ドラマ「青雀成凰」
第26集
<第26集> 血色婚礼
招待された客の待つ大廰に、青雀を伴った慕王が入ってきた。
慕王は宴の招待客に向け、恫喝にも似た言葉を投げる。
「私が寝込んでいるあいだに宗旨替えをした者がいる。私は彼らと忌酒を飲もう!」
慕王が酒を床に撒き、招待客は立ち上がって祝いの言葉を述べて酒を飲み干す。
それが済むと、慕王は淮王の話を始めた。いかに淮王と親しかったか、淮王が亡くなったあと少女の青雀を引き取り、育て上げたことなどを語る。
となりで聞いている青雀は密かに拳を震わせ、笑顔で耐えた。
「その青雀がここにいる鵲児だ。彼女を娶ることに異議のある者は!?」
慕王からこう訊かれて異議を唱えられる者はいない。全員頭を下げて追従した。
「義父、そろそろ開宴の時間です」
うしろから趙力士が声を掛けた。
「慕王府の娘婿が帰ってきてからでもよかろう」
慕王はどうしても雲煥に婚礼を見せつけたいのだ。どうかな、と水を向けられた青雀は、仰せのままにと返した。
大廰を離れた青雀は、門のそばで厳詢蒼とすれ違った。
見張りを兼ねた侍女たちに悟られぬよう、挨拶を交わすふりをして書き付けを彼に渡す。
居室に戻った青雀が願うのは、ただ雲煥の無事だった。
そう、彼女は記憶を失ってはいなかったのだ。
明日はもう婚礼だ。雲煥が事を起こすなら今夜に違いない。慕王はきっと手ぐすね引いて待っているだろう。
しかし青雀の願いもむなしく、夜陰に紛れて雲煥は彼女の居室へ忍び込んできた。
「一緒にここから逃げるんだ!」
雲煥が青雀の手を引いて廊下へ向かう。
その目の前で、居室の扉が開いた。剣を握った慕王が立っている。
「もう遅い!」
慕王が剣を構えた。青雀は雲煥を庇い、両手を広げて前に出る。
彼女を押しのけ、雲煥が暗器を放った。慕王の左腕に刺さる。
だが、軍配は慕王に挙がった。慕王は青雀を人質に取った。
「おまえが求めている玉佩を持ってきた。青雀を放せ!」
「ダメよ! あれを渡してしまっては、すべてが水の泡よ!」
「きみと約束したから」
以前、行き違いがあって青雀は長いあいだ彼を恨んだ。雲煥は、今度こそは彼女を連れて慕王府から脱出するつもりだった。
不敵な笑みを浮かべた慕王が、剣の刃で青雀のあごを押し上げた。
「やはり記憶を喪失していなかったのだな。雲煥、教えてやる。おまえの子は流れたぞ」
雲煥が驚いて青雀を見る。
「…玉佩を持ってきた。青雀を返せ!」
雲煥が、帯に挟んでいた玉佩をあさっての方向に投げた。慕王が飛びつく。そのあいだに雲煥は青雀を引き寄せた。
突然、室内の三人は強烈な眠気を催した。次々に倒れて眠り込む。
厳詢蒼と青澄が居室に入ってきた。このふたりが催眠効果のある煙を室内に吹き入れたのだ。
ふたりはうなずき、行動を起こした。
<第27集に続く>