ドラマ「青雀成凰」
第13集
<第13集> 無論酸辛、我都甘之如飴
「雲煥!!」
まさか雲煥が橋から飛び下りると思わなかった青雀は、慌てて欄干から下を覗いた。
不意に、いくつものランタンが夜空に上がった。
「鵲児!」
眼下の通路には、落ちたはずの雲煥が凧を掲げて微笑んでいた。
青雀は、慕王の診察を終えた厳詢蒼と情報を交換した。
玉佩を見せ、”同心蠱”を使用したことを話す。
「次は慕王府と雲煥の財産を奪い、淮王軍復活を図らねば」
「けれども、雲煥は危険です」
雲煥はけだものだと罵った厳詢蒼は、慕王府を出ようと青雀の腕を掴む。
その手を、飛び出してきた雲煥が払った。剣呑な空気が漂う。
「死に急ぐなと忠告しておく」
「鵲児は慕王夫人ですよ。分かっておられますか?」
「慕王夫人がどうだというのだ。慕王府が灰燼に帰しても、私は鵲児を離さない」
”同心蠱”の効果は凄まじい。
断言した雲煥は、青雀の手を引いて去って行った。
青雀が玉佩を盗んだことに雲煥は気づいていた。しかし彼は、元々の持ち主ではないからと取り戻そうとしなかった。
「玉佩のほかに欲しい物があるか?」
雲煥に問われた青雀は、大金が欲しいと答える。淮王軍を養い育てるためだ。
慕王府の財産をすべて奪い、そのあとあなたを殺してやる。
「大金をどうするつもりだ?」
「普通の娘のように、街へ遊びに出かけたいわ。残りは後日のために取っておくの」
望みを叶えてやるため、雲煥は青雀を街へ連れ出した。
露店をあちこち覗いて回る。
ある露店で、雲煥は下げ紐の付いた宝玉を手に取った。
お目が高いと店主が褒めた。店主はふたりが若い夫婦だと誤解して売り込む。
その勘違いが嬉しい雲煥は、慕王府に宝玉を送り届けてくれと頼んだ。
その後も機嫌よく散財した雲煥は、手にいっぱいの荷物を抱えることになった。
日が暮れても、疲れ知らずの青雀は街を散策し続けた。買ってもらった糖葫芦をかじりながら歩く。
高いお金を出して買ってもらったのに、酸っぱくて美味しくない。
どうやって始末しようかと考えをめぐらせた青雀は、いいことを思いついた。疲れただろうから、と糖葫芦をひと粒抜いて雲煥の口に入れてやる。
美味しそうに食べる雲煥は、青雀の耳元で甘いとささやいた。
青雀が的矢、つまり弓矢の射的を見つけた。
矢を六本買ってもらった青雀は的に向かって弓を引くが、どうしても届かない。半分射たところで、景品の簪が欲しかった彼女は雲煥と交代した。
ところが、雲煥まで的を外してしまう。実は矢じりに細工が施してあったのだ。
ふたりを夫婦と見た店主が、的の中心に矢が当たれば簪を差し上げると確約した。
雲煥が矢をつがえて放つ。今度こそ、矢は的の中心を貫いた。
青雀は飛び上がって喜び、雲煥に抱きついた。
恋人気分に浸っていた青雀は、しかし簪をもらったところで我に返った。
雲煥の優しさは”同心蠱”の作用でしかない。青雀から笑顔が消えた。
青雀は簪を雲煥に返した。
「将軍が私を本当に喜ばせたいなら、十万両の金票をくれる? 別宅が欲しいのよ」
急に雲煥の表情が険しくなった。べたべたと触れてくる青雀の手を払いのける。
「これまで、私は贈った物を返してもらったことはない!」
雲煥は、簪を青雀の手に戻した。
<第14集に続く>