「ハレ行こうや」


今日もカレーか・・・、という気持ちを隠して同意した途端、

「話があるから二人で行こう」とワタベさんは言う。


12:00前にはリクルート銀座7丁目ビルの表玄関を出て、

旧電通通りを渡る。

ハレへの道中は南向きで眩しい光を正面から浴びるせいか、

イシイ薬局を通り過ぎるあたりでいつも

カレーに対する倦怠を忘れてしまう。


店の階段を昇るにつれ、

学校給食並みにカレーへの渇望が膨らんでいく。

レッドカレーでごはんを2杯たいらげコップの水を飲み干すや、

香辛料の残り香を吐息と合わせて大きく吐き出し、

一拍置いてから席を立つ。満足。


「おいおい、おれの話を聞いてくれよ」


イシイ薬局あたりでワタベさんの用件も忘れていた。

ひざの上に上着を置いて座りなおす。


「来年の夏ごろ、会社を始めようと考えてるんやけど、
一緒にやらへん?」


直ちに了解してまた上着を抱える。

なにせ、昼どきのハレは階段に沿って行列ができている。


「ちょっちょっ、どんなビジネスか聞かんでいいんか?」


ワタベさんの誘いなら何でもやる意向を伝えると、

目を潤ませながら右手を差し出してきた。


「会社名は『シニアコンサルティング』なんや」


覚えやすいとお世辞を言うと、

ワタベさんは「せやろ」と言って鼻腔を開いた。


1999年12月、当時、大学6年生だった私は、

『シニアコンサルティング』(以下、SC)の一員になった。

同時に、大学を辞める決心をした。

前回、弊社会員組織MASTERの会員を取り上げましたが、

今回もユニークなケーススタディとして一例ご紹介します。


京浜東北線 港南台(横浜市栄区)の戸建にお住まいの

Eさん(62歳・女性)は先日、住み替えを決断されました。

都心部のマンションへの住み替えがトレンドになっていますが、

Eさんが選んだのは東急東横線多摩川(大田区)の一戸建。


当初、地域のランドマークになるような

タワー型マンションを検討されていましたが、

1点だけどうしても妥協することができず、

最終的には以前の間取りとほとんど変わらない規模の
郊外物件を購入しました。

 ●「Kさん、マンションにはアレがないのよ」
 ○「アレって何ですか?」
 ●「余分なスペース」
 ○「あ~なるほど、お子さんやお孫さんが

   いつ来てもいいように・・・」
 ●「違うわよ、夫から避難するためのシェルターよ」


Eさんのためにお断りしますが、私の知る限り

夫婦仲はすこぶる良好です。

都心部マンション物件のウリである、

交通の利便性や優れたセキュリティを切望されていたEさんが、

その思いを覆すほどのボトルネックになるとは意外でした。


 ○「マンションでも間取り次第で、

   ご夫婦それぞれの部屋を

   確保できるのではないでしょうか?」
 ●「それはそうね。

   正確に言うと夫から離れたいわけではなくて、
   妻の役割を放棄する空間を持ちたいの」
 ○「もう少し説明してもらえますか?」
 ●「今度の家では、二階では決して

