大変長らくお待たせいたしました!

まだ、本調子とは言えないながらも、ここのシーンをなるはやで、アップしたかったので・・・。

 

こちらの筋追いは、気になったドラマを、世に出回る商業翻訳ではなく、ドラマ好き有志の英訳・もしくは配信サイトの英訳をもとに、(英語ができないくせに)果敢に訳した「なんちゃって訳」となっており、多少、ストーリー展開は訳者の願望に寄ってます。視聴しながら生じた疑問の考察やら、内容を把握しながら、突っ込んだり、賞賛したりしたいという、ドラマ好きの発露です。

ラストまでの完全ネタバレです。

いつものごとく、本格的なネタバレ&上記のご注意をご理解いただき、OKの方のみ、おすすみください。お願い

 

シグナル  시그널 英題:Signal

 (tvN Jan 22, 2016 - Mar 12, 2016 1時間15分×全16話)

対象:15歳以上

脚本:Kim Eun Hee

演出:Kim Won Suk

 

※このドラマは、犯罪を扱うという特性上、登場人物がエピソード毎にたくさん出てくること、1話完結ではないこと、現在・過去の描写が頻繁に入れ替わる、など、通常の筋追いでは、わかりにくい部分もあるため、補足も兼ねて、びびの独断で、人名や、人間関係など、ドラマよりも先に、リマインドしたり、説明をする場合があります。

極力、ドラマ上、「なるほど!! この人がこういう立ち位置だったのね」という謎解き部分の醍醐味が損なわれることのないように工夫したいとは思いますが、なにぶん、整合性を取り切れない箇所もでてきそうな気がします。

余計、わかりにくくなったりしたら、ほんと、申し訳ないです。

 

前記事をお読みでない方は、さきに、こちらからお読みください。

 

#13-1
 

 

【Episode 13-2】

 

 

現在

 

~葬儀場~

 

喪服に身を包み、ジェハンの葬儀会場に現れたヘヨン。

 

イ・ジェハンと、故人の名前が書かれたボードを見て、ため息です。

 

中央の祭壇の傍らに、座っているアボンニム。

他には誰もいないのか、と思ったら、入口の脇に、佇むスヒョンの姿が。

 

警察官としての正装、制服姿です。

 

涙の滲んだ目で、毅然と祭壇を見ています。

 

静かに、斜め後ろに立つヘヨン。

 

写真も、若いころのままのものが使われています。

 

ヘヨン「・・・大丈夫ですよ。弔花も弔問客もなく、汚職警官としてハメられ、15年後に白骨遺体となって発見されましたが、こうして何年経っても、忘れなかった人たちがいらっしゃったんですから。ずっと、待ちわびておられたのでしょう。」

ジェハンの父親に、視線を移すヘヨン。

 

ヘヨン「イ・ジェハン刑事さんにとって、それが、どれほどの慰めになることか・・・」

そんなふうに話すヘヨンの脳裏には、兄ソヌのことがあるのかもしれません。

 

スヒョン「私たちね、一緒にまともな写真一枚だって撮ったことなかったなって・・・後になって気づいたの。もしも、あれが最後になるとわかっていたなら・・・なにかしておけばよかった。せめて・・・なにかちょっとしたことでも・・・ちゃんと残しておけたのに・・・それが一番心残りなの。

 

~回想~

 

~チニャン署 強力班~

監察の人間が突然入ってきて、ジェハンの机の鍵をこじあけたあの日。

 

騒ぎを聞きつけ、駆け付けてきたスヒョン。

スヒョン「一体、なにしてるか、わかってるんですか?」

 

監察の人間「これを見てみろ。随分ため込んでたな、それも、こんなにたくさん・・」

引き出しの中から、むき出しの現金の束が机の上にどんどん出されていく。

 

驚きを隠せないスヒョン。

 

監察の人間「自分の同僚が何をしたか、よく見ておくんだな」

 

その報告をスヒョンが告げた時、ショックで座り込むジェハンの父。

父「あいつ・・・一体、どうしちゃったんだ・・・」

 

なにもわからず、泣き出す父に、首を振り続けるスヒョン。

スヒョン「違います。先輩ニムは、けっして、あんなことするような人じゃありません。私が、探し出します。絶対、見つけ出します。」

 

