ドラマ「難尋」 第11集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新予定は
月曜~木曜:ドラマ「南城宴」(前後編)
金曜~土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

ドラマ「難尋」

 

第11集

 

 

 

 

 

 

 

<11>

 

 

 椿婆婆と鳳鳶が見守るなか、赫連曦は右の手のひらを連理樹の幹にぴったりと付けた。手を離すと、手のひらに印が輝いている。

 これは結印と呼ばれ、歴代の少主夫妻が行う連理樹との契約であった。結印した者は連理樹を守るという責務を負い、何がしかの理由で連理樹を守れば、連理樹のほうも守った者を守ると言われている。

 赫連曦に続いて、鳳鳶も幹に触れてみた。印はあらわれない。彼女が部族外の人間だからだろうか。

 後日また試してみることにして、椿婆婆は連理樹の丘から去って行った。

 ところで、霖川には連理樹についての伝承がある。

 大昔、天界の女神が魔族の男と恋に落ちた。到底祝福されるはずもなく、ふたりは霖川の地に隠れ住む。

 そこへ、のちに霖川の民となる人々が迷い込んできた。ふたりは彼らと楽しく暮らしていたのだが、ある日、天帝にその場所がバレてしまった。

 ふたりは罰として二本の大木へと姿を変えられ、以後、霖川の民は神木の連理樹として大切に守っていく。

 ちなみに、霖川の儀式全般を担う椿婆婆は、連理樹が選んだ”神樹之霊”であった。

 

 

 南枝苑へ戻った鳳鳶に、また花娥からの威圧が待っていた。

「どうするつもりか、聞かせてもらえるかしら?

「彼を殺したら、私と侍女のあなたが疑われるわ。どうやってここから逃げるつもり?

「そうね。でも、大殿下はこれ以上待てないわ。三日以内に手を下せなければ、その時は贈り物を差し上げましょう」

 花娥は花を握りつぶした。そしてその花弁を鳳鳶の上から散らす。

「この花びらには”迷情水”を付けているわ。婚礼のお祝いよ」

 いつの間にやったのだろう、花娥は後宮で使われる媚薬を花に塗布していた。

 早く”迷情水”を洗い落さねば。

 だが花嫁は三日間の沐浴を禁じられている。困っていたら、赫連曦がやってきてしまった。手つかずの夕食を見て、どうしたのかと心配する。

「お腹が空いてないだけよ」

「…何だ、このにおいは?

 まずい、”迷情水”のにおいに気付かれたようだ。

 鳳鳶は慌てて話題を変えた。新婚二日目にして、赫連曦が離れに移る話だ。

「知らない土地に来て、いきなり知らない男と寝起きするのは嫌だろう?

 赫連曦なりの配慮だ。鳳鳶はダメもとで沐浴したいと言ってみた。

「しきたりだと分かっているけれど」

「あれは初夜が…」

 赫連曦は言いかけて口をつぐむ。気まずい空気が流れた。

 

 

 鳳鳶のことを思った赫連曦は、彼女を湯殿の案内した。湯につかっているあいだの見張りも買って出る。

 いろいろと気を配ってくれる赫連曦を殺害など出来ない。鳳鳶は短刀を箱に納め、棚の中に仕舞い込んだ。

 

 

 その翌日、棚から短刀が消えていた。捜していたら花娥があらわれ、またもや鳳鳶を急かす。

「三日たったけれど、目途は立ったのかしら?

 花娥は木製の小箱を鳳鳶に渡した。蓋を開けた鳳鳶は、悲鳴を上げて小箱を落とした。

 小箱の中には、鳳鳶の母の指から剥がされた生爪が入っていた。

 花娥は鳳鳶が棚に隠したはずの短刀を出し、彼女に握らせる。

「刃に毒を塗っておいたわ。これをこうすればいいのよ」

 短刀に手を添えた花娥は、そばにあったリンゴに突き立てた。

 

 

 さすがに赫連曦も花娥の言動が怪しいことに気付いた。彼女が原因で、鳳鳶は他の人に心を開かないのかもしれない。

 あと考えられるのは永照の王宮に問題があるのか、ただ単に霖川の生活に慣れていないだけなのか。

 赫連曦は鳳鳶の心が少しでも晴れるように、鶩青に命じてあるものを揃えさせた。画材道具だ。鳳鳶は絵を描くことが得意だと彼は聞いていた。

「私はきみの夫だ。不自由があれば、何でも言って欲しい」

 赫連曦は優しく言葉を添えて、道具を鳳鳶に渡した。

 

 

 その夜、鳳鳶は赫連曦を母屋に泊めた。

「いつもばあやがそばにいて、ひとりで眠ったことがないから心細いの」

「分かった。ゆっくり眠るといい」

 赫連曦は、衝立の向こうの長椅子に横たわる。すぐに安らかな寝息を立てた。

 むくっと起き上がった鳳鳶が短刀を握る。

 私が殺さなければ、両親が殺される。

 鳳鳶は眠っている赫連曦のそばに立った。短刀を持つ手が震える。

 ダメだ、彼を殺せない!

 鳳鳶は寝台に戻った。

 

 

 翌朝、鳳鳶は短刀を近くの竹林に埋めた。

「あの短刀をご存じですか?

 埋める様子を少し離れた場所から窺っていた鶩青は、隣にいる赫連曦に訊ねた。

「護身用だ」

 そう答えるが、赫連曦は短刀が彼を殺害するための凶器であることを知っていた。昨夜の彼は眠ったふりをしていたのだ。

 絶好の機会なのに、なぜ彼女は実行しなかったのか。なぜ毒を塗った短刀を埋めてしまうのだろうか。

 赫連曦は彼女の心の中までは読めなかった。

 

 

 霖川から外部の世界へ、書簡を送ることが出来ると分かった。

 外部との接触を断っている霖川だが、各所に設けられた駅站を経由して送ることは可能だった。

 これで烏韭将軍に知らせることが出来る。

 鳳鳶は顔を見るたびに脅迫してくる花娥に対し、態度を変えた。

「花娥、あなたが嫁に行きたければ相手を見つけてあげるし、金銀財宝が欲しいなら用立ててあげるわ」

「残念ながら、私が望むものは大殿下からしか貰えないわ」

 鳳鳶が殺害を拒絶するなら、赫連曦ひとりの犠牲で済まなくなる、と花娥が脅す。

 とっさに簪を抜いた鳳鳶は、花娥の喉に突きつけた。

「南枝苑の者に手を出さないで!

 

 

 

 

 

 

<12集に続く>