副業でやっている家庭教師中の出来事。

返却されたテストを見直していた。

俺「じゃあ次の問題をやり直してみよう。


問10 次の日本語と同じ意味になる様に下記の英単語を並び変えよ。

 エミは犬と一緒に走っている。 Emi/running/with/her/is/dog/.」

確かに並び変えは英作文と並んで、英語が苦手な子にとっては難題。

しかし、今日の授業の前半で進行形の基礎はしっかりと復習した。


だから出来るはず。そう思いながら見守っていると

彼は期待通りスラスラ回答を書き上げた。














Emi is her dog.

何だか卑猥な英文に興奮した。
仕事中の出来事。

「i-char君ちょっと。」

と怒りを露にした表情の上司に呼びつけられた。

勤務時間には相変わらず悪い事

(例えば気になったエロ動画のダウンロードしてみたり

 例えば女子高生、靴下、履いたままと言う語で検索してみたり 

 例えば風俗店の割引券をプリントアウトしてみたり)

ばかりしているので、

胃袋がひっくり返った様に気持ちが悪くなった。

「どうしましたか?課長」

生まれたてのヤギの様に小刻みに足を震えさせながら上司の前に立った。

「君は以前にも部長に注意されていたようだが一向に直らないようだね。」

そう言うと課長は一枚の紙を机に叩き付けた。

「すいません。」

以前注意された事と言えばうっかり誤字をした程度。

なんだそんな事かと内心ホッとしつつ取り合えず謝った。

「そろそろ人事異動の季節だな。北の方でも行くか?」

それだけは本当にご勘弁願いたかったので本気で謝った。

「すいません。寒いのは苦手です。」

苦手です。社会人が口にしてはならない言葉の一つ。

この一言が課長の怒りの炎に油を注いだ。

「こんな程度の低いミスをする奴が苦手とか得意とか

希望を口にする資格があるのか!」

激しく机を叩きながら課長は俺を罵倒した。

一体どれほど程度の低いミスをしたのだろうか。

謝る振りをしながら机に置かれた紙に目をやった。

沢山の細かい文字が書かれた表だったが、

誤りは直ぐ見つかった。








 平成19年度新入社員いんらん表


名前  住所  電話番号  配属先





「夢のリストですね。」

笑いを取りに行ったが失敗した。

いつしか気付けば一本のボールペンが俺のふでばこにあった。


そのボールペンには


「東京大学」


の文字。


記憶の糸を手繰り寄せてはみたものの


日本の最高学府を卒業した記憶はないし


ましてや行った記憶すらなかった。


しかし、そんな理由は何時しかどうでもよくなり


ただそのボールペンを持っいるだけで頭が良くなった気がし


誇らしげに思えた。


ある日。


帰宅途中の電車の中でボーっと窓の外を眺めていると


クライアントから依頼されていた新商品のキャッチコピーを


突然思いついた。


忘れる前にメモを取るべく


そのボールペンを取り出した。


そして、手帳を広げペンを走らせ様とするもののインクが出ない。


激しく擦っても、振っても


一向にインクの出る気配はない。


代わりに真っ黒な陰部が出た。


おちんちんびろ~ん。


軽く苛立ちを覚え始めた時、


「良かったらこれ使ってください。」


突然、隣に座っていた24、5のエビちゃん風OLがボールペンを差し出した。


東大ボールペンマジックなのか


突然訪れた美女とのコミュニケーションチャンスに胸が躍った。


このチャンスを逃してなるまい。そう思った俺は急いでメモを取ると


「おかげ様で助かりました。


もしかしたらあなたにとって些細なことかもしれませんが、


僕にとっては大きな助けでした。ぜひこのお礼をさせて


頂きたいので今度食事でも。」


女性の目をまっすぐ見つめ俺は言った。


当然の事ながら、突然の申し出にその女性は驚き


「そんなお礼なんて・・・。」


と断られた。


もちろん断られて当然である。


計算通りである。


この申し出は断られるためにあえてした、


次の要求に対する布石。すなわち心理学用語で言うなら


ドアインザフェイスのテクニックである。


「そうですよね。いきなり食事だなんて失礼でしたよね。