   家事をやらないと決めている。
   家の一階にいるときは妻でも、

   二階に上がればただの人」


熟年離婚の増加が注目されていますが、

夫婦関係を維持するため、敢えて

二人の時間や空間を隔てて “ガス抜き” する

シニアは意外と多いようです。


定年退職後、内弁慶な夫を外出させるために、

弊社が行う男性対象のグループインタビューに、

奥様が推薦されるケースもよくございます。


本年3月に実施したMASTERの懇親会には、

ご夫婦での参加を認めていたにもかかわらず、

9割以上が単身で参加しました。


印象的だったのは、

席替えタイムを告げると拍手喝采になったこと。
新しい出会いに貪欲な姿勢に驚くとともに、

閉会と同時に携帯電話で奥様にコールバックする姿を

微笑ましく見ていました。


仕事や家事の負担から解き放たれる特権を有するシニアは
“個” に戻るチャンスを窺っています。

夫婦関係を解消するほどヘビーなニーズはなくとも、

カジュアルに個人を実感できる商品・サービスは今後、

狙い目かもしれません。

50歳以上の方々に登録いただいている、

弊社会員組織MASTER会員に先月、

箱根のリゾートマンションを購入された女性

Sさん(57歳)という方がいらっしゃいます。


リゾート業界のメインターゲットは、
ご存知の通り50歳以上のシニア層。

上辺だけを見れば注目すべきトピックスではありませんが、

購入理由がユニークなのでご紹介します。


東京で暮らすSさんには、一昨年入籍した一人娘がおり、

昨年、初孫に恵まれました。

現在、娘は夫の仕事の関係で名古屋に転居し、
以前ほど顔を合わす機会がありません。


「孫に会う機会が減ってしまったのが、いまの生活の唯一の不満」


娘夫婦や孫に会う理由づけのため、

リゾート物件を購入することは珍しいことではありませんが、

東京と名古屋の間に位置する箱根を選んだ理由に瞠目しました。


「娘とは、貸し借りなしのイーブンな関係を保ちたい。

 このマンションまでの移動距離さえもイーブンで。


 リゾートマンションならお互いの家の決め事に囚われず、

 ホストとゲストの役割分担もなく付き合える。


 娘といえども、自宅を訪ねると気を遣うわ」


厳密に言えば、リゾートマンションを購入したのはSさん自身であり、
お金の面ではイーブンではありませんが、

Sさんには “買い与えた” 意識がまったくないのが面白いところです。


親しい人とは貸し借りをしたくない ―― 四半世紀前まで、
「お隣さんから米や醤油を借りる」文化が根づいていた日本において、
著しく変化した価値観の1つではないでしょうか。


以下のようなデータがあります。


 Q.「子孫に美田を残す」意向はあるか?

  ・ 積極的に残すつもりはない + 残す必要はない = 72%
  ・ どんな場合にも遺産を残す = 17%

   (総務省郵政研究所「2001年家計金融資産調査」)


子供に迷惑をかけない、その代わり貸し(=遺産)も作らない。

貯蓄を限りなくゼロにして寿命を終えることに

共感するシニアが増えているのは間違いありません。


この連載では、シニア一人一人の消費の実態に

スポットを当てながら、巨大なシニアマーケットで

“売れる” 商品を育てるためにどのようなコミュニケーションが最適なのか、

ケーススタディを交えて紹介していく予定です。

クリスマス、おめでとうございます!
本日のみ「営業の、神様の、子供(仮)」改め、僭越ながら
“非公認” サンタクロースとして、言葉のプレゼントをお届けします。

2005
年、一大ブームを巻き起こした「白石さん」を含む、
私の早稲田大学生協コネクションのなかで、白石さんを超える
“リーサルウェポン” と仲間内では評される人物の作品です。

(白石さんと私の関係については、10月31日にUPした
 「白石クンの思い出」 をご覧になってください)

 1.三浪して早稲田大学第二文学部に入学したこと
 2.同じ時期に、早稲田大学生協で早番としてバイトしていたこと
 3.昔、サザンオールスターズをマニアックに聴いていたこと

「キク」と呼ばれるその男と私は、この3つのディープな共通項をきっかけに
打ち解け、以来10年間、私の数少ない友人の一人として親交を深めてきました。
驚くことに、彼は未だ生協でバイトをしているのです!
(フルタイムではありませんが)

今回ご紹介するのは、仲間内専用のBBSで「キク」なる人物が吐き出した
“名作” 群です。
予めお断りしておくと、彼の持ち味は白石さんほど大衆性はありません。
“ハマる人にはハマる”、裏返せば “ハマらない人にはハマらない”、
六角ボルトのような作品です。
読み手の感性がナットであれば、100万ボルトの輝きを放つに違いありません。

 <作品1 『Boys,Be Ambitious!』>

 家路を急ぐ有楽町線。高校生男子の会話に俺はスキトキメキトキス!

