ドラマ「寵妃凰図」
第17集
<第17集>
蒼寒聿は、南娰が離れていくことを恐れて彼女に”軟筋散”を盛ったと白状した。
「娰児、そばに居てほしいだけなのに、何故そう頑なに拒むのだ!?」
だんだん蒼寒聿の苛立ちが高じてくる。
「陛下、立后に関する卜占の結果はご存じでしょう?」
東華が示した名は”鸞”だ。南娰の名はかすりもしていない。
それでも蒼寒聿は諦めなかった。オロオロとふたりを見守る容楚修に、立后の聖旨を代筆せよと命じる。
「秦家四小姐の秦娰は、鸞妃として明日から未央宮に移る!」
「ご勝手にどうぞ! 私は南相府に帰ります!」
「寝宮を一歩でも出たら、後悔するぞ!」
文机の上の宝剣をすらっと抜いた蒼寒聿は、その刃を自分の首に向ける。とっさに南娰は刃を掴んで止めた。
「皇上!!」
南娰の手から血がしたたり落ちる。
「同情を買おうとしても無駄です!」
「ならば、南相府の者たちがどうなってもかまわないのだな!」
蒼寒聿はなりふり構わず南娰を脅す。思わず南娰は彼の頬を打った。
「陛下、私がお側にいられないことはよくお分かりでしょう?」
太后の祝宴に出席するため、”鸞”の名を持つ藍月国公主が武国に来る。彼女が東華の示す未来の皇后なのだ。
「朕の皇后はきみだけだ! 聖旨を!」
「ダメです!」
あいだに挟まれた容楚修は、誰か助けてくれと心の中で叫んだ。
祝宴への出席を許され、蒼雲澤は久しぶりに鳳栖宮で母と面会した。
「あの秦娰が皇帝の間諜だったとは」
南娰が武器庫の地図を燃やしたせいで、太后一派は近隣国の協力を得られなくなってしまった。
「蒼寒聿暗殺未遂事件も、我らを陥れるための芝居ではありませんか?」
潮目が変わるまで生還していたほうがいいと蒼雲澤は言う。大長公主が生きている限り、皇帝がこちらに手を出してくることは無さそうだ。
皇帝の許可を得る前に、藍月国の公主ふたりが入京した。容楚修は京城に宿を取るふたりと茶館で懇談する。
「武国に来て二日、いつになったら皇上との面会が叶うのかしら」
「時期が来ましたら」
「だから、それがいつなのかと訊いているのよ!」
妹の鳳鸞月が問いただす。彼女が”鸞”の字を名前に持つ皇后候補だ。
急いで立ち上がった姉の鳳鄔雅が容楚修に頭を下げ、妹の無礼を詫びた。それなのに鳳鸞月はいっこうに口を慎む気配が無い。
「武国にはふたりの丞相がいるって聞いたわ。右相大人は”男寵”なんですって? 恥知らずだわ」
「小妹、黙っていなさい!」
容楚修の顔色をひやひやしながら窺っていた鳳鄔雅が妹の頬を叩いた。
「申し訳ございません」
「細かいことは申しませんが、南相に対する侮辱は慎まれたほうがよろしいですね。皇上は絶対にお許しになりませんから」
「では、私たちはこれで」
妹がこれ以上無礼な口をきかないよう、鳳鄔雅はそそくさと彼女を連れて茶館を出て行った。
二階の窓から容楚修が通りを見下ろす。通りに出てきた鳳鄔雅が妹を叱り飛ばすところが見えた。
怒った鳳鄔雅が妹を置いて宿へ帰って行く。
「大公主は酷いわ! 祝宴に連れて行かないなんて、皇上にも会わせないつもりかしら!」
鳳鸞月の侍女が主人の肩を持った。
「いいのよ、わざとだから」
宮中で姉と一蓮托生になるのは嫌だからちょうどいいと、鳳鸞月は口をへの字に曲げて言う。
<第18集に続く>