でもここであなたとお話出来たのも何かの縁だと思います。


メールアドレスだけでも教えてもらえませんか?」


再度女性の目をまっすぐ見つめ俺は言った。


「あっはい・・・。」


少し戸惑いつつも彼女はメルアドを教えてくれた。


こんなチャンスに巡り会えたのも


きっと東京大学と記されたこのボールペンの魔力のおかげであろう。


帰宅後早速彼女にメールをすると後日食事に行く約束を取り付けた。



なんて事がこのボールペンを持っていたら起きないかなと


帰宅途中の電車の中、見てと言わんばかりに


一人ボールペンを手に取りくるくる廻しながら妄想していた。


数日経ってもそのボールペンは変わらず俺のお気に入りだった。


誰かに見せびらかせたくてしょうがなかった。


だからピアス代わりに耳に刺してみたり、


お箸代わりに使ってみたり、


携帯代わりにもしもしと言ってみたりしたが、


誰も気づいてくれなかった。



そんな中家庭教師のアルバイトに行った。


そこで俺は閃いた。


自慢する相手はもうこの生徒しかいないと。


きっと中学生の彼ならこれを見たら目を輝かせ、


俺を羨望の眼差しで見るに違いない。そう思った。


俺は颯爽とふでばこからボールペンを取り出し、


生徒に言った。


「すげーだろ!このボールペン。東京大学って書いてあるんだぜ。」


さぁ来い!すげーと言う大袈裟のリアクション。そして欲しがれ!


おもちゃ売場でひっくり返りながら駄々を捏ねる少年のように欲しがれ!


もしくはSEXの最中に愛撫だけでは我慢できなくなり、


「お願い、早く、はやくぅ~~~~!!!」


と懇願するメス豚のように欲しがれ!


でもあげないけどな。


俺はこころの中で呟いた。


しかし、生徒は思いの外、


キラキラ目を輝かせる事も


羨望の眼差しも


すげー!欲しい!の一言もなかった。


当然懇願する訳もなく、


ただただ冷静に一言こう言った。





「それ俺のなんだけど。」




What's happenぬ!




そのボールペンは前回指導に来た時に俺が借りたまま誤って


持ち帰ったものと言う事が判明した。


メス豚のように欲しいと懇願したが断られた。

いつもと変わらない朝の始まり。


サボりたい気持ちでいっぱいになりながら


鉛のように重い体を引き擦り駅へと向かった。


そしていつもと同じ電車にいつもと変わらないホームからいつもと


同じ右足から乗り込んだ。


今日は座れてラッキーだな。


そう思いしばしの眠りに就こうと目を閉じたその瞬間


俺は重大な事に気づいた。


いつもは上着に入っているタバコがない事に。


俺は別にヘビースモーカーではない。


よく吸ったとしても一日数本。


休みの日は一日吸わないこともあるから


例え12時間ニコチンを摂取しなかったとしても


全然平気なはずである。


しかし、人間とは不思議なもので今日一日仕事中に


絶対吸えないと考えた途端


その脅迫観念がニコチン中毒へと一気に追いやる。


タバコくらい買えばいいじゃないか。


そう思うかもしれない。


しかし、俺の職場は山中にあり、徒歩一時間圏内にコンビニも


たばこの自販機もない。


よって忘れてしまったら最後、帰宅するまで入手不可能なのである。


出勤前に吸ったにも関わらず


喉の奥が渇いたような感覚に襲われ


カフェインでも、アドレナリンでも、ドーパミンでも フェノールフタレインでも


お金でも愛でもおっぱいでも満たされない


欲求が体の中で渦巻きだした。


やばい・・・。


このままでは職場で誰かが吸い残したシケモクを


ホームレスのように拾い集め吸うはめになる。


それだけは避けたい。


そう言えば・・・。


禁断症状で混濁する意識の中、一つの妙案を思いついた。


いつも乗換えをする駅には反対側ではあるが、


ホームに売店がある。


乗換えの列車がホームに来るまでにはジャスト1分。


反対側のホームまで直線で約7m。


思い切り助走をつけて天高く舞い上がれば・・・・。


きっと手前4mくらいで線路に転落し、


通過列車に四肢切断されこの世にアディオス。


それをするのはまだ早い。


他に何かよいアイディアは?