 A 「ねぇ?俺って頭良さそう?」
 B 「良さそう?見た目?・・・・悪くはなさそうだけど・・・」
 C 「Dの方が頭よさそうじゃない?」
 D 「俺?Cの方が良さそうだけどBが一番良さそう。って
    Cがバカっぽいってんじゃないよ」

 と “誰が一番頭が良さそうか” という会話で盛り上がる。その時

 E 「っていうか・・・・実際頭良くないと意味なくない?」
 全員 「・・・・・そうだよ!すげーよ!E、お前が一番頭いいよー!」

 多分、こいつら全員頭よくない。
 で、さらに続いて、池袋も近づく。

 A 「ねぇ、カラオケいくでしょ?」
 B 「んーどうしようかなぁ」
 C 「えー?行かないのかよ? なんで行かないんだよ?!」
 B 「別に行かない理由はないよ! でも行く理由もないだろ?!」
 C 「俺だって行く理由はないよ! でも行かない理由もないだろ?!」

 とまたまた禅問答のようなハイレベルな会話。
 その時

 D 「そもそも歌うのに理由なんていらなくねぇ?」
 全員 「・・・・チョーかっこいいー! 何今の?! チョーかっこいいーよ!」
 E 「なんかミスチルっぽくねぇ?!」
 全員 「ぽいぽい!」

 多分、こいつら全員いい子だ。バカだけど。

 *注) ネタではありません。実話です。
      ただ登場人物のABCDEの振り分けはテキトーです。


 <作品2 『みなさん、最近学んでますか?』>

 何かを発見し理解すること。その感嘆のため息こそ
 “学び” の最も美しき瞬間である。(R.キク●)

 姉歯のホントのキモチ☆が知りたくて、家路を急ぐ有楽町線。

 高校生男子の二人組み。赤本『センター試験 英語』を熱心に解いている。
 「あぁ~もうすぐセンター試験かぁ。お前らがんばれよ」とそっと思いやる。
 今宵の俺、なんだかとってもジェントリー。
 ----その瞬間、彼らは発見し理解した!

 A 「・・・なぁ・・・be動詞ってチョー忙しくねぇ?」
 B 「・・・あぁチョー忙しい・・・・」

 ユリイカー!

 長年チョー忙しかったbe動詞もきっと報われただろう。
 でも今年の受験、彼等が報われることはないだろう。

 *実話です


「有楽町線のバカ高校生」ネタは、あと98くらい量産すれば、
書籍化間違いなしの逸品です。

「キク」は現在、生半可なクラシックギター奏者でもあり、
時折、発表会に参加しています。
演者にしか窺い知れない内面を、頼んでもいないのにカミングアウトしてくれます。

 <作品3 『哀しみは六弦の彼方に』>

 撃沈しました。音楽って難しい。

 部屋で二人っきりの時は、いつも優しく指をからめるくせに
 「もっといいギター欲しい」という浮気心がバレたか
 今日はそっけなく俺をあしらうMyギター。

 いい感じで弾きはじめ、ちょっと不安だった所謂キメの部分もクリアーし、
 「よっしゃ!」と思ったのも束の間、続くなんでもないフレーズでつまずく俺!
 「あっ!」------頭は真っ白に

 ・・・・・パトラッシュ、疲れたろう。 僕も疲れたんだ。なんだかとても眠いんだ。・・・・・

 ・・・・ハッ!いかん!」と俺をいざなう天使な小生意気を振り払い、
 音楽に集中!集中!

 練習の賜物か、無意識に動く指のおかげで、音楽は止まらず流れてた。
 冷静になったのも束の間、再び近づく別のキメフレーズ。
 「あっ!」------再び頭は真っ白に

 ・・・・・ラン、ランララ、ランランラン♪ラン、ランラララーン♪・・・・・
 (その者青き衣をまといて金色の野に降り立つべし~)

 「姫様ー!」と呼ばれちゃないが、俺を包むオウムの触手を振り払い、
 我に返って集中集中!

 -----終了

 楽屋に戻って、窓から夕暮れの溝ノ口を見下ろした時、強く思う
 「見ろ!人がゴミのよーだ!」


詩人ですね。
人生放浪詩人、金子光晴の生まれ変わりはおそらく彼でしょう。

意外と長文になってしまったので、このあたりでお暇いただきますが、
万一好評であれば、続編をお届けします。
(キク、勝手にパクってごめん)

ようやく手に入れました、「生協の白石さん」 (講談社刊)。
率直に言って、とてもおもしろい。

(白石さんと私の関係については、
 10月31日にUPした「白石クンの思い出」 をご覧になってください)

もし私に子供がいて、“ユーモアってどういうこと?” と尋ねられたら、
この本を差し出します。

 【ユーモア humor】
 思わず微笑させるような、上品で機知に富んだしゃれ。
 (三省堂「大辞林 第二版」より)

例えば、東京農工大学の学生から寄せられた
ひとことカードへの、こんな回答。

 Q.愛は売っていないのですか・・・?

