ドラマ「我才不要当王妃」 第18集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新予定は
月曜~木曜:ドラマ「南城宴」(前後編)
土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

ドラマ「我才不要当王妃」

 

第18集

 

 

 

 

 

 

 

<18>

 

 

 枝に黒装束の男がしがみついている。彼は日暮れを待っていた。

 不意に肩を叩かれて、驚いた男は枝から転落した。

 男に手を貸して立たせたのは孟義である。孟義は笑みをたたえながら訊ねる。

「得物は?

「オレは徒手が得意だ」

「いや、あったほうが迫力が増す」

 孟義はひと振りの剣を男に渡した。

 

 

 湖畔に煌々と焚き火が輝いている。崇六たち四人は焚き火を囲んで談笑した。

 そこへ、孟義から剣を受け取った男が踊り出てくる。彼ははるかに遠い位置から、剣を横一線薙いだ。

 あっと悲鳴を上げて、崇六と王瑞秋が仰向けに倒れた。

「オレ、こんなに凄い使い手だったか…?

 男は驚きつつ、立ち上がった黄文吉に剣を突きつけた。黄文吉は難なく男の腕を捻り上げる。

「台本を読んでないのか?

 棒立ちになっている文靚靚に聞こえないよう、黄文吉は小声で訊いた。

「台本?

「まぁいい。靚靚が私を殺すように仕向けるんだ」

 黄文吉が男を突き放した。

「世子を殺せ!

 男が再び黄文吉に剣を向け、文靚靚に叫ぶ。ためらった挙句、文靚靚は逃げ出した。

「何やってるんだよ!

 黄文吉が男の背後に回って剣を突きつけ、手本を見せる。

「こうだよ! 早く靚靚を追え!

 黄文吉に急かされた男が走っていく。黄文吉も彼に続いた。

 

 

 芝居は順調に進んでいるようだ。念のため、崇六と王瑞秋は倒れたまま待つ。

 孟義はというと、木にもたれてシダの葉で成功を占った。

 そこへ、別の黒衣の男が息を切らせて駆けてきた。

「す、すいません! いろいろ問題が起こって遅れてしまいました!

 この男が教坊司の役者だと? では、孟義が剣を渡した相手は誰だ。もしかして本物の刺客だったのか。

 まずい!

 孟義はあわてて崇六のもとへ走った。泣きながら崇六の体を揺さぶる。

「王爺、王爺、申し訳ありません! 私が王爺を殺したも同然です! 目を開けてください、王爺!!

 切迫した孟義の声を聞いて、崇六と王瑞秋が起き上がった。死人が生き返ったと思った役者が卒倒する。

「ああ、生きておいでてしたか! 刺客と役者を間違えてしまいました!

 

 

 ひとり夜の山道を歩く文靚靚は、暗殺組織が放った刺客の男に襲われた。短剣で闘うも、絡めとられてしまう。

「おまえのその手で世子を殺めるのだ!

 その時、人の気配に気づいた男が文靚靚を人質に取った。彼女の後方には黄文吉が立っている。

「靚靚、そいつの言うことを聞くんだ。きみに殺されても、私の愛は変わらない。きみの苦しむ姿は見たくない。そのためなら、私はすべてを捧げるよ」

 さあ、と黄文吉は両手を広げた。男から剣を受け取った文靚靚が切っ先を黄文吉に向ける。

「…本当に、私を恨まない?

「もちろんだ」

「けれど…」

 文靚靚の躊躇を見た黄文吉が動いた。彼女に近づき、剣の切っ先を胸元に受ける。

「悲しまないで、私が望んだことなんだから… きみは生き延びてくれ」

 文靚靚の目から涙がこぼれた。黄文吉が膝をつく。

「靚靚、来世は…来世は夫婦になってくれるかな…?

 黄文吉は切った髪を差し出した。夫婦の証として、お互いの切った髪を結ぶ結髪だ。

 しかし文靚靚がその髪を受け取る前に、彼は地面に倒れた。

 ねぎらうように男が文靚靚の肩をぽんぽんと叩く。

「帰って褒美をもらえ」

 目に涙を溜めた文靚靚が男を睨んだ。

 

 

 崇六たちが駆け付けた時、文靚靚は黄文吉を膝に抱いて号泣していた。そばに死んだ黒衣の男が転がっている。

 三人は足がすくんで近づけなかった。

「目を開けて、黄文吉! あなたと結婚するわ…!

 不意に、文靚靚の視界に入らないところで黄文吉の手が動いた。しっしっと追い払う仕草を見せる。

 黄文吉は生きていた。三人はほっと胸をなでおろす。

 多分、刺客は文靚靚が殺したのだろう。とうとう彼女は組織を裏切ったのだ。

「で、表妹にどう説明するつもり?

 

 

「説明など必要ないよ!

 黄文吉は自信満々に崇六と王瑞秋に言い放った。彼の頬には文靚靚から平手打ちされた痕が残っている。

 すでにこの時には、彼は文靚靚が刺客であることに気づいていた。

 今回の計画の内容を語った黄文吉は、崇六にひと振りの剣を渡した。折りたたみ式の剣で、これで突かれても傷を負うことは無い。孟義から刺客の手に渡った剣は、この玩具の剣だったのだ。

「ところで、その首はどうしたんだ?

 黄文吉にはビンタの痕のほか、首にうっ血が残っていた。

「愛の証だよ、羨ましいだろ? きみたちは偽物夫婦だけどな」

 本当に愛の証なのか怪しい。

 崇六は、母にだけは黙っていてくれと頼んだ。

「ま、自分の心に正直になったほうがいいよ」

 べぇと舌を出した黄文吉は、玩具の剣を向けてくる崇六から逃げた。

 ところで、文靚靚の問題が解決したら、あとは暗殺組織の黒幕を探る仕事が待っている。それも終われば、王瑞秋は崇王府を去ることになるのだろうか。

「…その前に、母上の五十歳を祝う宴の準備がある」

 崇六は王瑞秋の手を握った。

「そうだろう、私の王妃?

 手を握り返した王瑞秋は、彼に微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

<19集に続く>