一層の事、途中下車し会社を遅刻してしまおうか。


のんびりスターバックスで本日のお勧めコーヒーでも


飲み極上のアロマを堪能してから出社。


悪くない。


でも今日は朝からクライアントとの打ち合わせが・・・。


そんな中遅刻したら会社からアディオスされかねない。


それもまだ早い。


電車の中で一人頭を抱え込む。


しかし、何も思いつかない。


仕方なくただ単純に反対のホームまで思い切り走ることに決めた。


高校時代ラグビーで鍛えたけど、


100mを13秒台でしか走れなかった並みの足。


だが自信はある。


反対のホームまで距離にしておよそ100m。


たばこを買い代金を支払うまでの時間が5秒だとすると


そこまでの往復に掛けられる時間は最大で55秒。


ここ数年全力疾走などしたことないし、


反対のホームまでは階段の上り下りがある。


それでも片道27.5秒以上掛かるとは思えない。


理論上ではパーフェクトだ。行ける!


売店での代金の受け渡しをよりスムーズにする為


予めタバコ代を用意しようとポケットを探る。


出て来たのは飴玉1つと糸クズ2本。


そして一週間は変えていないハンカチ。


これでは買えない。


慌てて財布を開くと、


普段はいない諭吉さんがひとりぼっちの歯ブラシ。


売店のおばちゃんがお釣りを用意するには一体何秒かか


るだろうか?10秒、15秒?すると往復45秒で走らなくて


はならない。先ほどの計算とは大幅に狂いが生じた。


大丈夫か?俺は大腿筋に訪ねると


隣に座ったおじさんに白い目で見られた。


当たり前だ。


プシュー。


扉が開いたと同時に俺の一人オリンピックは開幕した。


走った。走った。走った。


イチローが一塁ベースを駆け抜けるより早く走った。


下った。下った。下った 。


サルモネラ菌にやられたときの俺の腹より早く俺は階段を下った。


上った。上った。上った。


アルピニスト野口健より階段を早く上った。


売店まで約21秒いいペースだ。


「おばちゃんマルボロライト!」俺は叫ぶと同時に諭吉を差し出す。


「毎度。」おばちゃんは俺にマルメンライトを差し出す。


ばか!!!!


俺はメンソールは吸わないぞ。そう思いながらも時間がない。


タバコはタバコ。


ニコチンが補給できればそれでいい。


だからここは我慢。


大きいのまず1、2、3、・・・・・


「ごめんねー千円札ばっかで。」


なんでもいい早くして!!!


「残り細かいの680万円・・・・」


チャリンチャリンチャリン。


おばちゃんはお決まりのボケと共に小銭を床にぶちまけた。


「ごめんねー。まず大きいのが1、2、3、4、・・・。」


さっき確認したよ!


「細かいおつりが700万円。」


増えた!


しかし、喜んでいる場合ではない。


ここまで46秒。残り14秒


間に合うか?


否、間に合うかではなく絶対に間に合わせなければならない。


俺はまたひたすら走った。下った。上った。


大腿筋、大胸筋、括約筋、大腸菌


全ての筋肉を酷使して


最後の一段を上りきったとき・・・。





そこに電車はなかった。


でも俺の心には不思議と充実感が広がった。


そこに一本のアナウンス。


「列車事故の影響で、5分程遅れております。」


頬に自然と熱いモノが伝わった。

深夜0時を周った頃、


携帯が鳴った。


ディスプレイには名前は表示されず、


番号のみが映し出されていた。


こんな時間に一体誰だ?


見知らぬ番号に不審な感じがしたが、


暇だったので取りあえず出てみた。


「もしもーし。」


携帯の向こうから聞こえたのはどこか聞き覚えのある女性の声。


しかし、はっきりと思い出すことは出来なかった。


だから、当たり障りのないよう


「おー。久しぶりー。」


と言ってみた。


すると、女性は


「ちゃんと覚えててくれたんだ。れい嬉しい。」


と少し弾んだ声で言った。


れい?