 A.どうやら、愛は非売品のようです。
   もし、どこかで販売していたとしたら、
   それは何かの罠かと思われます。
   くれぐれもご注意ください。

この本に収録された遣り取りのなかで、“恋愛問答” において、
白石さんの筆鋒はひときわ鋭さを増します。
たいして恋愛経験もないくせに。

 Q.大学生になっても好きな子ができません。
   どうしたら人を好きになれますか?
   人を好きになるってなんなんですか?

 A.生協は決して、このような哲学的な悩みを解き明かせるような
   偉そうな組合ではありませんが、「どうしたら~」や、
   「人を好きになるとは?」など全く意識せずに日々を過ごすことが、
   はじめの一歩だと思いますよ。


 Q.拝啓白石殿
   最近悩んでいるのですが、同じ学科のある女の子が気になって
   しかたありません。
   声をかけたいのですが、自然な話題はどんなものでしょうか。

 A.人生経験の浅い私に妙案が浮かぶはずもなく、
   帰って父に聞いて見た所、悩んだ挙句、
   巨人戦の話題はどうか、と提案していました。
   昭和の男です。

   しかし考えてみると、この掲示板に貼り出してしまうと、
   相手の娘にもう作戦、バレバレですよ。

   恋は駆け引きの内が醍醐味です。
   オリジナルで楽しんでみて下さい。

悔しいほど上手い。
白石クン、成長してるなあ。

山田隆夫が何枚も座布団を運んでくるような、
見事なオオギリ的回答も随所に見られます。

 Q.ロックの三大要素をおしえて下さい。
   ↑200字以内

 A.焼酎・梅酒・ウイスキー。
   200字も使わずに失礼致しました。


 Q.どうすれば、人間は空中で、ジャンプできるのですか? 白石さん。
   二段ジャンプのことです。

 A.工学部の学生さんが解らない物理的な問題を、
   私などが解明する術など知る由もありません。

   当方としてできる事があるとすれば、
   毎週「少年ジャンプ」を読む子が思春期を経て、
   「ヤングジャンプ」も読み始める一現象を、
   人間の成長過程になぞらえ、「二段ジャンプ」であると
   勝手ながらに解釈し、二冊とも毎週品揃えする事のみです。
   組合員証提示で10%OFFです。

“二段ジャンプ” への回答など、営業的観点から採点しても120点です。

悪ふざけとしか思えない質問を繰り出す、
顧客意識ゼロの相手に対しユーモアある回答で切り返し、
スムーズに自社商品をアピールしてしまう、このスキル!
白石さんの営業センスを煎じて飲みたいくらいです。

私がもっとも共感したのは、この “哲学問答” です。

 Q.もういやだ。
   死にたい。

 A.生協という字は「生きる」「協力する」という字を使います。
   だからといって、何がどうだということもございません。
   このように、人間は他人の生死に関し、
   呆れる程、無力で無関心なものです。

   本人にとっては深刻な問題なのに、何だか悔しいじゃないですか。
   生き続けて、見返しましょう!

子供や生徒に同じ問いを投げ掛けられて、
こんな的確なアドバイスができる親や教師は
そういないのではないでしょうか。

この本で惜しむらくは、誠実な人柄を窺わせる、
白石さんの達筆が収録されていないことです。

最後に、白石さんとの思い出が脳内スパークした、
この遣り取りを紹介します。

 Q.内定がもらえません。
   もうすぐ夏休みなのに・・・

 A.この時期、学生さんの頭を悩ます企業の内定、
   大抵はハイテイに良いツモが潜んでいるものです。
   自分の運命を信じましょう。

そうです、一時、白石さんとはよくマージャンを打っていました。

ビリヤード同様、勝負弱かった記憶が残っています。
人間的に良い人ほどギャンブルは下手くそなものです。
私も同じくらいマージャンは下手でしたから。
「生協の白石さん」 をご存知ですか?
(ご存知ない方はリンクをクリックしていただくか、
 検索エンジンで調べてみてください)

