ジャッキー・チェン50周年記念アクション大作「ライド・オン」を観てきた。
50周年なのかあ。すごい。パンフの中にジャッキーの年表があったんだが、「プロジェクトA」までにかなりの出演作があるんだな。
そう、私がジャッキー・チェンを知ったのは「プロジェクトA」であった。
衝撃だったなあ。働き始めて、仕事終わりに映画を観に行くという遊び方を知ったころのことだった。あの時計台から落下するシーンには度肝を抜かれ、何度も観に行ったものだ。同じ映画を何度も観るということを初めてしたのはジャッキー・チェンの映画だった。
とにかくジャッキーのアクションが好きだった。本物の迫力を見せてもらった。
エンディングで流れるNG集も斬新だった。セリフの言い間違いといったような微笑ましいものも時にはあったけれども、アクションシーンのNGは背筋が伸びるような思いがした。
映画の中ではいとも容易くやっているように見えるシーンでも、その後ろにはこれだけの危険が存在しているのだとちゃんと伝えてくれる姿勢が好きだった。
それでもここ何年かはジャッキーの映画を観なくなっていた。
アクションシーンは好きでも、ドラマ部分がしんどいなと思うようになったからだ。
今日観た「ライド・オン」も、ストーリーや根底に流れる価値観はやっぱりちょっと相容れないなあと思うところが多々あった。特に「父と娘」というテーマは引っかかるところが多かった。
まあこれは、私が父親という存在に対して屈折した思いを持っているからかもしれない。
娘のシャオバオに対する態度もよくわからなくて、娘の方もどうしてああいう父親にそんな態度をとるのかよくわからなかった。父と娘ってああいうのがデフォルトなんだろうか。私の中にはない価値観なので、どうしてもフィクションにしか思えない。
まあフィクションではよくある関係性ではある。お互いに愛情を持っているのにうまく表現できなくて、みたいな。
ルオと娘の恋人とのやりとりは、まるで「所有物の争奪戦」みたいな感じがしてちょっといやだったなあ。でもこれは、ジャッキーの映画ではよく見かける価値観ではある。
ジャッキー・チェン演じる落ちぶれたスタントマン、ルオ・ジーロンと馬の赤兎(チートゥ)の絆の物語。このチートゥがいいんだすごく。
犬や猫の物語はよくあるけど、馬はあんまり観たことがない。
このチートゥは本当に人間と心がつながっているように見えるのだ。だから、ルオに心を許してて、甘えたりすねたり、びびったり立ち直ったりという感情の動きが見える気がしてくる。
チートゥに感情移入してしまうのだ。撮影は大変だったみたいだけど。
王道のストーリーで、ある意味ベタな物語なのに、なぜか涙が止まらなくて困った。
ちょっと情緒不安定だったのかもしれない。
人間と馬の愛情物語も泣けるんだけど、それ以上に、ルオという人物設定がいろんなことを想起させるからだったと思う。
ジャッキー・チェンも長年スタントをやってきている。すべてのアクションを自分の肉体を使って表現してきた。だから劇中でルオが語るスタントマン精神の話は、どうしたってジャッキーとだぶって聞こえるのだ。
CGの進化はすばらしいし、技術の進化は必要だと思う。安全な現場は大事だ。スタントマンの命は使い捨てじゃない。
それでも、危険を承知でアクションに挑みたいと思う人間は出てくるんだろうなあと思うし、それを観たいと思う観客もいるのだ。
劇中で、ジャッキーの過去作の映像が流れる。懐かしいシーンばかりだった。
あれで感傷的になってしまったのかもしれないなあ。過ぎ去ったものに対する哀切の情ってやつだ。だから涙が止まらなかったのかもしれない。
今はすべてが懐かしい。