早速そのキーワードで脳内を検索してみる。


その結果出てきたのは3名。


一人は南斗水鳥拳の使い手。


一人は奇面フラッシュの使い手。


そして最後の一人は半年以上前に先輩が開いてくれた


合コンで知り合った23、4の女の子で骨法の使い手。


きっと前者2人は俺の携帯を知らないはずだし


お友達になった覚えもないので


恐らく正解は3番目であろう。


でもアドレス帳に登録していたはずだが・・・。


まぁそんな事はどうでもいい。


きっと番号を変えたのであろう。


問題は何故こんな時間に電話をしてきたかと言うことだ。


何か相談か?面倒だな。そう思いながら話を聞く。


俺「で、どうしたん?」


れい「れいね。仕事変えたの。」


なぜ仕事を変えたと言う話を深夜にわざわざしてくるのだろうか。


十中八九何かの勧誘であろう。


きな臭いなと思いつつ続きを聞いた。


俺「そうなんだ。今何やってるの?」


れい「んー。デリヘル。」


え!?確かこの子は普通のOLだったはず。


それがいきなりデリヘルデビューだなんて・・・。


一転して妙な興奮を覚えた。


俺「大胆な転職だね。」


れい「そうかな?それでね、今まだあんまり指名とか


   ないから呼んでくれないかなと思って。」


デリヘルと聞いた瞬間からそんな予感はしたが、


悪い気はしない。


知り合いの女の子と突然


あんな事やこんな事が出来ると思ったら


ハァハァハァ。な感じになって来た。


れい「で呼んでくれる?」


もの凄く判断に迷った。彼女は確かに今時のキレイ系の女の子で


推定Fカップ超。さらにはスレンダー。


普段なら即頂きたい感じであるが、なにせタイミングが悪い。


デリヘルって事は家に呼ばなければ行けない訳で、


実家暮らしの俺にとってそれは不可能。


ラブホテルを使うと言う手もあるが


あいにくホテル代まで払える程手持ちが無い。


カードを使えばいいかもしれないが、


後のトラブルを避ける為にもこの手の店では極力使いたくない。


しかし俺の股間は既に天狗の面の様になっていた。


れい「ねぇー。いいじゃん。呼んでよー。20000円で凄いサービスするからー。」


より一層甘い声で俺の煩悩を刺激する。


うーん。


天狗が今にもくしゃみをしそうである。


時計に目をやると時刻は0時10分。


今からラブホまで行って事を終えるまで


推定2時間。眠りに付けるのは早くとも2時半過ぎ。


無理だ。明日も朝早い。


20代も後半になると


性欲<睡眠な訳で、


これが素人相手なら一期一会の精神で赴くが、


相手はもうプロである。逃げはしない。


よって今日は無理と言う結論に至った。

俺「ごめん。今日は無理だわ。明日早いし。でも今度絶対呼ぶよ。」


れい「ほんとにぃ~?でも今日i-charさんとHしたかったなぁ。」


俺「Hしたかったって本番する訳じゃないでしょ?それに有料でしょ?笑」


れい「うん。確かにお金は貰うけど、i-cahrさんとならしてもいいよ。」


シテモイイヨ・・・。


シテモイイヨ・・・。


アイシテルヨ・・・。


なんて甘美な響きだろうか。


そのロイズの生チョコの様に甘い囁きに


俺は理性のコントロールを失った。


気付けば危険を顧みず自宅の住所を告げている


自分がいた。


数十分後・・・


到着を知らせる電話が鳴った。


俺はそっと階段を降り玄関へと向かった。


カチャッ。


必要最小限の物音に抑え俺は扉を開けた。


そして女性の姿を確認すると、


俺は少し待ってと言い扉を閉めた。


・・・。


確かに扉の向こうに立つ女性はれいちゃんだった。


同じようにスレンダー美人のれいちゃんではあったが


半年前の合コンで知り合ったれいちゃんではなかった。


親 友 の 元 カ ノ の 


れいちゃんだった。


1年程前に親友と別れ


親友は連絡もとれないのにも関わらず未だに


引きずっているれいちゃんだった。


俺は動揺した。


親友に直ぐに連絡してあげるべきだろうか。


いや。連絡したところで彼女にとっては迷惑な話。


どうするべきか・・・。


扉にもたれかかり、


目を瞑ると3人仲良く遊んだ楽しい日々が蘇った。


それと同時に親友が言っていた数々の言葉を思い出した。


「俺もう一度会えたら死んでもいいよ。」


「俺ホントこんなに人を好きになったことないわ。」


「俺やっぱり忘れられない。」


「れいって凄くエロくてさ・・・」


「れいのおっぱいマジ最高で・・・」


「れいのアソコってホントに・・・」


いや、ダメだ。そんな事をしたら親友を裏切ること・・・



関 係 な い ね。(by柴田恭兵)