もう10年近く昔の話になりますが、私は以前、
早稲田大学の生協で アルバイトをしていました。
そのとき、生協職員として仕事を教えてくれたのが、
若き日の白石さんなのです。

10年の時を経て、インターネット上の「白石さん」ブームを知ったのは、
今年の3月でした。
仲間内で遣り取りしている掲示板のログを辿ると、
3月11日(金)にこんな発言をしています。

“どうやら2005年は「白石様ブーム」のようだ。
 おそらく、「電車男」みたいに書籍になるね。
 オレやろっかな~”


以来、その動向に注目していましたが、
とうとう講談社が書籍化してしまいました。
「電車男」同様、ベストセラー間違いなしでしょう。
本当にやっとけばよかった!

白石さんとの思い出はたくさんありますが、
私が「白石さん」を「白石クン」と 呼ぶようになった
エピソードを披露しましょう。

白石さんと私にはビリヤードという共通の趣味があり、
生協の仕事が終わったあと、
早稲田界隈にあるビリヤード場でよく突いたものです。

ほぼ同じ実力にもかかわらず、天性の勝負弱さの成せるわざか、
ジュース代や場代を掛けたときに限って、
白石さんが必ず負けてしまうのです。

年下のアルバイト相手の敗戦がよほど悔しかったのか、
“この勝負でオレが勝ったら、二度と生協内で「ヘタクソ」とか「ヘタレ」と言うな”
などと、子供のようなことを言うのです。

“いいですよ。その代わり、ボクが勝ったら
「白石クン」と呼んでいいですか?”

言うまでもなく、白石さんはその条件を飲み、
言うまでもなく、敗れたのです。

もし私が書籍化していたなら、
タイトルはもちろん「生協の白石クン」になっていたでしょう。

白石さんの名誉のために、エピソードを1つ加えると、
“仕事に真剣に取り組む姿のカッコよさ” を
私に気づかせてくれたのは、彼が最初でした。

ビリヤードはいまいちでも、優秀な仕事ぶりには定評があり、
私を含めアルバイトからの信頼も抜群でした。

今回のブームは、その人柄が全国的な支持を得るほどの
“ホンマモン” である証拠と言えるでしょう。

いまは疎遠になってしまった知人の、変わらぬ元気な姿に出会えるなんて、
いやあ、ネットって本当にいいもんですね。

初心に帰るに相応しい年始、私のしがない人生に決定的な影響を与えた
2つの言葉を取り上げ、自戒の機会とさせていただきます。

一人目は、詩人の金子光晴(1895-1975)。
高校一年の冬、この詩に出会い、はしかに罹ったように頭に血が上って以来、
いまだ完治していない気もします。


 反対          金子光晴

 僕は少年の頃
 学校に反対だった。
 僕は、いままた
 働くことに反対だ。

 ぼくは第一、健康とか
 正義とかがきらひなのだ。
 健康で正しいほど
 人間を無精にするものはない

 むろん、やまと魂は反対だ
 義理人情もへどが出る。
 いつの政府にも反対であり、
 文壇画壇にも尻を向けてゐる。

 なにしに生まれてきたと問はるれば、
 躊躇なく答えよう。反対しにと。
 ぼくは、東にゐるときは、
 西にゆきたいと思ひ、

 きもの左前、靴は右左、
 袴はうしろ前、馬には尻をむいて乗る。
 人のいやがるものこそ、僕の好物。
 とりわけ嫌ひは、気の揃ふといふことだ。

 僕は信じる。反対こそ、人生で
 唯一つ立派なことだと。
 反対こそ、生きていることだ。
 反対こそ、じぶんをつかむことだ。


私は “働くこと” が大好きなので、この詩の内容を忠実に
実践しているわけではありません。

「反対」が私にもたらした最大の効用は、“常識や定説を疑うクセ” です。
但し、「大学卒業」の意義を疑った所為で大学を除籍になり、
「結婚」の意義を疑った所為で離婚したとも言えるので、
最近は諸刃の剣と自覚しています。

