるあの小鳥がさえずるような清々しい空気を感じてしまった。
4 NEW YORK SUITE IN C MAJOR 自由の新天地を目指しての航海の特別な感情が乗客を支配している。格調高い雰囲気の中に響くバイオリンの音色も決して悲しい響きではなく高貴さが漂っている。
5 SUB ASTRIS (UNDER THE STARS) 満天の星空を進む豪華客船の中は祝杯ムード。ある者は甲板に出て星空を眺め、ある者はドレスをまとい、船長とともに食事やシャンペンを楽しみ、別の場所ではフォークダンスをするなど、やがて訪れる運命とはまるで別な雰囲気の中で過ごしている。だが、音楽的にはこの辺から段々と悲劇的な運命の忍び寄りが感じられる展開の旋律に変化は感じられる。
6 KYRIE このタイトル。日本語訳は「求憐」だそうで、まさに運命は氷山への衝突へと深刻化。人々が右往左往する様子が目に浮かぶようだ。悪魔が運命を支配し始めるその様子がまさに音楽によって表現されている。
7 SOS(TRACT) 船の沈没がはじまる。人々は逃げ惑い、避難し混乱とパニックという阿鼻叫喚がこれから始まる、いや既に始まっている、そんな切迫感と絶望感が客船を支配している。
8 DISTRESS(CONFUTATIS) 苦しみ。ロビンはこの曲が1番気に入っているそうだが、これは悲しい運命を讃える文字通りの讃美歌なのだろう。神の救いを求め、祈り、それでも事態は深刻化していく様。
9 SALVATION(GRADUAL) 救助、救援。どうしようもない結果を招いてしまった悲しい結末に人間の無力さを感じざるを得ない。
10 REFLECTIONS タイタニックについては生存者は多く存在したと聞いてはいるがそれでも1513人という犠牲者を出している。静かに、何事もなかったように生存者たちのボートが浮かぶ。
11 DAYBREAK 夜明け。まさにオペラを想定した男性歌手(プリモ)によるソロを思わせる。感動的に愛を歌いあげている。
12 CHRISTMAS DAY プリマドンナによるソロと思える。父を失ったクリスマスの日を少女はいったいどう過ごせばよいというのか。
13 LIBERA ME まさに歴史的悲劇への鎮魂歌で、オープニングのフレーズも加わり、歌い上げるこの「TITANIC REQUIEM」のテーマにふさわしい。
14 DON’T CRY ALONE ロビン・ギブのソロにふさわしい悲哀に満ちた旋律。やっぱりロビンの声は悲壮感と哀愁に満ちていて素晴らしい。この曲の解説は泣かせる。つまり、1人生き残った妻に亡き夫が語りかけるという想定。今は亡きROBIN の ファンへのメッセージと考えると泣けてくるが。
15 IN PARADISUM(AWAKENING) エンディングにふさわしい神々しさに満ちた讃美歌だ。人間という精神性の高い生き物が運命に翻弄される崇高なドラマの終焉に賛辞を贈るべくドラマは静かに幕を引く。人生とはいったい何ぞや、という哲学的命題に対する魂の救済はやはり信仰しかないのか、と思わざるを得ない。
かくして、壮大な叙事詞「タイタニック・レクイエム」は完成した。

ところで、ここで話を BEE GEES に戻す。アルバム「ODESSA」は1969年に発表されたコンセプトアルバムとされているがBARRYが言うように中途半端な形での結果に終わっている。1曲目を飾る「ODESSA」の設定は完成版では1899年 2月14日、イギリス船ヴェロニカ号とされているがデモ盤では1866年 2月14日、オランダ船オンストラウス号(生存者は誰もいなかった)とされ、それが、今回、ROBIN によって1912年 4月14日、イギリス船タイタニック号という歴史的事実に遂に臨んだ形で結実した。そう思うのはやはり、BEE GEES という稀有で才能ある兄弟に惚れ込んだものだけが考える作品評であろうか。
あの赤いベルベット地のアルバムを開くと薄いグリーンで描かれた絵(英米盤)のイメージがタイタニック号の悲劇と重なります。若き日にイギリスからオーストラリアへ、オーストラリアからまたイギリスへと航海した日々。列車事故で命拾いした自身の経験をこのアルバムで存分に発揮していますね。
ロビン! ありがとう。私たちファンにとっての「オデッサ・オペラ」は十分に堪能できました。完成版がロイヤル・アルバート・ホールで上演される日も近いんじゃないかな。
どうか安らかにお眠り下さい。本当にありがとうね、ロビン。「REQUIEM」ちゃんと聴いたからね。さようなら。また、そちらの世界で稀有な美しい声を聴かせて下さい。合掌。
(2012年5月13日 日記より転載)