ジェハンの部屋で、戻されてきた私物を整理するスヒョン。

その時に、いつもジェハンがつけている手帳を見つけ、手に取ってみたのね。

 

その後、仕事の傍ら、ジェハンの顔写真を持ち、関係のありそうな場所は特に、探し始めたスヒョン。

 

成果は、芳しくありません。

それでも、少しでも可能性があるなら・・・と、回り続けたのです。

 

当然、ここにも行ってみたスヒョン。 

高速の13号線沿い・・・ジェハンの警察官人生は、ここからスタートしたようなものなのです。。

 

スヒョン「(そのうち)彼は、もう亡くなっているだろうと思い始めたわ。だって、死んでいなかったとしたら、家族や同僚を捨てるような・・・そんな人じゃないから。それが、白骨遺体が運び込まれるたびに、NFSに駆け付けた理由でもあるの」

 

何度も何度も、連絡があるたびに、とるものもとりあえず、NFSにむかったスヒョン。

 

おそらく、スヒョンの・・ジェハンがいなくなってからの15年は、決して、ったものではなく、毎日毎日、区切りを付けたいのか、つけたくないのか、ずっと自問自答の日々だったんだと思います。。

 

スヒョン「それでも、時々、こんな考えに囚われることもあった。ドアが開くたび・・・そのドアを通って、現れるんじゃないか・・って願ってた。

 

出会いの時から、ずっと・・・

片時も忘れたことなどないジェハンの、全ての瞬間瞬間が、今も、スヒョンの中では、昨日のことのように思い出せる。

 

そっと目を閉じ、そして、再び、ジェハンの祭壇を見るスヒョン。

 

スヒョン「・・・まるで何事もなかったかのようにね」

 

実質、一緒に過ごしたのは5年。

いろいろなことがありました。

 

どんな時も、至らない自分に向き合ってくれて・・・自分の名を呼んでくれて・・・傍にいてくれた人でした。

 

スヒョン「私の名を呼びながら・・・そうやって戻ってきてくれるのを願ってたの。そんなふうに願ってしまったりしたの。。」

 

今まではいくら聞いても、あんたには関係ない、と教えてくれなかったくせに、今、こうして、言葉少ないながらも、ジェハンの話をするスヒョンの一言一言を黙って聞いているヘヨン。

 

自分が知るのは、声と登録写真の顔だけだけれど、不器用で、漢気があって、心の暖かな人で、ちゃんと、その時代を生きてきた人だったんだ、と、複雑な気持ちになりながら・・・。

 

涙だけは流さない、と心に誓っているようなスヒョン。

 

その後、祭壇の前に進み出て、菊の花を供え、ジェハンの遺影にむかって、敬礼をする。

~回想 #1-2

 

ジェハン「週末かそこらまでには(この事件を)解決させなきゃならないと思ってる」

スヒョンの言葉を遮るように、話し始めるジェハン。

スヒョン「え?」

ジェハン「終わらせるよ。そうしたら、また話そう」

 

 

もうその機会は、訪れないのだ、と受け入れなくてはなりません。

 

スヒョン:週末まで待ってくれって頼んだのに・・・15年もかかりましたね。

 

涙を浮かべながら、精一杯、微笑むスヒョン。

 

スヒョン:先に約束破ったのは先輩ニムですからね。私が怒っても、文句言えませんよ。

 

怒る代わりに、唇を噛み締めても、ポロポロと、こぼれる涙。

 

そんなスヒョンの様子を、傍らで、涙を浮かべながら、見つめているジェハンの父。

 

そして、そんな二人の様子を、後ろから、じっと見守っているヘヨン。

 

 

~ジェハンの部屋~

葬儀が無事に済み・・・アボンニムの手によって、遺影が机の上に飾られました。

あらたに、悲しみに包まれる、父親とスヒョン。

 

やるせない気持ちのまま、ジェハンの部屋の中を見回すヘヨン。

無線の先の、イ・ジェハンという人間が、実際に、この世界に生きていた、という実感がわいたのか、それとも、まだ、どこか、実感がないのか、ヘヨンにもよくわからないのかもしれません。

