ドラマ「虚顔」第4集 | 江湖笑 II

江湖笑 II

中国ドラマ・小説の各話あらすじです。完全ネタバレしております。
5/13より更新は
月曜~木曜:短劇「与鳳飛」(「寵妃凰図」続編)
金曜~土曜:短劇「難尋」

ドラマ「虚顔」

 

第4集

 

 

 

 

 

 

 

<4>

 

 

 徐々に厚くなった雲は夕方になって雨を落とし、あっという間に雷雨となった。

 皇帝から沈沁への聖旨を託された海内監は、まだ蕭府の中で待たされていた。

「なにせ新婚ですから…」

 対応に出た雲諾は汗をかきかき弁明する。

 

 

 芊影山荘のある郊外は晴れていた。

「あなたの姉さんは毒に侵されているわ」

 十七の姉は、沈沁が施す治療を受けていた。そのため、彼女を芊影山荘から連れ出すことは死を意味すると言う。

「…本当に姉さんなの? 刺青だけでは分からないわ」

 浴槽に浸かる姉は背を向けている。

 沈沁はある物を十七に手渡した。十七が子供の頃に姉に贈った知恵の輪だ。

「私が子供を産んだら、顔を返すわ。それまで、蕭寒声にばれちゃダメよ。あなたの姉さんの命は私が握っているのだから」

 

 

 もう待てない。膀胱が限界だった。

 海内監は16杯も茶を飲まされ、雲諾が語る南潯大破狼衛の話を16回も聞かされていた。

 厠へ行こうとする海内監を、皇宮に帰るのかと思った雲諾は必死に引き留める。

 

 

 覚悟を決めるか。

 蕭寒声は書斎から廊下へ出た。

 目の前に沈沁が立っていた。彼女はたったいま帰ったばかりだった。

 

 

 十七は、沈沁として誥命夫人に冊封された。

 海内監が帰ったあと、中庭を眺める十七は上手く沈沁を演じていこうと心に誓う。

 ちらちらと蛍が舞いはじめた。そっと十七のとなりに立った蕭寒声も、蛍を眺める。

「蛍は、行く道を照らしてくれる希望だわ」

「…なぜ帰って来たんだ?

「この婚姻は賜婚でしょう? 昨夜、私を助けてくださったのに、恩をあだで返せないわ」

 十七の言葉を聞いた蕭寒声は、山寨襲撃を思い出した。

 そうだ。あの時の娘も同じことを言っていた。

 山寨を蕭寒声の軍が急襲した際、ひとりの娘が山賊の盾にされた。蕭寒声は狙いをすまして彼女のうしろに隠れた山賊を射殺する。だが、彼自身も腹に矢を受けていて、娘の前で動けなくなってしまった。

 あたりはすでに暗く、狼の遠吠えが聞こえる。早く下山するように娘を促したが、彼女は去らなかった。竹を組んで担架を作ると、その上に蕭寒声を乗せ、紐と縄で引っ張りはじめたのだ。

 草原へ出た娘は疲れ果てて倒れ込んだ。近くに川があるのか、蛍がいっせいに舞う。

 その時に見た娘の顔にも、泣きぼくろがあった。

 娘とは、顔を変えられる前の十七であった。

 

 

「将軍、夫人、離れの掃除が終わりました」

 うしろから茯苓の声が聞こえてきて、泣きぼくろに触れようとした蕭寒声は手を引っ込めた。

「離れで眠るつもりなのか?

 十七はうなずく。

 蕭寒声は反対をせず、夫人の世話をするようにと茯苓に指示し、十七のそばを離れた。

 やってきた雲諾は、十七が気分を害して離れに移ったのではないかと邪推して簡潔に釈明する。

「将軍には心に秘めた女性がおられましてね。別に夫人のことを嫌っておいでではないのです」

 

 

 山寨急襲の原因を作ったのは十七の描いた山賊の似顔絵だった。

 蕭寒声は、山賊を射殺した時にはね飛ばした彼女の耳飾りの一部を見つめながら、当時を思い返していた。

 弓矢を山賊に向けた時、怖くないかと訊ねたら、盾にされた彼女ははっきりと怖くないと答えた。

 

 

 門のすぐ脇に植わった木に、赤く細長い布が結びつけられていた。沈沁の合図だ。

 買い物を理由に、十七は蕭府を出た。

 芊影山荘へ行った十七は、血で染まった手を洗う沈沁を見て、ぎょっとする。

「…用事はなに?

「蕭寒声が持っている皇太子の遺品を入手して」

 蕭府に留まることは承諾しても、十七は沈沁の間諜になった覚えは無い。

「私があなたの命を救ったというのに?

 別室へいざなわれた十七は、血を流して死んでいる小倩を見せられた。先刻、沈沁が洗っていた手の血は、彼女の血だったのだ。

「婚礼の夜、この娘は沈家のバカ息子の謀略に加担してあなたを殺そうとしたのよ」

 それでも、殺めてしまうなんて酷すぎる。

「いいの? 私の薬が無ければ、あなたの姉さんはひと晩ももたないのよ」

 

 

 寧王が、わざわざ祝いの品を持って蕭府を訪れた。大きなつづらが三つもある。

 皇太子争いに巻き込まれたくない蕭寒声は礼を言ったものの、仏頂面で、しかし丁重に贈り物を拒んだ。

「それならば、辺境軍への支援という形ではどうだろう」

 さすがに断れない蕭寒声は、贈り物を受け取った。

 

 

 いつか蕭寒声を配下に加えてやる。そうつぶやきながら蕭府の廊下を歩いていた寧王は、かどを曲がってきた十七とぶつかった。

 十七の顔を見た寧王は、沈沁と勘違いして扉の陰に彼女を引きずり込んだ。

 

 

 

 

 

 

<5集へ続く>