ドラマ「南城宴」 第3集 前編 | 江湖笑 II

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ドラマ「南城宴」

 

第3集 前編

 

 

 

 

 

 

 

<3集 前編>

 

 

 花びらを浮かべた湯に浸かり、貼身宮女の雪茹の賛美に気を良くした蕭蘅は趙沅を待った。

 太皇太后の命令だし、来ないはずはない。期待に胸を膨らませていたら、やっと趙沅が鳳儀殿へやってくる。

「ちょっと待って」

 寝台へ誘う蕭蘅に待ったをかけ、琴と画材を用意させる。

「御泉殿でいつでもきみを思い出せるように、絵を描きたいんだ」

 芝居気たっぷりに趙沅に見つめられ、蕭蘅はその気になってポーズを取る。

 ここからはどちらが眠気に耐えられるか、我慢大会だ。結局睡魔に負けたのは趙沅だった。

「寝顔も素敵!

 蕭蘅は眩しそうに趙沅を見つめる。だが彼の描いた絵は落書きのようだった。

 

 

 鳳儀殿の扉にぴったり耳を付けて会話を盗み聞いていた小強子は、黒装束の女刺客に拉致されて建物の陰へ連れ込まれた。

「だ、誰!?

「太監検査からおまえを救った者だ」

 太医を買収したあの女刺客だ。彼女は紙に包んだ薬を小強子に渡した。

「皇上の飲食物に混ぜろ」

「毒を盛るなんてできないよ!

「毒殺するわけじゃない」

「信じられない!

 女刺客が右腕を見せろと言う。半信半疑の小強子が袖をめくると、腕の内側に赤い線が走っていた。

「まだ初期段階だが、この線が生命線に到達したらおまえの命はない」

 もしかしたらこの女刺客は以前の私を知っているのかもしれない。小強子は訊ねてみたが、彼女は答えなかった。

 

 

 小強子は太医署に怒鳴り込んだ。のぼせただけなどと、なぜ軽い診断をしたのか曲太医に詰め寄る。

「誰が言わせたんだ!?

「晏統領が…」

 言ってしまってから、あわてて口を閉じる。

「わ、私は何も言っていませんよ!

 あの極悪人が!

 小強子はついでに女刺客からもらった薬包を曲太医に投げ渡した。成分を教えろと命じる。

 

 

 薬は毒殺用ではなかった。飲むとやる気がそがれ、体がだるくなって欲望が抑えられるという。

 こんな薬を人の好い趙沅に飲ませられない。が、小強子の命もかかっている。

 小強子は一包だけ溶かした茶を前にして悩む。

 そこへ、おまる洗いに駆り出された劉一刀が内侍省に戻ってきた。止める間もなく、一気に薬入りの茶を飲み干す。

 しばらくして、劉一刀はしくしく泣き始めた。体がダル重くて気力がなくなり、泣きたくないのに涙が出ると訴える。

 奇しくも人体実験してしまった小強子は、この程度の効果なら目をつぶってもらおうと考えた。命には代えられない。

 

 

 趙沅のいる御泉殿へ向かっていた小強子は、橋の上でばったり晏長昀と出くわした。頭を下げてやりすごそうと思ったら腕を広げて通せんぼされ、足を払われる。

 湖に落ちそうになった小強子の腕を晏長昀が掴んだ。のけぞった小強子の上半身は橋の欄干から宙に乗り出した状態だ。

「千羽衛に入るか?

「い、嫌です! 皇上が私を放しませんから!

 晏長昀が掴んでいた手を緩める。落ちそうになって小強子は悲鳴を上げた。

「必ず、必ず皇上に許可をもらって来ます!

「逃げようと思うな」

「思いません、思いません! もう解放してください!

「ほう、そうか」

 晏長昀が手を離した。小強子の体が落下し、派手な水音を立てて湖に落ちた。

「晏長昀、いつか八つ裂きにしてやるー!!

 

 

 同じ頃、太医署にやってきた蕭蘅は、趙沅のために薬を頼んだ。

 最近、体が弱っているようだと話すと、気を利かせた曲太医はいくつもの貴重な丸薬や漢方の薬材を出してきた。

「皇后娘娘、これを煮出した”十全大補湯”を皇上に差し上げれば、間違いなく懐妊いたしますよ」

「私ではなく、皇上のためですから」

「もちろん、皇上のためですから」

 ふたりはにっこり笑った。

 

 

 着替えた小強子はいそいで趙沅のもとへ駆け付けた。趙沅はこれから晏長昀を相手に護身術の稽古がある。

「やっと来たんだ、小強子」

「途中で狂犬に追われて湖に落ちたんですよ」

 準備をしている晏長昀に嫌味を言う。

「皇上、始めましょう」

 晏長昀と趙沅が腰を低くして構えた。容赦なく趙沅が地面に叩きつけられる。何度対戦しても趙沅は負けた。

 その間に小強子は例の薬入りの茶を用意した。息が上がった趙沅には普通の茶を、晏長昀には薬入りの茶を差し出す。

 茶器の縁に白い粉が付いていた。受け取った晏長昀は突然、小強子のあごを掴んで彼女の口に茶を流し込んだ。

「小強子、どうした?

「ゲホゲホ… 皇上、ちょっと厠へ…」

「強公公、お待ちを。この際ですから、強公公にも護身術を学んでいただきましょう」

「おお、それはいいね!

 逃げようとする小強子の服を掴み、晏長昀は投げ飛ばした。

 

 

 小強子にも劉一刀と同様の症状が出た。心配した趙沅が御泉殿へ連れ帰る。小強子は枕を抱えてわんわん泣いた。

「泣かないで、どこが痛いんだい?

「分かんないけど、人生に絶望したような…」

 ちょうどそこへ馮公公が薬湯を運んできた。蕭蘅が作った”十全大補湯”だ。これ幸いと趙沅は小強子に飲ませた。

 小強子の体調に変化が起きた。今度は体が火照って仕方ない。趙沅は寝台に横たわって玉の汗をかく小強子の額に触れる。

 皇帝が薬湯を飲んだと聞いて、蕭蘅がやってきた。彼女は小強子が皇帝をたぶらかしたと思い込み、御泉殿を追い出した。

 

 

 ふらふらと宮中を歩いた小強子は、営房の門をくぐった。偶然、棟から出てきた晏長昀と出会う。

「…男前だぁ、晏統領~!

 ”十全大補湯”で酔っぱらった小強子は晏長昀に抱きついた。

 

 

 

 

 

 

<3集後編に続く>