 

~ソウル警察庁 未解決捜査班~

 

制服姿のまま、誰もいない自分の席に戻ってきたヘヨン。

手に取ったのは、バットマンの写真立て。

 

これも、ヘヨンとの出会いの際に、指摘された後、書類の裏に隠したりせず、卓上に飾るようになったんだよね。

 

~回想~

実は、ジェハンの私物を片付けていた15年前に、箱の中から見つけたものの一つだったのです。

すでに、この時から、「手錠の重さは2.5リットルの涙」の文字も書かれていたんですね。

 

後ろを開けてみるスヒョン。

 

挟まっていたのは、「逮捕しちゃうぞ」の時の、二人で撮った写真でした。

 

スヒョン「・・・・!!」

息を呑むスヒョン。

 

スヒョン「これ・・・どういうこと?」

 

 

その時のことを思いだし、涙を浮かべながら、その写真を見つめるスヒョン。

 

この写真を、ここに忍ばせたジェハンの想いを知ったからこそ、それを支えに、この人は今まで、ずっと、耐えて生きてこれたんだろう、と思うと、ああ、もう、これはだめだ。。。

 

ポロポロと流れるスヒョンの涙。

 

スヒョン〈私たちね、一緒にまともな写真一枚だって撮ったことなかったって・・・後になって気づいたの。もしも、あれが最後になるとわかっていたなら・・・撮っておけばよかった。せめて・・・なにかちょっとしたものでも・・・ちゃんと残しておけたのに・・・それが一番心残りなの。〉

 

ヘヨンに告げた、葬儀場での言葉は・・、この写真が云々ではなくて、二人で撮った写真を、こんなふうに忍ばせるジェハンだったら、いくらでも、一緒に撮れた可能性はあったのに・・・という女心がこもっている気がします。

 

写真たてを胸に抱えて、号泣するスヒョン。

 

でも、これはこれで・・・いい写真だと思うけどな。。

 

そりゃ、ジェハンが自らの意志で、また、別のエピソードと共に、スヒョンの想いを汲んでくれて・・・くらいのことがあっても良かったな、とは思うんだけど、今まで、ジェハンは、散々、そういうキャラじゃないを積み重ねてきたわけじゃん。(苦笑)

 

やっぱり、ウォンギョンとのことを考えると、そう簡単に、次には進めなかっただろうし、だから、おそらく、この写真をジェハンが忍ばせたのは、少しあとになってからのはずだ、と思いたい。

 

スヒョンのひたむきな想いに触れるうちに、だんだん、その存在の大きさに気づいたんじゃないのかな。

これなんかね、もう、気付け、バカ!って言ってるように見えて仕方がないの。。

 

さて、ここから、ヘヨンサイドのお話になります。

 

~ヘヨンの車中~

路地裏の道にに停めた車の中で、

一枚の、古ぼけて、少し皺が寄ったような、古い食堂のカードを見ているヘヨン。

 よくある、店の名前や連絡先が書かれた宣伝用のいわゆるショップカードです。

“コッテギ屋(껍데기집)”と書かれてます。

※ (豚の)皮

 

~回想~

 

ジェハンの自室で、ジェハンの遺影を前に、泣きながら座り込んでしまった父親を支え、部屋をあとにするスヒョン。

一人、ジェハンの部屋に残されたヘヨンが、なんとなく、掛けられたジェハンの制服に手をかけたり、

部屋の中を見回していると、机の上の名刺たてに、見覚えのある字面をみかけ、

手にとってみる。

 

ヘヨン:なぜ、、イ・ジェハン刑事さんがこれを持っているんだ?