二人目は大西鐵之祐(てつのすけ/1916-1995)。
早稲田大学出身で、日本ラグビー界幾多の栄光を演出した名指導者です。

私が早大ラグビー部に所属していた当時は既に引退されており、
奥様の支えで月に数回、グランド脇のベンチで練習を眺めていた様子を
覚えています。

その当時手にした大西氏の著書『闘争の倫理』に、私の脳みそは
容赦なく攪拌されてしまいました。

 “スポーツは、「ルール」とは別に「フェア」という概念がないと成立しない”
 “「ルール」とは「してはならない」こと。「フェア」とは「すべきではない」こと”
 “「フェア」の判断基準は、「その行為は、人間として美しいか?汚いか?」”

大西氏が本書で訴える「フェアプレイの精神」は、
私のすべての行動における信条となっています。

当時、『闘争の倫理』の得体の知れない影響力に恐れをなした私は、
読了直後、早稲田にある古書店に売ってしまいました。
以来、再読をためらっているため、今回のエントリーでの引用文は
記憶を頼りに再現した代物だとお断りしておきます。

銀座の中央通り、松坂屋の向かい辺りに、

大声で客寄せしているバック販売店があるのを

ご存知ですか?


「本来、ブランドショップで数万円で販売されている商品をっ!
 本日は特別に全品¥5,000!

 次にいつ、このお値段でご提供できるか、わかりませんっ!

 本日、この銀座中央通りを歩いている皆様にっ!
 特別なお値段でご提供できるのもっ!
 本日8時までの大奉仕っ!

 この機会に一度、店内をご覧になっていただきっ!・・・」


エンドレスで大声を吐き出す男性店員の姿を、
“うさんくせえ~” やら “歩行者天国の雰囲気ぶち壊すなよっ” と、
いつも白い目で眺めています。


あるいは、池袋サンシャイン通りにたむろするキャッチセールス。
“お前ら、まともに働けよ!” と説教したい気になります。


ところが、ふとこう思ったりもします。

“客寄せ(=営業)しなければ売れない商品を扱っている点では、
 あいつらとオレは同類だ”


昨年、マスコミに頻繁に取り上げられた「悪徳リフォーム会社」と、
“自分は違う存在だ” と、胸を張って反論できるだろうか?
正直言って、論理的に説明できる言葉を、いまのところ持ち得ていません。


彼らは彼らなりのSTP(セグメンテーション、ターゲティング、

ポジショニング)を確立し、効率的に営業していました。
そのプロセスは、私の営業手法と何ら変わりありません。


“お客さんは納得して買ってくれているはずだ”
こんな情緒的な確信しか、私の心の葛藤を抑える術はないのです。


私は営業という職業が大好きです。
生まれ変わっても営業マンになりたい。

子供たちの “将来なりたい職業” がプロスポーツ選手でもパイロットでもなく、
「営業マン!」になることこそ、私の究極の目標です。


それだけに “まっとうな営業” と “賤しい営業” を
ロジカルに線引きできない自分をもどかしく思います。


残念ながら、私如きでは正解を導くことができませんでした。
営業の神様がいたら、ぜひとも尋ねてみたいテーマです。

eラーニングのメリットとしてしばしば謳われるのはこんな感じか。


「インターネットさえ使えれば、場所、時間を問わず、

 教材一つで何千人、何万人を一気に教育できる」

(引用: 週刊ダイヤモンド 2010年10月23日号 p.159)


“時間を問わ”ないかぎり、“一気に教育できる”わけないだろ!