彼女を部屋に招き入れると2時間しっかり楽しんだ。



それから数週間後。



少し離れた山林から


れいちゃんが他殺体で発見された事をテレビのニュースで知った。


犯人は親友だった。


原因は愛する彼女がデリヘルを始めた事を知ってしまったからだろうか。


それともその彼女と俺が寝た事を知ってしまったからだろうか。


もしくは突発的な何かからだろうか。


憶測ばかりが流れるニュースからは彼の真意を知ることが出来なかったが、


その理由が何であれ俺には



関 係 な い ね 。

半年程前、受付嬢としてオフィスにやって来たAさんに


俺は仄かな恋をした。


彼女は誰もが認めるような美人ではなかったし


体系は少しぽっちゃり気味。


いや、正直言ってデブだった。


それでも彼女の見せるほんわかした優しい笑顔が


激務に忙殺される毎日を送る俺にとって


かけがいの無いオアシスだった。


彼女に彼氏がいない事は同僚たちがしていた噂話から知っていたが、


部署の違う俺には挨拶程度しか話す機会はなく


何の行動も起こせない日々が続いた。



しかし、チャンスは突然やって来た。



いつもは電車通勤なのだが、


その日は社外へ出る用事があった為、車で出勤した。


電車通勤者用の駐車スペースは無い為、駐車するには


来客駐車場に止める許可証を受付に貰いに


行かなければならなかった。


申請書に記入し許可証を貰う。


ただそれだけなのにAさんと話せるかもしれない。


そう思うと心弾んだ。


受付に行くと運良く来客の応対を終えたAさんが対応してくれた。


彼女の対応は想像以上に丁寧でより一層好意を抱いた。


せっかくの機会だから何か話さなければ。


そうは思ってみるものの無駄に緊張してしまった俺は


言葉に詰まり必要以上の事を話せなかった。


しかし、


記入した用紙を見ながら彼女の方から話し掛けて来た。


「車種アコードワゴンってありますけど、どんな車なんですか?」


好機到来。


あいさつ程度の会話しかした事が無いのにも関わらず


彼女の方から質問する。


これはきっと俺に興味があるから。


俺に興味があるって事は多分俺の事が気になるから。


俺の事が気になるって事はずばり俺が好きだから。


と言う三段論法が成立する。


よって両思いの確率90%以上。


って事は車繋がりから話を広げて


一気にドライブの誘いをすればきっとうまく行く。


ドライブはどこがいいかな。


うーん。この季節なら伊豆か。伊豆ってことは温泉? 温泉と言えば・・・?


A「i-charさんせっかくここまで来たんだから温泉入っていかない?」


俺「えっ?でも一緒に入るなんてまだ二人は出会ったばかりじゃないか。」


A「もー。i-charさんのエッチ。 だれも一緒に入るなんて言ってないじゃん。


  でもi-charさんとなら一緒に入ってもいいかも。」


俺「一緒に入ったらそれだけじゃすまないぞ?」


A「・・・。うん。」


俺はAを抱き寄せると唇をそっと重ねた。


そして彼女の源泉を探るべく・・・。


とそこまで妄想した所で現実に返ると彼女の質問に答えた。


「アコードってのはホンダの車で・・・。」


そして更に会話を広げるべく


まずは当たり障りのないところで


彼女の乗ってる車について聞いた。


すると彼女はちょっと待ってと言うとポケットから携帯を出し


その待ち受け画面を見せてくれた。


そこに写っていたのはキレイなヴィッツだった。


「かわいいでしょう。先週納車されたばかりなんだ。」


自慢げに言う彼女。


へぇー。そうなんだ。かわいいね。


そう会話を進めようと思った。


しかし、思い留まった。


これでは並みの男と同じである。


例え両思いであろうと


この後のデートを確約させる為にも


より面白い男である事をアピールする事が必須である。


だから俺はボケた。日本刀の様に切れ味するどいボケで。





俺「かわいいね。このポークビッツ!」





決まった。


ヴィッツとポークビッツ。この二つを掛ける事は


資産44億の島田紳助でも無理かもしれない。


きっと彼女も爆笑なはず・・・。




と思ったら爆笑したのは彼女の隣に座る


もう一人の受付嬢だけだった。


一方彼女は


「最低。」


そう言い放ち駐車許可証を俺に投げつけると


席を立ち何処かへ行ってしまった。



WHY?