不思議で仕方がないヘヨン。

 

そして、私は、号泣用にタオルをスタンバイ。。

 

過去

 

〜インジュへの道〜

運転途中で、ガソリンスタンドの並びにある商店に立ち寄り、缶コーヒーを買ったジェハン。

出入口の横に置かれた新聞の見出しに、目をとめる。

 

本日 インジュ集団強姦事件の判決

 

胸をざわつかせながら、記事を読み進めていくジェハン。

 

 

~裁判所前~

マスコミや家族が集まる中、手錠を掛けられた少年たちが、列を組んで建物から出てくる。

ヘヨンの回想で、何度も出てきたシーンです。

 

ヘスンの父親が出てきて、「俺の娘の人生を台無しにしやがって!」とソヌにむかって大声で叫びます。

ヘスンの父親「それなのに、お前らはどうだ? 少年院に6か月だと? 一体、こんな無体な話があるか!! くそったれが! 正義なんてないのかよ!!」

暴れ狂う父親を知人らしき人間が押さえ込もうとしています。

 

少し離れたところから、見守っているジェハン。

 

この件が気になって、インジュにやってきた様子。

 

父親の怒号が続く中、ゆっくりと近寄っていくジェハン。

 

幼かった頃のヘヨンが、泣きながら、「兄さんは何も悪いことなんてしてない」と訴えています。

 

無実の罪で少年院に送致されるソヌにとって、ヘヨンのその絶叫を聞くことは、たまらなく辛い瞬間です。

 

そして、ソヌが無実だということを、誰よりも知っているジェハンには、とても正視できない光景です。

 

それでも、どうしても、ヘヨンの悲痛な叫び声が耳に飛び込んでくるのです。

ヘヨン「言ってるでしょ。本当に、うちのヒョン(兄さん)じゃないんだ!! ヒョンはなにもしてないんだよ」

警備の警官の腕にしがみつき、訴えるヘヨン。

 

ジェハンの耳に飛び込んでくるそのヘヨンの悲痛な泣き声が、以前、交信でヘヨンが語った時の、切実な言葉を蘇えらせました。

 

ヘヨン<1999年のインジュで何が起きたのか、調べてください。どうか、その事件について、真実を私に教えてほしいのです。

#11-4

 

ジェハン「パク・ヘヨン・・・パク・ソヌ・・・・まさか・・・」

 

ここで、初めて、自分がずっと交信してきた相手が、ソヌの身内ではないか、と思い至るのです。

 

そして、改めて、パク・ソヌの情報を入手するジェハン。

家族構成をみて、「彼と、母親だけですか?弟とか、他に誰かいませんか?」と担当者に訊ねると、「弟がいますね。ただ、父親が違うんですよ」と知らされる。

 

ソヌの家を訪ねてきたジェハン、家の壁いっぱいに、“インジュの恥だ! 出ていけ!! けだもの!!"など、嫌がらせの落書きがされていることに気づく。

落書きだけではなく、家のガラス窓も、投石などで割られているようでした。

 

暗澹たる思いでそれを眺めていると、ガラスの破片を片付けている母親が目に入りました。

目があい、一瞬ためらったものの、深々とお辞儀をするジェハン。

 

ソヌの逮捕後、すぐにソウルに戻ったジェハンのことを、刑事だと気づいたのかどうかわかりませんが、複雑そうな表情で立ち上がる母親。

 

家の中に通されたジェハン。

見回せば、ソヌの表彰状が壁に貼られているなかで、不自然に、なにかが貼ってあった跡が見えます。

 

ジェハン「離婚されたんですか?」

ため息をつくオンマ。

 

オンマ「状況はどんどん悪化していく一方ですから、一緒にいる必要などありません。長男は、最初の亭主の子なんです。ですから、私が育てるのが正しいことなんです。あの子のせいで、下の子にまで人々の非難や中傷に晒させることはできませんから・・父親と一緒にここを出ていくのが、あの子のためにはいいことなんです」

 

自分に言い聞かせるように説明する母親。

 

隣の部屋に目を向けた時、1枚だけ壁に残された、兄弟仲睦まじい写真。

その視線に気づいたオンマ。

 

オンマ「可哀そうに。私、あの子たちのこと、ちゃんと面倒をみてあげられなかったんです。あれやこれや、忙しいと言い訳してきました。めったに、会うこともできなかったんです。あの子たちに、ちゃんとしたお弁当一つ、作ってあげたことすらありません。それでも、あの子たちは、本当に仲がよかったんです。あの子たちには、お互いしかいなかったのに・・・私にとって、二人ともかけがえのない息子たちです」

涙を流すオンマ。

 

オンマの苦しい胸の内を聞き、言葉もないジェハン。

本来、ここに座っていることは、彼にとって、大きな罰のようなものなのです。

でも、それをこの母親の前で、明らかにすることは、さすがのジェハンにもできませんでした。

 

