ドラマ「山河令」 第9集 後編 | 江湖笑 II

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ドラマ「山河令」

 

第9集 後編

 

 

 

 

 

 

 

<9集 後編>

 

 

 夜空に見事な満月が昇った。酒を用意したので屋根の上で鑑賞しようと温客行に誘われ、周子舒も軽功で屋根に登る。

 しばらくすると、何やら争う音が聞こえてきた。美しい満月の夜に、無粋な侠客どもが争っている。原因は琉璃甲だ。

 にやっと笑った温客行は、周子舒とともに争う男たちを追う。

 

 

 争っていた侠客は、独目侠蒋徹と狂風刀客李衡だった。周子舒と温客行が追いついた頃には、ふたりは絶命していた。相打ちだったらしい。

 李衡の手には琉璃甲が握られていた。

「これは方不知に盗まれた琉璃甲か?

「似たような物のひとつだよ」

 一瞬、周子舒は耳を疑った。

 

 

 天窗統領の韓英の手元には、ふたつの琉璃甲があった。方不知から奪った琉璃甲だ。ふたつはそっくりだった。

 

 

 温客行は偽物の琉璃甲をばらまいて、江湖を混乱に陥れている。愉快犯だと知った周子舒は、温客行に対して怒りが込み上げてきた。方不知が殺され、今またふたりの侠客が命を落とした。ただでさえ琉璃甲の周囲は血生臭い。それを温客行は、偽物をばらまいてなお煽ったのだ。これからも死人が出るだろう。

 人の命を何と思っているのか!

 周子舒は軽蔑のまなざしで温客行を一瞥すると、足早に立ち去った。

 

 

 翌日早朝、岳陽派の門前に、杖にしがみつくようにして男がやってきた。よろよろと歩いてきた男はへたり込む。

「師弟…早く師父に知らせを…!

 男は岳陽派大師兄の鄧寛だった。傷だらけの鄧寛は、力尽きて昏倒した。

 急いで運び込まれて、手当を受ける。なかなか目を覚まさない鄧寛を、高小怜は泣きながら看病した。

 

 

 周子舒の機嫌を取ろうとした温客行は、朝食を持って部屋の戸を叩いた。声をかけても返事がない。

 部屋に周子舒の姿は無かった。

 

 

 高崇の前には、ふたつの琉璃甲が並べられていた。うりふたつと言っていいほどそっくりだ。

「これが両方とも偽物なのか…」

 沈慎が確認しただけでも、偽物の琉璃甲は三つ存在した。そのどれもが侠客たちの血を浴びている。このまま偽物の琉璃甲が広まれば、五湖盟の沽券にかかわる。

 

 

 錦筵坊で捕らえた男ふたりに、自我と感情は無かった。命じられたら機械的に動作を行うだけなので、どんな拷問も効果が無い。ふたりは鬼谷の者だと思われるが、傀儡状態のかれらを哀れに思う者も岳陽派にはいた。

 

 

 普段なら閑静な安吉四賢の庵、仁義坊は殺気に満ちていた。四人が琉璃甲を手に入れたという噂を聞きつけて、丐幇、華山派、崆峒派が仁義坊を取り囲んでいるのだ。桃紅婆と緑柳翁の姿も見える。

 庵には無数の矢が撃ち込まれ、奥でぐったりと座る裴氏の腹には剣が刺さったままだ。裴氏は夫人に琉璃甲を渡して、こと切れた。

「本来、琉璃甲は誰の所有でもないはず!

「だから、我々が所有してもおかしくはない!

 裴夫人の叫びに、丐幇幇主の黄鶴は勝手な意見を返した。武庫には丐幇から盗まれた秘籍があるはずだ。それを取り戻すため、丐幇が琉璃甲を所有するのは当然だと主張する。

 華山派の意見は少し違う。琉璃甲が誰の物でもなければ、強者が奪っても構わないだろうと言う。

 体の大きな高山奴の肩に乗る封暁峰は、琉璃甲が安吉四賢の手に渡った経緯を問題視した。安吉四賢の琉璃甲は鬼谷が持っていたものだと噂が流れたため、かれらが鬼谷と通じていると言うのだ。鬼谷は正派が倒さねばならない。それならば安吉四賢も倒さねばならないというこじつけだ。

 封暁峰が暗器を放った。複数の小さな金属の玉が三人に襲い掛かる。

 避けそこなって、賀一凡が両目に暗器を受ける。暗器には毒が塗られていた。

「解毒薬が欲しけりゃ、琉璃甲と交換だ!

 手段の汚さに、さすがの桃紅婆が怒る。

 まさに一触即発。

 殺気立つ仁義坊に、弟子から報告を受けて高崇と沈慎が軽功で駆け付けた。すぐ後に到着した岳陽派と大孤山派の弟子が、丐幇たちを取り囲む。

 黄鶴や桃紅婆、緑柳翁の五湖盟への不満が爆発した。

 しかし、言い争っているうちに、封暁峰が逃げるようにして姿を消す。解毒薬は無い。高崇は沈慎に追跡を命じた。

 毒に侵された賀一凡が狂った。裴夫人を投げ飛ばす。地面にたたきつけられた裴夫人は、高崇たちの目の前で息絶えた。彼女の手の中に琉璃甲が見える。全員の目の色が変わる。

 ひとりの丐幇が琉璃甲を奪い取った。その瞬間、狂った賀一凡に腕を切り落とされる。それを皮切りに、賀一凡は殺戮をはじめた。

「殺してはいかん!

 高崇の制止もむなしく、桃紅婆の一撃が賀一凡の命を奪った。

「隠遁して十五年。江湖の争いから身を遠ざけてきた日々は、いったい何だったのか!

 四人が手に入れた琉璃甲は、英雄大会の日に高崇への土産として持っていくはずだった。

「杜兄、すまぬ! きっとあなた方の正義はこの高崇が守ってみせる!

 裴氏の血で染まった剣を持って表にあらわれた老杜は、愛用の琴を投げ捨て、剣で首を斬って自害した。

 黄鶴が周囲の空気を読んで、高崇に釈明をはじめる。五湖盟を敵に回したくない黄鶴は、実際に安吉四賢を手にかけたのは封暁峰で、丐幇ではないと言う。

「黄長老は琉璃甲が欲しいのだろう、くれてやる!!

 怒りに震える手でふたつの琉璃甲を懐から出した高崇は、黄鶴に投げつけた。

「七月十五日の英雄大会で、この私が正義の判断を下してやる!

 高崇は人々にそう宣言し、弟子を連れて帰って行った。

 高崇が帰ったことを確かめてから琉璃甲を拾った黄鶴は、それが偽物であると分かって、その場に捨てる。

 

 

 悲劇の一部始終を、温客行は眺めていた。途中で、そんなはずではなかったと後悔する。安吉四賢の命まで奪うつもりは無かったのだ。

 

 

 

 

 

 

<10集に続く>