今回のシリーズのテーマは「プロジェクトにおけるバッファマネジメント」でした。最後にこれまでの考察をまとめてみることにします。
プロジェクトでバッファというと、どうしても期間の余裕を想像してしまいますが、それだけではありませんでした。
キットPMが実践しているTOC(制約の理論)ではバッファは、「ある価値(=スループット)を創出する一連の作業の集まり(=サプライチェーン)で、チェーン全体のスループット向上に、最も効果のある作業のパフォーマンスを上げるために存在するもの」という定義となります。
プロジェクトでこの「価値」とは、「目的の達成」です。そのためにプロジェクトは様々な作業を行いますが、その作業が滞りなく実施でき思わぬトラブルから守るために設けるのが、プロジェクトのバッファとなります。
プロジェクトをスムーズに進めるためには、「プロジェクト準備」と「プロジェクト計画」でした、この2つのプロセスの結が直接プロジェクトの成功に結びつきます。
したがって、まずこの2つのプロセスの精度を上げることが、プロジェクトの成果を守ることになりますので、プロジェクトのバッファとして考えました。
プロジェクトマネジメントで特に気を使うのは「予算」の問題です。もちろん、予算オーバーしないように気を配らないといけないのですが、そのためにプロジェクトに必要な経費の構造から考えてみました。
プロジェクトの費用構造は、外部に支払う設備購入費や作業委託費などの「購買費」、プロジェクトの作業を行う人の「人件費」、作業に必要な事務所費や事務費と光熱費などの諸経費となります。
ここで良く問題になるのが、業務委託先との間で発生するトラブルです。委託のための一連のプロセスである「調達管理」をちゃんと行った上で、できるだけ曖昧さを排除した契約を取り交わすことが必要となります。実際にはまだまだ難しいですが。
また「人件費」で問題が発生するのは2つのパターンとなります。一つは工数見積もりのミスによる工数不足で、残業や追加要員の手配が発生するもの。もう一つは、調達した要員のスキル不足による作業遅延や新規要員の確保が必要になるものです。
これらの問題も「プロジェクト計画」時点での考慮が不足して起きる場合がほとんどです。プロジェクト計画の重要性が解りますね。
最後にプロジェクトの期間を守るためのバッファについて考えました。基本的にプロジェクトは「不確実性」の塊です。
先に「プロジェクトの企画」と「プロジェクト計画」がプロジェクトの成果を守るための重要なバッファだと述べましたが、「不確実性」の存在は、いくら精密な計画を作ったとしても、プロジェクトの成功を担保することはできないということです。
想定外の事象の発生に備えるためには、期間にバッファを設けるしか、プロジェクト成果を守ることはできません。
そのために3つのバッファについて考えました。「プロジェクトバッファ」と「合流バッファ」そして「リソースバッファ」です。
「リソースバッファ」は他の2つのバッファと異なり、適切なタイミングで作業を開始するため行う、コミュニケーションによるバッファでした。
「プロジェクトバッファ」と「合流バッファ」は基本的には同じ考え方の、時間的な余裕を持つことによるバッファとなります。
このバッファが特徴的なのは、ここで言う時間の余裕は全体の作業期間を延ばすことで余裕を確保するのではないということです。
工程に散らばっている(見えない)余裕を取り上げ、プロジェクトの最後にまとめて配置することで、プロジェクトの期間を守ります。
この考えが成り立つメカニズムについて、再度書くことは止めておきますが、様々なプロジェクトで実施され、成果を上げている手法であることは間違いありません。
もちろん、アジャイル型のプロジェクトなど、適用が難しいものもありますが、今後さらなる利用が進む考え方だと思います。
今回でこのシリーズは終了します。次回から新テーマでお送りします。ご期待ください。