その後、完全に夜になってしまってから、今度は、ヘヨンが暮らす家を訪ねてきたジェハン。

細い路地を登ってきたところで、足が止まりました。

 

坂の上の階段の手すりにもたれて立っている男の子に気づいたからです。

 

住所からしても、そこがヘヨンと父親が暮らしている家で間違いなさそうだと、手元のメモを確認するジェハン。

 

この寒空に、なんで、外に出ているんだ?と、当然の疑問がわきましたが、少し様子をみることに。。

 

そのうち、一人の男性が坂道を登ってきました。

 

ヘヨン「アッパ?」

父親の帰りを外に出て待っていたようです。

 

そんな息子に対して、何も言わず、さっさと家の中に入っていく父親。

 

なんだ? どういうことだ? と、ジェハンの頭の中は、だらけです。

 

ヘヨンは、家に入るわけでもなく、そのまま、石段に座り込んでしまいます。

 

その後も、しばらく、膝を抱えて座っているヘヨン。

 

どうやら、お腹が空いているような感じです。

たまりかねたジェハンが、声をかけようか、と、物陰から出ようとしたとき、ヘヨンが歩き始めました。

 

こんな夜に、子供一人を放っておく父親のことも信じられない思いで一杯ですが、

今は、ヘヨンを追いかけるほうが先決です。

 

母親は、父親と一緒にいるほうが、ヘヨンのためだと思っている様子でしたが、言い方は残酷ですが、現状を確かめることもなく、そのままでいるということは、それもまた、ある種のネグレクトでしょう。

 

コミュニティから分断されてしまうと、子供ひとりの存在なんて、本当に、簡単に見えなくなってしまう。

 

母もまた、長らくDVの被害者で、今はまた、加害者の保護者として、そこまで、思い至らないほど、疲弊し、気力を削がれてしまっているのでしょうが、犠牲になるのは、子供です。

 

とぼとぼと、路地をあるいていくヘヨン。

そのあとを、気づかれないように歩いていくジェハン。

 

歩き続けて、ほとんど閉まっている店が続く大通りまで出てきたところで、周囲を見回し、明かりがついている一軒の店のガラス戸をあけて、入っていってしまうヘヨン。

どうみても、場末の食堂兼飲み屋です。

 

ジェハン「おお、あいつ、なんで、あんなところに入っていくんだ?」

慌てるジェハン。

 

~店内~

 

女店主「いらっしゃ・・・」

一人で入ってきたヘヨンを見て、みな、呆気に取られてます。

 

この反応からして、少なくとも、ヘヨンはここの常連じゃありません。

 

さっさと席に座るヘヨン。

 

店主「ええっと、何しに来たの?」

ヘヨン「オムライス、ください」

店主「え?」

 

その時、ジェハンも追うようにして店の中に入ってきました。

 

この店に、オムライスなんてあるのか、という客の声も聞こえてます。

 

ヘヨン「お金ならあります。オムライス、作ってください」

 

ジェハンに気づいた女店主が、いらっしゃい、と声をかける。

 

ジェハンも少し離れた席に、腰を下ろす。

 

店主「まったく、この子ったら、からかってるの? 家はどこ? お母さんのところに帰りなさい。こんな時間に外に出るなんて、どういうつもりなの?」

まぁ、このアジュンマの言うことも、一理も二理もあります。

 

ジェハン「すみません」

店主「はい。 (ヘヨンに)ちょっと、ここで待ってなさいね」

 

うつむいているヘヨン。

 

そう声をかけてから、ジェハンの席にいくアジュンマ。

 

店主「ご注文、なんにします?」

ジェハン「ああ・・・あの子のこと、知ってますか? あの・・オムライス作ってやること出来ますか。代金は私が払いますから・・」

そういって、財布を出すジェハン。

突然の申し出に戸惑いつつ、ヘヨンとジェハンの顔を見比べる女主人。

 

女主人「お宅、あの子のお父さん?」

ジェハン「違いますよ、当然、違いますって。自分の息子だったら、こんなことさせたりしますか? すごくお腹が空いてるみたいじゃないですか・・・ただ、それだけですよ。私からの注文だと思って、作ってくれればいいんです。ご面倒であれば、お金はもっと払いますよ」

