
浜松はアクトシティにて、「トランス」観劇してきた。
「トランス」に関しては抱えているものが大きすぎて、自分の気持ちをどう扱えばいいのかいまだによくわかっていない。
人生最大の挑戦が玉砕に終わったあのときから、すでに3年が経過しようとしている。
過去のブログあさってみたけど、明言はしてないんだよな。差支えがありすぎてはっきり書けない。ただ、私はかつて紅谷礼子のセリフを全部覚えたことがある、ということは書いてもいいかもしれない。舞台でお披露目することはできなかったけど、たしか1か月弱で全部セリフを入れたんじゃなかったかな。いや2週間くらいだったかしら。なにしろ短期間でセリフを入れなくてはいけない状況だった。
あの時から私にとって「トランス」は特別なものになった。その前からそれなりに気になっている作品ではあったけれども、あの時礼子のセリフを入れたことで、特別になったのだ。
彼女の言葉や体験がまるでわがことのように感じられてならなかった。まあ、勝手な思い入れだけどね。
昨日の観劇中、私はきもいオタクの挙動をかましてしまった。
よく映画館などで、何度も見るせいでセリフを覚えてしまって、スクリーンのキャラのセリフを一緒に言うやつはきもいって言われてるけど、まさにあんな感じ。
気づいたら一緒になってセリフを口にしていた。はー。きもい(笑)
2時間、目は舞台に吸い付いたままで、ぶつぶつセリフを口にしていた私はさぞや不気味だっただろうな。もちろん声に出したりはしてないけど、若干挙動不審だったのではなかろうか。
幸いにして私はいちばん端っこで、片方にしか人はいなかった。被害はその人だけかな。
座席は、ぎりぎり1週間前にとったにしては見通しのきく席だった。斜めからではあったけど、さえぎるものなく舞台を見ることができたのはありがたかった。ちょっとあきらめてたからね。
しかし、やはり芝居のサイズと劇場のサイズはあってなかったんじゃないかと思う。
あの芝居に対して、あの大ホールは大きすぎるのだ。舞台上はうまいこと区切ってアクティングエリアを作っていたけれども、いかんせん客席からが遠すぎる。ちなみに私の席からはほぼ表情は見えなかった。ぼんやり顔が見える程度。それはちょっと残念だったが、その分声に集中できたのはよかったかもしれない。伊礼彼方さんの歌声は見事だった。さすがといったところ。
風間俊介さんの立原天皇もみごとだった。ちょっと声の出し方が初代の小須田さんに似てたような気もするけど、立原天皇はああいうふうに演じるのがスタンダードになっているのかな。
声だけしか手がかりがなかったせいかもしれないが、岡本玲さんの礼子先生はちょっと物足りなかった。なんか一人だけ若いような感じがして、だってあの3人は高校の同級生という設定なのに、全然そういう雰囲気が伝わってこなかった。大学を中退して医大に入りなおして医者になってしばらく経っている、という人生の積み重ねも感じられなかったし。
礼子さんは親からの抑圧から自分を見失い、一時期カルトに取り込まれていた過去がある。あるということになっている。勤務先の病院で不倫してて、妊娠したかもしれない状況にある。あるということになっている。そういうことを声から伝えてほしいし、話し方で感じさせてほしかったんだけど、私には伝わってこなかった。見終わった直後はそれが不満だったのだが、だんだん頭が冷えてくるにつれて、いやこれは私の勝手な思い込みかもしれんと思うようになった。
自分がかつて入れ込んでしまったキャラクターであるがゆえに、勝手にそういうものを期待してしまっていただけなのではないかということに気づいたのだ。
あの「トランス」は令和の「トランス」なのだ。だからきっと礼子先生もあれでいいのだろう。
カルトも親の抑圧も学校の理不尽も、たぶんただの説明になってしまっているのだ。
屋上の切なさは、こっちが勝手に脳内補填して感じればいいのだと思う。
最近自分が書く脚本のセリフが、あまりにも日常言語にかたよっているせいか、久しぶりに耳にした「演劇言語」が新鮮だった。ああ、いかにも演劇っぽい言葉選びだなあと楽しくなった。
演劇っぽい言葉を演劇っぽく話す。終盤の現実と妄想が入り混じる展開はきわめて演劇的で、ああそうだこれこそ演劇だ、とぞくぞくした。
浜松で公演してくれてよかった。観ることができてほんとうによかった。
惜しむらくは、ロビーでパンフを手売りしていた鴻上さんを見られなかったこと。いないと思ってたんだよなあ。もうちょっとロビーをうろつけばよかったと激しく後悔している。それだけが心残りだ。
観に行く前は、これで長年の懸案事項にけりがつくかなと思っていたのだが、全然そんなことはなかった。今でも「トランス」は気になる作品だし、演じてみたかったなあという思いはいっそう強くなった。たぶんそんな機会はもう訪れない。だからこそ、永遠にあこがれ続けるんだろうなと思う。