ドラマ「与鳳飛」 第2集 | 江湖笑 II

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ドラマ「与鳳飛」

 

第2集

 

 

 

 

 

 

 

<2>

 

 

「表哥、早く来て」

 こめかみを抑えて頭痛に耐える蒼寒聿に、花嫁姿の白依依が手を伸ばす。蒼寒聿はその手を払いのけた。

「宮女の分際で寝宮に入り込むとは、この無礼者!

「宮女? 寝宮?

 白依依はさっぱり意味が分からなかった。

 

 

 この世界における蒼寒聿は、百鳳国で広く商いを営む蒼家の跡取りだった。父は他界していて、名目上彼が家業を継いでいるが、いっこうに仕事に身が入らない。特に美女には弱かった。

 この頃、蒼寒聿は前世の記憶がなかったのだ。

 ある日、仲人を生業とする紅娘が蒼家へ縁談を持ってきた。紹介された女性を見た蒼寒聿はひと目で気に入り、とんとん拍子に話が進む。そして彼女を正妻として娶った。

 ところが、しばらくすると蒼寒聿は彼女に飽きてしまった。

「不器用で、しかも子を生さないなら、おまえなど必要ない!

 ひどい言葉で彼女を罵倒するまでに至った。

「相公、怒らないで! 子供は私ひとりではできないわ…!

「うるさい!

 蒼寒聿は妻に手を上げた。

 その一方で、彼はいとこの白依依に手を出していた。しかも蒼老夫人を巻き込み、妻に黙って白依依との婚礼を決めてしまった。

 初夜の邪魔をされたくない蒼寒聿は、妻を納屋に監禁する。

 その妻とは、南娰だった。

 

 

 そして白依依との婚礼の夜、蒼寒聿は過去の記憶を取り戻した。今世の自分の所業に嫌悪する。

 まとわりついてくる白依依を振り切って、蒼寒聿は南娰が監禁されている納屋へと急いだ。

 突然性格の変わった蒼寒聿を不思議に思い、白依依は蒼寒聿のあとをつけてみる。

 

 

 侍女の翠児は納屋に夕食を運んだ。食事と言っても、浅い茶碗に少量のご飯と申し訳程度のおかずを盛っただけの代物だ。

 翠児は、埃まみれの卓へ乱暴に茶碗と箸を置いた。南娰が鼻で笑い、茶碗を払い落とす。茶碗の中身が翠児の服にかかってしまった。

「何するのよ!

 南娰に背を向け、翠児が懲罰のための棒を探す。そのあいだに南娰は簪を抜いて手に握った。

 やっと見つけた翠児が棒を振り上げる。

「打ち据えてやる!

 しかし、飛び込んできた蒼寒聿がその腕を掴んで止めた。

「少、少爺…!

 南娰は簪をそっと袖の中に隠した。

 翠児を追い出した蒼寒聿が彼女に駆け寄る。

「娰児、大丈夫か!? 怪我は!?

 突然、南娰が無言で蒼寒聿の頬を張った。

「出て行って」

 怒りのこもった南娰の声音は静かで冷たい。

 南娰は前世までの記憶が無いのか、それとも他人の空似か。蒼寒聿は彼女の衿をはだけた。肩に赤いホクロがある。間違いなく彼の南娰だ。

 南娰が衿を掴む蒼寒聿の手を噛んだ。

「蒼少爺、これからはあなたの言うことなど聞かない。出て行って!

「娰児、私が悪かった。今後はきみに優しくするから…」

 南娰の目の端に、納屋を覗く白依依の姿が映った。白依依は、南娰に献身的な蒼寒聿を目撃して唇を噛んでいる。とたんに南娰は態度を変えた。

「…本当に?

 ふたりを見ていられない白依依が立ち去った。南娰はまた態度を変えた。

「都合のいいことばかり言うな!

 南娰は手にしていた簪で蒼寒聿の首を狙った。

 

 

 

 

 

 

<3集に続く>