長崎新幹線について思うこと | WALKING SHADOW

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全ての旅は一度きり。

約2年後に暫定開業予定の九州新幹線(西九州ルート)。

鉄道好きな筆者ですがこの新幹線については良い感情を全く持っていません。

一個人の意見として読み飛ばしてください。

 

背景

九州新幹線西九州ルート(西九州新幹線という名前に決まったそうですがややこしいので以下、長崎新幹線と呼びます)の武雄温泉~長崎間がフル規格(普通の新幹線)で建設中です。

しかし残りの新鳥栖~武雄温泉間は佐賀県が建設費を出さないがために着工どころかどう建設するか目処が立っていません。

言うまでもなく佐賀県へのメリットが少なすぎるのが一番の理由です。

長崎新幹線は九州新幹線鹿児島ルートや北陸新幹線と同じく「整備新幹線」。経由する地元が負担することが建設条件となっており、メリットがないのに何百億円ものお金だけを出すのは無茶だというのが佐賀県の意見です。

 

どう考えても佐賀県は犠牲になる

博多~長崎間は日中30分間隔で在来線特急「かもめ」が運行されています。

地理的に隔絶されている長崎に配慮し可能な限り高速運転をしており2時間を切ることに成功しています。

暫定開業区間以外の博多~肥前山口間は特に線形が良いため新幹線でなくても十分速いです(佐賀~博多間35分)。

しかしフル新幹線になっても値上げと引き替えにこの35分が20分になるだけです。

また整備新幹線ができると並行在来線の長崎本線はJRから経営分離(して値上げ)するのが掟。

踏んだり蹴ったりです。

元から福岡県との結びつきが強いこともあってあくまで新大阪直通を目論む長崎県とは目指すものが違います。

 

長崎県のメリット
長崎県からすれば山陽新幹線からの直通列車で西日本全域から観光客を呼び込むことが究極の目的です。

迫る暫定開業時には「かもめ」が博多~武雄温泉間の「リレーかもめ」に変更され武雄温泉で新幹線と対面乗り換えとすることで長崎までの所要時間を短縮します。といっても乗り換えなし1時間50分が乗り換えありの1時間20分になるだけです。

まあ建設を認可しない佐賀県に長崎県が怒るのも分かります。

全部フルで(佐賀県以外にとっての理想で)建設されれば1時間を切るので確かに長崎への輸送は大幅に強化されます。

しかも長崎県内の区間が短いため恩恵が大きい割に建設費の負担が少ないというメリットもあります。

 

そもそも「うちにも新幹線を」の発想が古い

長崎に新幹線を約束したからには後に引けない?いつの計画を引きずっているのでしょうか。

時代は変わっています。金沢は例外であって線路を引けば人が集まる昭和的新幹線効果に期待するのは昔の話です。

小諸駅、阿久根駅、三沢駅、魚津駅。整備新幹線の開業で衰退した駅の一部です。

長崎県は差すかも分からない光ばかりを強調しますが、これだけの前例を知った佐賀県は県のほぼ全域が影になることを危惧したまでですから反対するのも無理はないでしょう。新幹線ができても降りて貰わなければ無駄で、逆に都会にストローされて過疎化が進みます。
 

オセロ方式といえる卑怯な建設方法

そもそもフル規格で佐賀県を中抜きにした一部暫定開業という方法が嫌らしいです。

フル規格を既成事実化し「折角建設したのに通り道(本音)の佐賀ごときが意地を張ると困っちゃうよ」と言わんばかりです。

沿線事情より線路が存在する事実が重要視されるという鉄道の本来の役割を無視したやり方には憤りを憶えます。

不要な鉄道よりも県の予算を回すべき事業はいくらでもあります。

 

約束を破り新幹線以外を切り捨てるJR九州

元々問題の佐賀県区間は「スーパー特急」や「フリーゲージトレイン」などの整備方式で県も合意していました。

佐賀県内では実質在来線特急=新幹線となるからです。

しかし後者のフリーゲージトレインはコストがかかりすぎる算段となり2017年に計画が頓挫、現行の計画に変更されました。

ここで本来ならば在来線の幅で新幹線を建設する一段階前の「スーパー特急」に計画は戻るはずでした。

しかしこんな約束を破り佐賀県の意向を無視したJR九州は全区間フル規格整備を言い出し、現在の国&長崎県&JRvs佐賀県と言った構図に至ります。

 

新幹線建設に長らく反対していた自治体として「肥前鹿島駅」を擁する佐賀県鹿島市、「肥前山口駅」を擁する江北町があります。

肥前鹿島駅は新幹線が全く通らず特急を廃止され第3セクター化、肥前山口駅も新幹線は一応通るものの拠点駅からの陥落という運命が待っていたからです。詳しくは省略しますが、色々(大人の話ですね)あって新幹線は着工されちゃいました。

鹿島市については扱いが最悪だったため肥前鹿島駅までは特急を残し経営分離もしないという一見良さそうな合意に至っています。

しかし蓋を開けてみれば特急の本数は半分以下、普通列車を含めても維持はあくまで列車の本数であって乗り換えの有無については触れておらず鹿島市の条件は一部しか受け入れれてもらえなかったと考えてよいでしょう。しかもまだ計画段階なので実際にどうなるかは誰にも分かりません。

JR九州に恨みがある訳ではありませんが上場してから新幹線や豪華観光列車ばかりを優先しローカル線の減便を繰り返すなど沿線民をあまり大事にしない傾向が強くなったように見受けられます。

 

このままいけば廃線(2021.5.16改訂)

この記事を書いてから新幹線の名前が「西九州新幹線」に決まったり開業時期が2022年秋頃に決まったりと更に動きがありました。
仮に今佐賀県が折れて未開業区間へのゴーサインが出たとしても全線開業はいつになるのでしょうか。今2021年ですよ。
いっそのこと建設中止と言いたい所ですが過激すぎますね。トンネルや高架の放置は勿体ないですし危険です。

筆者は新鳥栖~肥前山口間の在来線を「三線軌条化」し新幹線の乗り入れを可能にすることで佐賀へは在来線扱いで料金は据え置き、長崎へは新幹線扱いで利便性向上の対価として値上げし、使い分けられるようにする、という案を考えました。本数も乗り換え回数も頑張れば現状維持できるはずです。
筆者の予想ですがこのままでは新規開業区間は冗談抜きであっという間に新幹線初の廃線になってしまうと思います。