一体何が起こったか全く判らなかった。


呆然としていると


笑いすぎて涙目になっていたもう一人の受付嬢Bが俺に言った。


「Aさんにポークビッツとかホント最低ですね。」


そこで俺は気付いた。




ポークとAさんも掛かっていたことに・・・。

下駄箱にはなにも無かった。


廊下ですれ違った女子はおはようすら言わなかった。


隣のクラスの乱暴者のせいで


僕だけ扉のないロッカーにもやはり何もなかった。


今年もなしか・・・


判っていても、現実を突きつけられるとやっぱりへこむ。


それでも最後の悪あがきで


教科書を入れる振りをしながらこっそり机の中を探ると


そこにあるはずのない紙の感触が手に伝わった。


まっまさか!


僕はそれを目視する事なく制服のポケットにねじ込むと


トイレへ駆け込んだ。


周りに誰もいないのを確認し、個室に入ると


しわくちゃになった紙をポケットから取り出した。


それは薄いピンク色の封筒だった。


何かの間違いかもしれない。そう思った僕は書かれた


宛名を確認した。


しかし、そこに書かれていたのは紛れも無く僕の名前だった。


興奮で震える手を抑えつつ中に入っていた便箋を広げた。


するとそこには、


「授業後、○×公園に来て下さい。 Y・Y」


と小さな丸文字で書かれていた。


僕はガッツポーズをすると心の中で


「やったぁ!」と叫んだ。


確かにラブレターを貰うのは初めてだったから


それだけでも十分嬉しかった。


だけど、それ以上に喜びを何倍にもしたのが手紙の最後に


書かれた、Y・Yのイニシャルだった。


イニシャルだけだったけどそれが誰なのか僕には直ぐ判った。


Y・Yのイニシャルが当てはまる女子は


クラスにも学年にも一人しかいない。


僕が入学当時から約3年間密かに想い続けた


クラスメートの山崎有美。


彼女だけだ。


スポーツも勉強もまるでダメな僕だが、


一緒に図書委員をやった事のある彼女には


僕の良さが伝わっていたようだ。


嬉し過ぎて目の前が真っ白になった。


それから暫く彼女の書いたかわいい文字を


にやつきながら眺めていた。


気付けば朝の会が始まる直前だった。


慌てて便箋を封筒に戻すと


決して落とすことの内容に制服の内ポケットにしまった。


そして急いでトイレを出ると運悪く隣のクラスの乱暴者に捕まった。


「おい。ウンコマンまてやぁ。」


言われた通り立ち止まると腿の辺りに激痛が走った。


お決まりのローキックだった。


いつもは相手の気が済むまで蹴られっ放しの僕だったが


今日からそうは行かない。もう僕は一人ではない。


情けないままの僕だと彼女が恥をかいてしまう。


だから僕は意を決して言った。やめろよと。


するとローキックは止んだ。


言ってみるもんだ。そう思っていると


代わりに胃が飛び出そうに強烈なボディーブローをくらった。


泣きそうになった。でも込み上げて来たのは優越感だった。


なぜなら、この乱暴者が好きなのも


山崎有美だと噂されていたのを思い出したからだ。


こいつがどれだけ僕を殴ろうとも彼女は僕の物。


そう思うと笑いが止まらなかった。


うつむき笑いを堪えるその姿は


乱暴者には泣いている様に見えたようで


やつは満足気に教室へ帰って行った。



蹴られた腿も殴られたお腹も一日痛みは引かなかったが


3年間続いた冴えない日常も今日で終わり。


そう思うと気分は晴れやかだった。


授業中駄目だとは思いつつも何度も彼女を見つめてしまった。


その視線に気付いたのか彼女は一瞬だけこっちを見ると


恥ずかしそうにうつむいた。


真夏のポケットに入れたチョコレートの様にとろけそうになる


極上の幸せをかみ締めた。


あの柔らかそうな彼女の唇にいつか触れる事が出来るかと


思うと自然と僕の顔はより一層ほころんだ。



授業が終わると一目散に教室を飛び出した。


しかし、安心するのはまだ早かった。


待ち合わせの公園は学校の直ぐ近く。


彼女が到着するまで誰にも気付かれないようにする必要があった。


