ドラマ「我才不要当王妃」 第15集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新予定は
月曜~木曜:ドラマ「南城宴」(前後編)
土曜:短劇「玉奴嬌」(各1集)

ドラマ「我才不要当王妃」

 

第15集

 

 

 

 

 

 

 

<15>

 

 

 殺されかけて何だが、王瑞秋は文靚靚が悪い人物には見えなかった。

 刺客を生業にしていて暗殺組織の一員ではあるが、幼い頃に両親と死別して冬の路上で凍え、やむなく裏の道へ入ったのかもしれない。

 王瑞秋の想像に過ぎないが。

「だからね、表妹にも人並みに恋愛する権利はあると思うの」

「だが、彼女は殺し屋だ」

 崇王府を守ってきた崇六としては、いつ刃が飛んでくるか分からないような状況は容認し難い。兄弟のようにして育った邪魔臭いヤツの命を危険に晒すわけにいかないのだ。

 崇六は徹底して、ふたりをくっつけるという王瑞秋の提案に反対した。

「いいか、殺し屋の表妹が黄文吉の心に感化されて真っ当な人間になるなどあり得ない話だ!

 崇六からなぜ感化できると言い切れるのか、と問われた王瑞秋は言葉に詰まる。

 彼女だとて自信があるわけではない。ただ、自身と重なる部分が多かった。

 崇王府に来て以来、王瑞秋は心が揺さぶられるとはどういうことか、恋しく思うとはどういう意味なのかを知った。崇六も同じだ。気づいていないかもしれないが、間違いなく彼も変化している。あの冷血漢にぬくもりを感じられるようになったのだから。

 だから、文靚靚に関してもあり得ない話ではないはずだ。

「何故だと訊いている!

「そ、それは、あんたと私が…」

 王瑞秋は恥ずかしそうに両の親指をクイクイと曲げて見せた。

「言っておくが、私たちの結婚は偽物だ。私たちの目的は暗殺組織を裏で操る黒幕を探り出すことだぞ。忘れるな」

 

 

 ところが、崇六にとって思いがけない出来事が発生する。なんと、文靚靚が黄文吉に感化されたようなのだ。

 黄文吉の猛烈な求愛のおかげだろうか。あまりの展開の速さに王瑞秋も驚いた。

 ふたりは仲良く歩きながら攻撃と防御を繰り返す。時々、文靚靚の眼力が獲物を狩る刺客の目になってはいるが。

 崇六、王瑞秋、黄文吉、文靚靚の四人は、晩になって集まった。その席で、黄文吉は文靚靚が結婚を承諾したことを話した。

 王瑞秋が祝福の杯を揚げる。

「白頭偕老と永結同心を願って」

「表姐、祝福をありがとう」

「私たちは当然、白頭偕老、永結同心だよ。ね、靚靚」

「ええ、吉吉」

 黄文吉と文靚靚が仲良く杯を交わす。しかし崇六はまだ文靚靚を疑っていた。

「六六、私たちに嫉妬しないでくれ。それにしても、六六の目には妻に対する愛の炎が見えないなぁ」

「何だ、その炎とは」

「見せてやろうか?

 となりに座る文靚靚に黄文吉が顔を近づける。しかし、ふと気付いて彼は崇六のほうを見た。

「そっちがさきに見せるべきじゃないか? もう夫婦なんだし」

 言われた崇六は、無表情で王瑞秋を引き寄せると軽く接吻した。

「おまえたちの番だ」

 なんと感情のこもっていない口づけなのか。

 崇六の態度に怒った王瑞秋が席を立つ。しかし崇六は彼女を追わなかった。

 では、と言わんばかりに、黄文吉が再び文靚靚に顔を近づける。それまでじっとふたりを見ていた崇六が、ふい、と横を向いた。

 目をぎゅっと閉じて待っていた文靚靚が、無理と叫んで黄文吉の頬を叩いた。彼女も飛び出して行く。

「ほら、見たか? 見てない? …待って、靚靚!!

 叩かれた頬を押さえながら、黄文吉が文靚靚を追いかける。ひとりになった崇六は、自棄になって杯を重ねた。

 

 

 崇王府の門が開いた。隙間から王瑞秋が出てくる。

 涙をぬぐった彼女は、暗くなった街へと消えた。

 

 

 

 

 

 

<16集に続く>