初代のFitを所有していたこともあり、昨秋モーターショーで見た4代目Fitには興味がありました。

買い替え予定もないので一寸気が引けましたが、ネット経由で予約して昨日試乗してきました。

 

試乗車は、HEVのHOMEという最も売れ筋とおもわれるグレードです。

3代目の昆虫の外殻を思わせるデザインに対し、少し可笑しみさえ感じられる優しいデザインは好感が持てます。

サイドシル高さも気にならず、乗り降りは楽です。リアドアも試しましたが同様。

ドア開閉音は、フロントは結構重々しく良い感じですが、リアは平べったい音で、その落差が目立ちました。衝突安全性能のために前ドアが補強されている副次的効果かもしれません。

 

ハンドルのテレスコを合わせ、操作系スイッチを触り、運転姿勢を決めるまでで、違和感は一切ありません。気負ったところのない自然な操作系デザインです。

後席は、足元、ニースペースとも身長178㎝のドライバーが前席に座った状態でも十分です。ホンダ車の美点である、低いセンタートンネル張り出しも踏襲されています。小型車の室内空間を稼ぎ出すHONDAのこだわりが生きています。

 

パーキングスペースからモーター駆動で道路に出てから、ゆっくり加速する途中でエンジンが掛かりますが、ショックのないスムーズな加速感です。信号停車での0.1g以下の緩めの減速で回生ブレーキが使われていましたが、油圧ブレーキとの協調も上手く、ブレーキフィールは上質です。

 

一般道路の50km/h以下の車速域でも、ハンドルの座りの良さがすぐに実感できました。このクルマにも装備されているLKAS(車線維持支援システム)のために、以前のクルマ程には素の直進安定性が重要性能ではなくなっている気もしていますが、高速道路でなくても真っすぐに走りやすいクルマであるにこしたことはありません。

 

乗り心地も良好です。とくに大きめの段差通過時のこなしが一クラス上のクルマのそれで、一寸驚きました。

車内音レベルも低く快適ですが、荒れた路面でのタイヤノイズは、クラス平均から抜け出る程ではありません。

加速感はとても自然です。坂道で80%程度まで踏み込んでみると、もう少しパワーが欲しい気もしましたが、必要十分なパワーは持っています。

 

もはや、HEV(ハイブリッド)は、“燃費のための特別な仕掛け”というイクスキューズから脱して、自然な加減速感を手にいれていると実感しました。これも、TOYOTAが初代プリウスを出して以降、関係するエンジニア達の約20年間の地道な努力の成果であるに違いありません。

 

運転中とても印象的だったのは、運転席からのフロントビューです。平らなインパネ上部と平面に近いフロントウインドで区切られた“四角い視界”が、新鮮で気持ち良くさえあります。加えて細くなったフロントピラーの効果も大きく、とても清々しいフロントビューを造り上げています。

 

初代Fitで、私自身不満が残ったのは、乗りごちの悪さ、疲れるシート、斜め前方視界の悪さの3点でした。シートに関しては、長く座ってみないと判断はできませんが、短い試乗中の印象から推測してみると多分良さそうです。他の2点に関しては、見事に改善されています。

HEVシステムは、もはや燃費のためだけでなく、快適な走りと静穏な信号待ちをもたらしてくれます。

 

信頼性に関しては、現時点で未知数ですが、電気式パーキングブレーキの不良対応で半年も発売を延期し万全を期した様子をみると、3代目で評判を落としたような度重なるリコールの再現は無さそうです。

 

ガソリン車比、三十数万円のプライスタグとは言え、これだけ完成度の高いメカニズムを大衆車の範疇で実現し、新型Fitにまとめ上げたHONDAの本気を感じました。

 

試乗後、HONDAは、今後どんなクルマを造ろうとしているのだろうかと思いを巡らせました。

私の世代では、ツインキャブの軽トラック、S800、マスキー法を後処理なしでクリアーしたシビック、マン島TTを制したバイク、圧倒的勝利を重ねたF1、、、という、“とんがった”クルマを造るのがHONDAのイメージなのですが、現在のHONDAは、シビックとアコードで儲けるUSA HONDAであり、N-BOXと小型車Fitしか売れない日本のHONDAです。

 

思い返せば、初代Fitも爆発的ヒット車で、私自身も納車まで半年待ちました。

4輪メーカーとしてのHONDAは、時々大きなホームランをかっとばす一発屋から抜け出ていないような気がします。

 

良いクルマを継続的に造り続け、HONDAアイデンティティを確立した上で、エンジニアリングだけにとどまらず、商品ラインアップとして確立してこそ、本田宗一郎さんの遺志を継ぐことになるのでは?