公園のベンチに腰を掛けると


カバンで顔を隠すようにしながらうつむき彼女を待った。


それから5分、いや10分くらい経っただろうか。


彼女は現れなかった。


きっと彼女なりの心の準備に時間が掛かっているのだろう。


そう思いながら、吹付ける北風に耐え待ち続けていると


代わりにジョーズのテーマの様に僕に恐怖を知らせる


あの乱暴者の不愉快な笑い声が近づいて来るのが聞こえた。


最悪だ。


一瞬で手の平に嫌な汗がじっとりと広がるのを感じた。


お願いだから今日だけは僕に構わないでくれ。


心の中で必死に祈った。


もし山崎有美にチョコを貰っているところをやつに


見つかったら・・・。


想像するだけでも恐ろしい。


嫉妬に狂ったやつは何をしでかすか判らない。


1ヵ月後に迫った卒業式を迎えられない可能性だってある。


だから僕は、


南無阿弥陀仏、何妙法蓮華経、アーメン、アッラー


それが祈りの言葉かどうかも判らなかったが


いろんな神様にお願いした。


すると祈りが通じたのか、


朝殴られた甲斐があったのか、


その笑い声は僕に近づく事なく消えた。


ほっと胸を撫で下ろしていると


背後から誰かが突然僕の肩を叩いた。


山崎有美が来た!


そう喜ぶ間もなく反射的に振り返った。


「待った?」


そう言いながら僕の背後に立っていたのは


山崎有美ではなかった。


むしろ女子でもなかった。


だけどあの乱暴者でもなかった。


同じ学年である事は確かだが殆ど話した事もない


名前は・・・


確か・・・


やまだゆうすk・・・


その瞬間僕は目の前が真っ暗になって行くのを感じた。


そして薄れ行く意識の中で


あの不愉快な笑い声の主が叫ぶのが聞こえた 。


「大成功。」

・・・した。

燦々と輝く太陽の中


男二人一心不乱にした。


元々経験は少なかったが、

屋外でするのは初体験だった。



ザラつく地面が少し不快だった。


日差しは暖かかったが


上着を脱ぐと吹き付ける風が体から


急速に体温を奪った。


やっぱり寒いからやめようと言ってみたが


昂った彼の欲求は止められなかった。


仕方なく始めてみたものの


あまりにも久しぶりだった為か


寒さの為か


コントロールが効かなかった。


何度繰り返しても入らない。


ちゃんと入れないと。


そう思うと焦燥感から棒を握る手がじっとりと汗ばんだ。

金網の向こうに見える気持ちよさように

しているカップルを見ると心底羨ましかった。


積もりに積もったフラストレーションを


解消してくれる相手がいるだけ良かったが、


出来れば俺も女性としたかった。

続けるうちに漸く入った。


安堵と快感が全身を巡る。

どうやら腰の使い方がポイントのようである。

強めに振り、玉にグッと力を込める。


呆れ果てていた彼も

だんだん満足気な顔になってきた。


リズムに乗った俺はスイングを早める。


それに呼応するように相手もより一層激しく

更には声を上げながらピンポイントで攻めて来る。

吸い付くような玉へのタッチは絶妙。


・・・!!!

あまりの美技に言葉を失った。

相手は想像以上に桁違いなテクニックの持主だった。


10歳からこの世界に入ったと言うのも頷ける。


それに比べ俺のは児戯に等しかった。


俺はあまりの格の差に自己嫌悪に陥った。


そんな俺に彼は


「ただ強く振ればいいってもんじゃない。 硬そうに見えても意外とデリケートなんだ。

使い方を間違えると折れちゃう事もあるから気を付けて。腰を使って優しく丁寧に。」

とアドバイスをくれた。


一時間後・・・。


寒さも忘れ汗だくになり、息を切らせながら力尽き果てた。

今までほとんど経験のない俺は


結局最後までうまく行く事ができなかった。

それでも彼はまたしようと言ってくれた。

そんな優しさが嬉しかった。










テニスは奥が深い。

小学校時代の話。

夕暮れ時。

校庭でくたくたになるまで遊んだ俺は門限が近づいていたため

友達とバイバイすると家路を急いだ。

今日の晩御飯はなにかな・・・?