女主人「・・・・・・・・」

ジェハン「だから、違うって言ってるでしょ。ええっと、私には焼酎と、チゲ、小さいのね」

女主人「小さいのでいいの?」

ジェハン「ええ」

 

結局、お金を受け取り、厨房に入っていく女主人。

 

心細げに座っているヘヨンを見て、大体の事情を察したジェハン。

これもまた、彼の心に重く重く圧し掛かるものの一つになりました。

 

しばらくして、出来上がったオムライスが、ヘヨンの前に置かれると、喜び勇んで、食べ始めるヘヨン。

どれだけ、お腹がすいていたことか。。

 

店主「ゆっくり食べなさい」

 

ヘヨンが食べ始めたのをみて、少し安堵したように、焼酎を飲むジェハン。

 

店主「まったく、前に食べてから、一体どれだけ経ってるっていうの?」

 

ジェハンの席から、店の鏡に映るヘヨンの様子が見えている。

夢中で食べているヘヨンの姿を見ていると、急に、ヘヨンのスプーンが止まる。

 

~回想 #12-3 ~

 

ソヌ「いいよ、で、願い事ってなんだ?」

ヘヨン「オンマやアッパや、ヒョンと一緒に、ごはんを食べに行きたいんだ」

目を輝かせるヘヨン。

 

ソヌ「おい・・そんな願い事なんてあるか?」

ヘヨン「本気だよ。前に食べたオムライス、すごくおいしかったんだもん」

 

 


流れ落ちた涙をゴシゴシと拭い、

また、オムライスに食らいつくヘヨン。

 

 

未成年で初犯だから、罪もたいしたことない、別に構わないだろう、と言っていたボムジュの言葉。

無実だと知っていたのに、真犯人を暴ききれなかった刑事の自分。

 

現に、一つの家庭が壊れ、こんなに幼い子が犠牲になっているじゃないか。

 

これが、自分たち大人がそれぞれの欲望のために、罪もない青年を犠牲にした末路なのだと、目を伏せるジェハン。


現在

 

※さきほどは、場末の食堂というか、飲み屋・・だなんて書いてしまって申し訳ありませんでした。

 

たとえ、狭くても、キチンと整頓して置かれた器や、調味料、磨かれたステンレスの台。

厨房を見れば、そのお店の雰囲気はわかります。

 

ちょうど、お客さんが途絶えたのか、それとも、あまり流行らなくなってしまったのか、店の片隅で、うとうととしてる女主人。

 

がらりと、店の戸が開く音がして、反射的に、「いらっしゃいませ」と声を出すと、入ってきたのは、ヘヨンでした。

口許に笑みが浮かんでいます。

店主「いらっしゃい。あんたが警官になってから、ほとんど、顔を見せなくなっちゃって・・・久しぶりだねぇ」

温かい笑顔で迎えてくれたアジュンマ。

 

店主「また、オムライスでも作ったほうがいいかねぇ?」

ヘヨン「もう食べてきちゃったよ」

店主「そうなのかい」

会話の感じは、すっかり身内です。

 

そこで、さきほどの、店のカードを見せるヘヨン。

 

ヘヨン「これって、この店の宣伝用カードだよね?」

頷くアジュンマ。

懐かしそうに、しみじみと見つめています。

店主「ずいぶん、昔のだけどね」

 

ヘヨン「もしかして、この人に会ったことある? この人が、このカードを持ってたんだ」

ジェハンの顔写真を見せるヘヨン。

じっと、スマホの画面を見つめていたアジュンマ。

 

店主「ああ、この人ね・・」

ここでもまた、少し、懐かしさが浮かびました。

 

過去

 

オムライスを食べ終わったヘヨン。

「ごちそう様でした」と軽く頭をさげ、店を出ていったあと、店主が見ると、ヘヨンの食べたお皿は、洗ったみたいに、キレイでした。

 

