ドラマ「青雀成凰」
第22集
<第22集> 為敵、対你我最安全
趙力士の監視に気付いた青雀は、とっさに慕王の令牌を出した。雲煥に渡しつつ、指や視線で危険を知らせる。
雲煥が青雀から離れると、趙力士の姿も消えた。
おかしい。趙力士が慕王府に戻ると同時に、私兵営で騒動が起きた。目覚めた慕王が裏で糸を引いているのかもしれない。
まずい、雲煥の身が危ない。
雲煥と軍師のあとを尾行した趙力士は、とある屋敷で密かに訓練する兵士を目撃した。
急いでとって返し、慕王に報告する。
「すぐに督察司に通報しましょう!」
「いや、もう必要ない」
すでに鵲夫人が通報したあとだと慕王は言う。
実は青雀は先回りをしていたのだ。彼女は私兵営の門の前にわざと簪を落とし、その足で督察司へ通報した。そして昏睡のふりを続ける慕王の枕元へ行き、雲煥の反逆と督察司への通報を報告、加えて早く目を覚ましてほしいと甘い声で訴えたのである。
簪を拾った雲煥と軍師は、無事に慕王府に戻ってきた。
「いったい誰が何のために?」
「私を将軍の座から引きずり降ろしたい者の仕業だろう」
趙力士の姿が目の端に映る。雲煥は声を大きくした。
「鵲夫人を叱ってやらねばならん!」
青雀の居室へ行った雲煥は口論を始めた。
激高した雲煥が手を上げる。ぱしっと叩く音と青雀の悲鳴が王府内に響いた。
趙力士の報告を受けていた慕王は悲鳴を聞き、雲煥の所業に激怒する。
「雲煥め!!」
慕王が杖を突いて廊下へ向かう。体を心配して止めようとした趙力士は睨まれてしまった。
もちろん、雲煥の平手打ちも青雀の悲鳴も芝居である。楽しそうに派手な悲鳴を上げる青雀に対して、雲煥は少々居心地が悪い。
「そこまで声を張り上げる必要は無いだろう」
「あなたを止められるのは慕王だけだから」
ふたりの目的は、慕王が目覚めたことを表沙汰にすることだ。
理解した雲煥は、青雀の口の端に口紅を付けた。まるで口の端が切れたように見える。
また青雀が悲鳴を上げ始めた。
青雀の居室に、杖を突いた慕王があらわれた。青雀の口元を見て、慕王の怒りが爆発する。
「私が死んだと思ったか!? 代わりに慕王府の主人になったつもりか!?」
慕王の意を汲んで、趙力士が無言の雲煥を連れ出す。
「体は万全ではないが、必ずおまえの屈辱を晴らしてやるから安心しろ」
慕王は青雀を慰めた。
雲煥にどんな罰を与えるのかと青雀が訊ねると、慕王は一緒に見に行くかと訊ね返す。青雀はうなずいた。
雲煥は片膝立ちで趙力士の鞭を受けた。
「私兵を養い、義母に手を出したおまえは不忠者であり、不孝者だ! 義父に代わって教えてやる!」
容赦ない鞭打ちは、衣服の上からとはいえ雲煥の背中の皮膚を裂く。彼は拳を握って痛みと屈辱に耐えた。
<第23集に続く>