ドラマ「難尋」 第1集 | 江湖笑 II

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ドラマ「難尋」

 

第1集

 

 

 

 

 

 

 

<1>

 

 

「赫連曦、生きていたのか! おまえを殺したのは私ではない、鳳鳶だぞ!

 永照国の王座に座る男、鳳垠が叫んだ。彼を追いつめる赫連曦は全身に返り血を浴び、まるで鬼神のようだ。

「鳳鳶?

 怯えた鳳垠がガクガクうなずく。

「死ね!!

 柱の陰から禁衛兵が飛び出してきた。剣を突き出す。

 赫連曦は剣の刃を素手で掴んだ。剣を引き寄せ、兵を殴り飛ばす。兵は柱に激突した。

 殴った拍子に赫連曦の指輪が外れ、転がる。

「…霖川と永照の関係は同盟に変更する! おまえは霖川少主であり、永照国の親王だ!

 赫連曦が鳳垠から離れた。無言で背を向ける。

 次の瞬間、赫連曦はうしろへ剣を投げた。

 腹に剣を受けた鳳垠は、吐血して果てる。

 滅ぼされた霖川族の恨みは生涯忘れん!

 

 

 荒涼とした大地に、奇妙な大木が二本並んでいた。伸びた枝が絡み合い、アーチを作っている。

 大木は霖川族の神木で、連理樹と呼ばれている。残念なことに、緑の葉を茂らせていたかつての姿はもう無い。

 赫連曦は連理樹の根元で膝を付き、涙を流した。

「不肖赫連曦、必ずや犯人の鳳鳶に復讐し、連理樹と部族の復活を果たすことを誓う…!

 

 

 三年の月日が流れた。北陸の朔雲の地で、青々と茂る連理樹を描く女性がいた。

 彼女の名は涼蟾、二日後に朔雲世子、昔旧の妻となる予定だ。

 世子府の皆は涼蟾を早くも世子妃と呼んでいるが、彼女の心に婚礼を挙げるという高揚感が無かった。昔旧には命を救ってもらった恩があり、涼蟾はその恩を返すため、彼の求婚に応じたのだった。

 実際、昔旧は涼蟾に何くれとなく尽くしてくれる。今日も彼女の貧血を緩和するため、鹿を狩ってきた。尚且つそのあいだをぬって、自身で選んだ生地の婚礼衣装を贈ってくる。これで三着目だ。

 三年前、涼蟾は山中の河で溺れているところを昔旧に助けられた。しかしそれ以前の記憶が彼女には無く、昔旧が言う幼ない頃からの婚約者だったという言葉に疑問を持っている。

 その理由のひとつが、涼蟾の耳飾りの穴だ。

 朔雲では、故意に自分の身体を傷付けてはならないという風習がある。耳飾りのための穴などもってのほかだ。だから、彼女はきっと朔雲族ではないのだろう。

 

 

 涼蟾は自信の出自を知るため、絵を描き続けている。夢で何度もあらわれる大木の絵だ。

 連理樹というのだが、彼女はそれを知らない。だがこの一風変わった大木を知る者を捜し、話すことが出来れば、出自が分かるのではないかと考えた。

 涼蟾は侍女の東籬を介して露天商に絵の販売を頼んでいるが、今のところ良い情報は得られていない。ただ、今夜は灯会の日だ。街じゅうがランタンで飾られ、外部から遊びに来る人や商人もやってくる。大木について知る者がいないとも限らない。

 ところが、涼蟾は外出を禁じられていた。朔雲では婚礼三日前から花嫁の外出を禁忌としているのだ。

 晩になって月食が近づく空を見上げていた涼蟾は、いつの間にか眠りに落ちていた。大木の夢を見て、舞い落ちる緑の葉に手を伸ばす。葉は、彼女の手に触れる寸前で消えてしまった。

「慌てなさるな。手中に納まるべき葉は、必ず落ちてくる」

 老人の声を聞いて、涼蟾ははっと目を覚ました。

 もしも今夜、大木を知る者があらわれなければ、記憶のことはすっぱり諦めよう。

 涼蟾はそう決心した。

 

 

 顔を薄い面紗で隠し、涼蟾はひとりで街へ出た。

 世話になっている露天商に声を掛け、絵に目を留めた者がいるかどうか訊ねる。すると、数人が興味を示したと返ってきた。

 涼蟾は閉店の時間を少しばかり延ばしてもらい、露店を離れた。

 

 

 先刻から尾行の気配を感じる。

 背後に気を付けながら、涼蟾は広場に出た。前方に立つ男が彼女を睨んでいる。連理樹と霖川族の仇を捜す赫連曦だ。

 不意に広場の上空のランタンが破裂し、紙吹雪が舞った。成語が書かれた赤い紙が大量に落ちてきて、人々はそれを拾うために殺到する。

 騒ぎが一段落して、赫連曦は涼蟾の姿を探した。

 いない。撒かれた。

 

 

 涼蟾を追っているのは赫連曦だけではなかった。仮面を着けた男とその部下もいたのである。

 涼蟾はひと気のない路地に誘い込まれた。

「面紗を取って、公主かどうか確かめろ。公主でなければ、好きにしていい」

 仮面の男が顔に傷のある男に命じた。

 男が涼蟾に迫った。転んだ彼女の面紗に男の手が伸びる。

 昔旧!!

 突然、疾風が起こり、男が宙吊りになった。男の首を掴んでいるのは広場で彼女を睨んでいた男、赫連曦だ。

 赫連曦は男の首を捻って投げ捨てた。

 まずいと思ったのか、仮面の男が逃げる。赫連曦は男を追わず、しゃがんで涼蟾の面紗を取った。

 月食が終わり、涼蟾の顔が月明かりに照らされる。

「やはりおまえか! 言え、連理枝はどこにある!

 連理枝?

 いきなり憎悪をぶつけられた涼蟾は、恐る恐る訊き返した。

「何を言っているのか分からないわ。あなたは誰?

 逃げようとする涼蟾の腕を赫連曦が掴む。

「涼蟾を放せ!

 その時、昔旧と雲衛を従えた阿笙が駆けてくるのが見えた。涼蟾が部屋にいないことを知って、捜していたのだ。

「貴様は誰だ!?

「世子とも知らず、私の妻に手を出すとは不届き者め!

 二刀流の昔旧が赫連曦に向かって行く。が、赫連曦の素早さに追いつけない。

「昔旧、危ない!

 赫連曦が剣を突き出した。とっさに涼蟾があいだに入る。切っ先がすんでの位置で止まった。

「彼を傷つけないで!

 次の瞬間、剣の切っ先が涼蟾の右肩を深く突いた。

「涼蟾!!

 

 

 

 

 

 

<2集に続く>