最近、ある人からトラックのモジュール設計について質問されました。
トラック開発に従事していたとはいえ、実験部署が長かったこともあり、あまり真剣に考えたことがなく、気の利いた答えを持ってはいませんでしたが、あらためて考えてみると、トラックとは、元々モジュール設計の権化のような製品であるということに気付きました。
言い方を変えれば、トラックは“最もモジュール化度の高い製品群”の一つであるということです。
ものの本によれば、製品設計のモジュール化とは、“構成要素の塊“を工夫することによって、”塊の間に働く相互作用を極力減らし“、”各塊の独立性を高め“、”多くの製品バリエーションを効率的に作り出す“ことだと定義されています。
実際、世界中で使われているトラックのほとんどは、所謂キャブオーバーとよばれる形式で、梯子状に組まれたフレームの前部にエンジンが、その上にキャビン(運転台)が取り付けられ、フレーム後部には、荷台がのり、フレーム下部には、サスペンションを介して、車軸が取り付けられています。
よく目にするトラックの絵を描いてみるとわかるとおもいますが、総重量2tの小型トラックから25tの大型トラックまで、相似形です。
トラックの設計者は、単純に言えばトラックの用途に従って、フレーム、キャビン、サスペンション、車軸、タイヤ、エンジン、トランスミッション、駆動系を選んできてトラック全体を構成し、装置設計者は、小さなものから大きなものまでシリーズとして揃えておけば済んでしまいます。
更に、驚くべきは、このキャブオーバートラックという形式は、基本的に50年以上にわたって、変化することなく踏襲され、何万というバリエーションを世に出し続けているという事実です。
乗用車の世界では、プラットフォームという考え方があって、車台を極力共通化して、セダン、ワゴン、クーペなどのバリエーションを簡単に造れるようにしようとしていますが、トラックの様には、上手くいきません。
仮に、同じ数のバリエーションのトラックと乗用車を開発しようとしたら、それに要する費用と時間は桁違いになるのは明らかです。
トラックにも、乗用車と同じく電動化、自動運転化の波は押し寄せていて、要素革新だけでなく、構成システムの境界を見直す必要が生じていますが、“高度にモジュール化された製品”であることには、変わりないでしょう。