すぐさま、立ち上がるジェハン。

ジェハン「すみません。あの子がここに来たら、どうか、飯を作ってやってくれませんか。」

店主「え?」

財布の中に入っているお札を掴み、店主に渡すジェハン。

ジェハン「頼みましたよ。時々、連絡入れますから・・」

そういうと、店のカードを手にし、

急いで、ヘヨンのあとを追うジェハン。

 

店主「なんで、こんなにたくさん置いていくのよ」

 

それから、しばしば、この店を訪れるようになったヘヨン。

いつも頼むのは、オムライスでした。

 

そして、そんな姿を、そっと、離れた席から、見守っているジェハン。

 

現在

 

店主「自分の子供でもないのに、変な人だなぁって思ってたのよ。でもね、あんたには言わないって約束させられたの。でも、そのうち、店にも来なくなって、連絡も途絶えてしまったから、すっかり、忘れてたわ」

 

店に来なくなった理由も、連絡が途絶えた理由も、今のヘヨンには、よくわかります。

 

~店の外~

ショックを受けたまま、店をあとにするヘヨン。

 

満腹になったあと、薄暗い道を一人、家に向かって戻っていく自分のあとを、ゆっくりと歩いてついてきてくれていたであろうジェハンの姿を思い起こしてみるヘヨン。

目に、涙が滲んでいます。

 

ヘヨン:ずっと一人だった。独りぼっちだってずっと思ってた。それは・・自分にとって、一番辛いことだったのに・・・・

そう思っていたのは、自分だけだったんだ・・・と、胸を熱くするヘヨン。

 

ここで、切ります。

 

 

★『シグナル』EP.13-2 雑感★

 

ここは、(多少長くなっても)一気に、噛みしめたいシーンでした。

 

最初の葬儀場でのシーンは、もう、スヒョン(キム・ヘス)の独壇場です。

 

少しずつ、少しずつ、明らかになってきた二人のシーン。

コミカルでありつつ、二人の純情ぶりがさく裂し、とても大切なものが一杯詰まっていて、見るたびに、微笑ましくなっていました。

 

ジェハンの遺影を見つめる眼差しは、(表向きは)結婚していたわけでも、婚約者だったわけでも、恋人同士だったわけでもない二人だったけれど、二人の間に流れていた時間は、これから、きっと寄り添って生きていくつもりだったんだろうという可能性に満ちたものだった、と感じさせてくれるほど、奥行きのある演技だったと思います。

 

 

 

そして、ジェハンとヘヨンです。

 

私にとって、『シグナル』を視聴するうえで、いえ、ずっと初回から視聴し続けてきたうえで、感情が激しく揺さぶられるシーンの一つです。

 

 

これはもう、ちょっと、言葉では言い表せません。

ご承知の通り、こういう展開、弱いんですよ。

「こんなんずるいわぁ~~~、絶対、泣いてしまうやん」って、当初は、呆れるくらいの、ズルズル泣いてました(苦笑)

 

これは、ジェハンに惚れても仕方ないでしょ?

 

おむらいす~~~~!!!

今までも、この言葉が出るたびに、どうしても、スルーできませんでした。

家族と食べた思い出の味を、はるかに上回ってるよ、と私は主張したい。

 

パク・ヘヨンが、あのパク・ソヌの弟だと知ったジェハン。。

ずっと一人だと思って、生きてきたけれど、そうじゃなかった、と知ったヘヨン。

(アジュンマのことも、片隅に置いてやってくださいね)

 

二人の繋がりについては、実際、ちゃんとニアミスさせてるんですよね。しかも、初回も初回。。#1-1

 

もし、この時、目と目が合っていたら、ジェハンだったら、気づいたはず。。。

捜査会議が控えてなければ、追いかけてたかもしれない。

それはそれで、違った展開になっていたんだろうか。

 

ホント、あっちこっち飛ぶけど、無駄なシーン、一つもないの。

それは、このドラマの、どのシーンにも言えるかもしれませんが。。

 

考えてみれば、ヘヨンが、インジュのことを調べてくれ、と頼んでから、無線の交信はなされていないんですよね。

 

お互い、途中経過を報告することもなく、重い現実と向き合い、そして、新たに知った事実を、本人に確認することもなく・・・。

まだまだ、13話盛りだくさんです。

 


★『シグナル』EP.13-3に続く★