ドラマ「寵妃凰図」
第18集
<第18集>
今日は太后の誕生日を祝う宴が開かれる。男装を用意する蒼雲澤に、南娰は女装でいいと言う。
「だからって、喜ぶのは早いわ。秦娰は架空の人物だから、皇后にはなれないのよ」
「主子に”軟筋散”を使うなんて、陛下は何を考えておられるのでしょうね」
寝宮で南娰の準備を手伝う素衣は口を尖らせた。
「陛下は秦府に太監をやって、主子を鸞妃に封じる聖旨を読み上げさせたそうですよ」
素衣は、女性の姿で祝宴に出席するのかと訊ねた。
「出なければ出なかったで文句を言われるし、ね」
それならいっそ好きにやってやる、と半ばやけっぱちになる南娰だった。
祝宴にあらわれた蒼寒聿と南娰の姿を見て、誰もがあ然とした。蒼寒聿は南娰を抱き上げて入って来たのである。
蒼寒聿は太后の前で南娰を下ろし、挨拶した。
「私を母と思っておられるなら、ひと言言わせてもらいます」
太后は、庶子の秦娰よりも嫡子の秦静姝のほうが皇后にふさわしいと苦言を呈した。
皇后の並びには秦夫人と秦静姝が座っている。秦静姝が口を開いた。
「心を尽くして陛下にお仕え致します」
「そなたたちは朕の行動にケチをつけるつもりか?」
「ま、まさか…」
彼らを無視して蒼寒聿は王座に座る。そして南娰を膝の上に乗せた。
「皇上、あの方たちは私に不満があるようですわ」
「おや、娰児は機嫌を損ねたかな?」
「いいえ。あの方たちは娰児が楽しむ様子が気に食わないのです」
太后と秦母娘がむっとする。それを向かい側で見ていた鳳姉妹が、男尊女卑の武国の皇后に相応しくない女性だと南娰のことを嘲った。
蒼寒聿の怒気が伝わってくる。南娰は腕を掴んで彼の衝動を止めた。
「秦静姝は容姿端麗だから、陸明淵公子に嫁がせるのはいかがかしら? 皇上の賜婚よ」
「それはいい考えだ」
「陛下、静姝には離王との賜婚が…!」
秦夫人が悲鳴に近い声を上げる。だが蒼寒聿は容赦しなかった。
「離王よりも雅正端方な陸明淵のほうがふさわしいだろう」
「秦娰、静姝はあなたの姉なのよ!」
「秦夫人、いみじくも皇室の親戚であるあなたが陛下の前で無礼を働くのですか?」
南娰が指摘する。
「陛下、そちらの鸞妃娘娘はずいぶん気ままにふるまわれるのですね」
姉の鳳鄔雅がなおも南娰を攻撃した。
「鄔雅公主は武国のしきたりに興味がおありのようね」
「浣衣局で人手が足らないらしい。そちらを手伝ってもらおう。どうかな、娰児?」
浣衣局は宮中の洗濯場だ。蒼寒聿は鳳鄔雅を連行するよう、禁衛軍に命じた。
「反抗するなら藍月国を滅ぼしてやる! …ほかに意見はあるか?」
全員が黙り込んだ。
<第19集に続く>