2017年、運行中の新幹線の台車に亀裂が発生し、危うく大事故になる直前に運行中止に至った“重大インシデント”は記憶に新しいこととおもいます。
当時私自身、ブログで、“新幹線の重大インシデント発生に思うこと”と題して、運行中のリアルタイムモニターシステムの有効性と、中でも各部の温度モニターの充実が特に有効ではないかと、私見を述べました。
商用車メーカーで、車載データロギング装置によるユーザーサポート開発に関わった経験から、新幹線の異常検知ステムが、思いの外貧弱に思えたからです。
それが、今月になって、“台車トラブルを受けたJR東海の安全対策が進展…台車の温度検知システムを増強、空気ばね圧力の常時監視も”という記事をみることになりました。
この機会に、JRのインシデント以降の対応を調べなおしてみたら、インシデント前から温度監視は実施されていたことを知りました。
そのシステムとは、線路側に設置された“地上装置が通過する新幹線の台車の特定部位の表面温度を非接触で計測する”という、決まった線路上を走行する鉄道ならではのものでした。
異常発熱する部品は、台車内のギアボックスやジョイントなど高速回転する部品で、部品そのものに温度センサーを取り付けることは可能とは言え、決して簡単ではありません。
間接的ではあっても、発熱部位から離れた回転しない保持器や油脂の温度を計測するのが、商用車で普通に行われている検知手法です。
鉄道がこのような凝ったシステムの採用に至った事情はどうであれ、このシステムが、当時異常をとらえて、運行中止にできなかったのは、どうやらそのシステム運用に問題があったと言えそうです。
実際、システムはギアボックスの温度上昇を記録していたが規定の閾値以下であったので、異常とは判定できなったというのが真相のようです。
今月公表されたJR東海の広報資料によれば、インシデント以前に設置されていた温度検知設備が2か所だったのに対し5か所に増やし、各検知地点間の温度上昇が、予め定められた閾値以上に上昇した時に、自動的に“異常”と判定する方式に改められたと理解できました。
基本的なシステム構成要素を踏襲しつつも、温度監視の網の目を細かくし、判定時間間隔も短くすることで、よりリアルタイムに正確な異常判定を可能にしたと言えます。
これと合わせて、台車サスペンションのエア圧の常時監視と地上監視システムの充実も合わせて行う今回の対策により、新幹線の安全神話がさらに伸びることが期待できそうです。