一見「へりくつ」に見えるこんなツッコミさえ、

既に真理を言い当てているが、そもそもビジネスシーンにおいて、

“場所、時間を問わ”ない状況なんて存在しないから、

「へりくつ」使う必要もない。


◆


ビジネスシーンでのeラーニングの活用を一度でも試みた人なら

とっくに気づいている真理だが、ビジネスeラーニング成功の鍵は、

「eラーニングを真剣に受けてもらう場所と時間をいかに確保するか」、

これに尽きる。


(場所、時間を常に問われる)業務時間を削って、

あるいは業務時間外にもかかわらず、

eラーニングと真剣に向き合ってもらうための

「受講環境の整備」と「受講の必然性向上」。


LMS構築、コンテンツ制作、運用オペレーション設計等、

eラーニング導入プロジェクトのすべてを

環境整備と必然性向上の一環として定めるのが

成功の鍵と知っている人なら、

「eラーニングのメリットは、いつでもどこでも受講できること」なんて

無責任な言葉を絶対口にできない。


◆


「遠隔にいる特定ユーザの情報閲覧状況や情報の理解度を、

 ITを介して管理者が容易に把握できる」


ビジネスにおけるeラーニングの本質はこれがすべて。


これ以外の価値は、他の情報伝達手段で簡単に代替できてしまうし、

このキーファンクションを伴っていない情報伝達手段を

そもそも「eラーニング」と(私は)言わないから、

ビジネスにおけるeラーニングの本質はこれがすべて、と言える。


◆


例えば、受信したメールが開封確認を求めてきたら、

当然拒否するはず。


でもeラーニングなら受講者が情報を見たかどうか、

抵抗感を生じることなく学習履歴を把握できる。


「開封確認」が「学習履歴」に替わっただけで、

この常識がまかり通る奇跡は意外と知られていない。

eラーニング業者でさえ気づいていないし。


◆


eラーニングのキーファンクションがわかれば、

自社におけるeラーニングの用途が明確になってくるはず。

用途のバリエーションは「めしのタネ」なので、ここでは言及しないが。


◆


今日の教訓:

「eラーニングのメリットは、いつでもどこでも受講できること」と言う、

eラーニング業者を選ばないこと。


続・オレは、営業の、神様の、子供(仮)-セグメンテーションのパラダイムシフト
私は以前、シニアマーケット専門のコンサルティング会社に勤めていました。
その4年間、朝から晩までシニアマーケティングを考え抜いた末、
1つの結論に至ったのです。

“基本属性でセグメンテーションを図るマーケティングは、もう通用しない”

“基本属性” 斬りマーケティングが有効な条件として、
セグメントを構成する個々人が同じライフステージにいること
―― これが大前提になります。

考えてみてください。

「家を継ぐ」 「結婚適齢期」 「標準世帯」 「自動昇進」 「終身雇用」
「子孫に美田を残す」・・・ 少なくとも1970年代までは有効だった社会常識が、
いまや完全に崩れています。

例えば「結婚適齢期」。“30前に結婚しなければ!”と強く願う女性は激減し、
晩婚化の流れは留まることを知りません。

但し「晩婚化」とは、婚期が単に遅くなったと言うより、“婚期の幅が広がった” と
解釈するのが正しいでしょう。「結婚観の多様化」に他なりません。

1975年当時、35歳だった女性はおそらく、年上の夫(役職は係長か主任)と暮らし、
結婚9年目ぐらい。
仲人はもちろん夫の上司で、お中元・お歳暮は欠かさず贈っていることでしょう。

2LDKの分譲マンションに住み、8歳と5歳になる2人の子供を育てている、
そんな主婦像が目に浮かびます。

年齢と性別を特定できれば、家族構成、家計状況、ライフスタイル全般を
推測するのが易しい時代だったのです。

翻って2005年、35歳の女性が独身でも、DINKSでも、主婦でも、バツイチでも、
不思議ではない代わりに、35歳ならではのライフステージを1つには
集約できなくなっているのです。
この現象は、M1・F1にも、シニアにも該当します。

では、“基本属性” 斬りマーケティングが通用しない現在、
セグメンテーションの新たな切り口は何にすべきなのでしょうか?

私は、「情報収集力」と「情報発信力」の2軸だと思います。
(コラム上部に掲載した画像をクリックしてみてください)

この切り口でマーケットを見直すと、バナーも、メール広告も、リスティングも、
ブログも、SNSも、あらゆるデジタルコミュニケーションツールを
きれいにマッピングすることが可能になります。
(実は、デジタル以外のあらゆるコミュニケーションツールにも適用できます)

“基本属性よりも情報環境が、IT時代の消費行動を読み解くカギとなる”、
ここでそう断言しておきます。