エビフライかなー?ハンバーグかなー?

もしかしてステーキかも!?

そんな想像をしていると自然と足取りは軽くなり

気付けばスキップしていた。

通学路を半分くらい来たところで前を歩く

友達の姿を発見した。

後ろから俺は大きな声で

「おーい!一緒にかえろーぜー!」

と呼びかけた。

しかし、いつもは元気いっぱいのはずの友達なのだが、

その時だけはなんの反応もなかった。

もしかして聞こえなかったのかな?

そう思った俺は駆け足で彼の背後に近づいた。

すると俺は異変に気付いた。

何故か彼の歩幅は妙に狭くて、思い切り内股で歩いていた。

どうやら必死にあれを我慢しているようだった。

何だか声を掛けるのが非常に申し訳ない気持ちになり、

俺は黙って彼の後ろを歩き見守った。

彼はしばらくそのまま小さな歩幅を保ち


ゆっくり、ゆっくり一歩ずつ丁寧に歩いていたが、


彼は突然走り出した。


もの凄いスピードで。

彼の行末を見届けたくて

俺は晩御飯の事も門限の事も忘れ彼を追いかけた。


数百メートル走り、

公園近くまで来ると彼は急に立ち止まった。


公衆トイレに駆け込まなくていいのだろうか?


そう思っていると、

彼は立ち尽くしたまま突然半ズボンの裾を思い切りめくり上げた。

Tバックの如く。

そして





ぽろん




裾から茶色の固体が転がり落ちた。

俺は言葉を失った。

彼は振り返ると俺に満面の笑みで言った。

「セーフ」

いや。絶対パンツにタッチアウト。


そんな超絶イリュージョンを見せた彼に天功とあだ名をつけたら


数日後転校した。


お後がよろしいようで。

19:00:00


今日は金曜日。


普段なら誰かを誘ってご飯を食べに行こうか


それとも飲みに行こうかと


何かと予定を入れたくなるのだが


今の俺はそんな気には一切なれない。


仕事を終えると俺はまるで何かに操られいるかのように


一心不乱にレンタルビデオ屋へ車を走らせた。


週末と言う事もあり店内は盛況で多くの人で溢れ返っていた。


こんなに人が多いと言う事は既に全て貸し出し中かもしれない。


ただDVDを借りに来ているだけなのにも関わらず


そんな不安で胸が押しつぶされそうになる。


頼む!俺の楽しみを奪うような真似だけは止めてくれ。


そう願いながら24の置かれているコーナーへ足を運んだ。


シーズン6は全て貸し出し中だったものの


願いが通じたのかお目当てのシーズン3は


まだ借りられる事なく残っていた。


よかった。これで楽しい週末が過ごせる。


ほっと胸を撫で下ろすと早速1から6巻を手に取りレジへ向かった。


財布から会員カードを取り出すとDVDと一緒に店員に手渡した。


シーズン3では一体どんなスリリングなストーリー展開が


待ち受けているのだろうかともう既に頭の中は24一色であった。


店員がなにか言ってる様な気がしたが


一刻も早くDVDを見たい俺は適当に頷いた。


すると繰り返し店員が


「すいませんお客様。本当にいいんですか。」


と言った。


しつこいな・・・


よく聞いていなかったがきっといつものように


「レンタル期間は1週間でよろしいのでしょうか?」


と聞いたのだと思い


再度適当に頷いた。


その後直ぐにDVDを手渡すかと思いきや


その店員は少し不機嫌になりながら

「お客様のお借りになられるDVDはドラマ24シーズン3・・・」


と確認を始めた。おいおい。ちょっと待ってくれよ。


いつからそんなシステムになったんだ?


今日は健全なアメリカンドラマを借りているから良いものの


今度、脱糞系のAV借りる時に


そんな確認されたら恥ずかしくて借りれないじゃねーか!


人権侵害だ!


と不快感を募らせていると


信じられない言葉を店員が口にした。


「・・・シーズン3 1巻、2巻、3巻、3巻、5巻、6巻


の以上6本になりますがよろしいでしょうか?」


「・・・。よくないです。」


俺は耳の奥まで赤くしながら小声で答えた。


19:59:59