ドラマ「虚顔」第11集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
更新の予定は…
月曜~木曜:短劇「寵妃凰図」
木曜~土曜:鋭意調整中
※「幻鏡閣」は4/26にて大結局です。

ドラマ「虚顔」

 

第11集

 

 

 

 

 

 

 

<11>

 

 

「おまえは一体誰だ?

 うなされて額に汗を浮かべた十七は、飛び起きた。寝台を下り、ふらふらと廊下側の窓際へ行く。明るい窓際に置かれた鏡を覗いた。

 沈沁の顔のままだ。

 その時、窓に影が映った。

「目が覚めたのね」

 いつの間に部屋に入って来たのか、十七の背後には沈沁が立っていた。

「怪我をしたと聞いて、相国府から人が来るわ」

 沈沁は服の上から矢傷にそっと触れた。

「茯苓、当帰、誰か…!

 十七が助けを求める。沈沁は短刀を突きつけて十七を脅した。

「さっさと玉佩を持ってきなさい。さもなくば、その顔を返して」

 

 

 雲諾が調べたところ、矢の型は官軍のものだったが、その刻印は消されていた。

「韓内監は死亡し、玉佩の意味も分からずじまいか」

 蕭寒声と雲諾が廊下を歩きながら話していると、庭を挟んだ向こうの廊下に十七が飛び出してくるのが見えた。

「将軍、将軍、相国府が沈沁を寄越して…!

 怯えた十七は足がもつれて倒れ込む。駆け寄った蕭寒声は、十七をうしろから抱きすくめた。

「傷口が開いてしまう。無茶をしてはいけない」

 蕭寒声が耳元でささやく。徐々に十七は落ち着きを取り戻す。雲諾は荀御医を呼びに走った。

 蕭寒声は、優しく十七の涙をぬぐってやった。

「将軍、相国府から人は…?

「来ていないよ」

 あれは夢だったのだろうか。十七は安堵した。

 

 

 蕭寒声の看病の甲斐もあって、十七の矢傷は日に日に良くなった。もう横になっている必要もなく、薬湯も自分で飲めるが、蕭寒声は許さない。

「今日は天気がいい。久しぶりに外へ出てみないか?

「その前に薬を替えないと」

 恥ずかしがる十七の胸元をくつろげて、蕭寒声は矢傷に当ててあった布をゆっくり剥がす。痛みで十七が顔をゆがめた。蕭寒声は彼女の口に飴を入れてやる。

 傷口はまだ完全には癒えていない。蕭寒声は顔を近付け、痛みを冷ますために傷口に息を吹きかけた。緊張のあまり、十七は飴を噛んでしまう。

 口づけようとする蕭寒声を押しとどめ、十七はお腹が空いたと訴えた。

 

 

 これが、家族を守りたいと思う気持ちなのか。

 兵士はなぜ命を懸けて戦場で戦うのか。これは以前、父が蕭寒声に語っていたことだ。当時の蕭寒声には分からなかったが、今ははっきりと言える。沈沁と圓宝の笑顔を守るためなら命を懸けられる。

 当帰の見つけてきた屋根ふき職人のおかげで、いつもより三日早く、離れの雨漏りが直った。気に入らない蕭寒声は、違う業者にふき直しをさせろと言う。

「ですが、もう夫人は部屋に戻っておいでですよ」

 当帰は、彼女の引っ越しまで手伝っていた。

 

 

 蕭寒声は、部屋を片付ける茯苓たちを下がらせ、十七とふたりきりになった。居室から持ってきた鉢植えを文机の横に置く。

「全快したら、吉日を選んで婚礼を挙げよう」

 そういえば、もろもろの事情が重なって婚礼を上げずじまいだった。

「きみを正式に娶りたいから」

 しかし、十七は顔を伏せた。

 今の私は、本来の私じゃない。私はあの夜、あなたに助けられた十七なのよ。

 涙があふれてくる。

 十七にそのつもりがないのかと早合点した蕭寒声が、部屋を出ようとする。とっさに十七は彼の袖をつかんだ。

「…どうした?

 十七は袖から手を離す。何でもない、とか細い声で言う。

 十七を抱き寄せた蕭寒声は、唇を奪った。

「私がここにいてもいいのか?

 十七が無言でほほ笑む。彼女を抱き上げた蕭寒声は、寝台へ下ろした。口づける。

「…待って。もしかして”迎春蠱”の発作なの?

 催淫効果のある”迎春蠱”入りの酒を飲んだと思っている十七は、月に一回起こるという発作なのかと疑う。

「いいや。発作など一度も起こしていない。初めから」

 蕭寒声は優しく十七に口づけた。

 

 

 

 

 

 

<12集へ続く>